異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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王の隠された恋文

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俺はウェルス・ルナベルク。ルナベルク王国の王だ。王冠は重くて、王座は硬くて、毎日が儀式と書類の山で埋もれていく。正直言って、うんざりだ。

でも、このうんざり感を吹き飛ばしてくれる人がいる。

彼女のことは、誰も知らない。王妃であるイザベラも、側近であるギルバート卿も、もちろん国民も。

彼女は、王宮の厨房で働く、ただのメイド、リリアだ。

初めて会ったのは、王宮の庭園でだった。バラの剪定をしていた彼女が、不器用ながらも丁寧に、一輪一輪を扱っている姿を見て、心を奪われた。太陽の光に照らされた彼女の顔は、バラよりも美しく、そして、何よりも、彼女の笑顔が忘れられなかった。

それからというもの、僕はこっそり、彼女の働く厨房に通うようになった。もちろん、王である僕が厨房に出入りするわけにはいかない。だから、夜中に、誰もいない時間を選んで、こっそりと。

リリアは、僕の正体を知らない。ただ、夜中に現れる謎の人物、としか思っていないだろう。僕は、いつも、彼女の作ったお菓子を持って、彼女の部屋を訪れる。

彼女が作るお菓子は、どれもこれも絶品だ。特に、彼女の作るアップルパイは、僕の舌を虜にした。甘酸っぱいリンゴの味が、僕の心を優しく包み込んでくれる。

僕は、彼女に、自分の気持ちを伝えたい。王である自分が、メイドである彼女に恋をしているなんて、とんでもない話だ。きっと、笑われるだろう。嘲笑されるだろう。

だけど、この気持ちは、隠しきれない。

ある日、僕は勇気を出して、リリアに手紙を書いた。王冠も、王座も、威厳も、何もかも捨てて、ただの一人の男として、彼女への想いを綴った。

「リリアへ

君に出会ってから、僕の毎日が変わった。君の笑顔、君の優しさ、君の作るアップルパイ。全てが、僕を幸せにしてくれる。僕は、ルナベルク王国の王、ウェルスだ。この手紙を読んだとき、君は驚くかもしれない。そして、恐れるかもしれない。だけど、僕は君に伝えたい。僕は、君を愛している。」

手紙を書き終え、僕はため息をついた。この手紙を、彼女に渡せるだろうか?

数日後、僕は再び、夜中に厨房を訪れた。しかし、リリアの姿はなかった。代わりに、彼女の部屋のドアに、小さな封筒が置かれていた。

震える手で封筒を開けた。中には、一枚の手紙が入っていた。

「ウェルス様

あなたの、お気持ち、届きました。とても、嬉しかったです。アップルパイ、喜んでいただけて、よかったです。

でも、私は、ただの一人のメイドです。王様と、一緒になるなんて、私にはできません。

どうか、お幸せに。」

手紙には、リリアの小さな字で書かれていた。

僕は、言葉を失った。彼女の言葉は、僕の心を深く突き刺した。

彼女は、僕の気持ちを理解していた。そして、その気持ちを受け止めてくれた。しかし、同時に、彼女は、その気持ちを拒否した。

彼女の決意は固い。王とメイド、その身分の違いは、越えられない壁だった。

僕は、王であることを呪った。王であることが、僕の恋を阻むものだと感じた。

その夜、僕は、王冠を外し、庭のバラの下に置いた。そして、リリアが作ったアップルパイを、一人、静かに食べた。


それから数日後、僕は、イザベラ王妃に、離婚届を提出した。王位を継ぐ後継ぎは、まだ幼い。国を揺るがすような決断だったが、僕はもう、王として生きることに、意味を見出せなかった。

そして、僕は、王宮を去った。

どこへ行ったか?それは、秘密だ。

ただ、僕の心の中には、いつも、リリアの笑顔と、彼女の作ったアップルパイの味が、残っている。それは、僕の、忘れられない、恋の思い出だ。
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