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2章

51.

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週はじめのホームルーム。
来月の上級生達がダンジョンへ遠征授業に行っている間教員が殆ど付き添いの為、授業がお休みになるとか。移動を合わせて3泊4日かかる為、その週は1週間まるまるお休みらしい。
羨ましいかぎりだ。

お昼休み、担任を訪ねる。
「すいません。7年生のファストという生徒の教室教えてください」
軽く事情を説明したらあっさり教えてくれた。
7Cクラスらしく私の教室とは別の建物らしい。
うちの担任が担当している陶芸の受講を受けているそうで明日の授業の時に伝言してもらえるとの事なのでお昼休みに中央広場で待ち合わせする事にした。

翌日の昼休み、広場に行くとファストはすでに到着していた。
「お待たせしました」
「ミーナ様、こんにちは。如何されましたか」
「学園内では様付はダメ。周りに騒がれるのは面倒だから」
「失礼いたしました。では、ミーナさんと。」
「まぁ、それぐらいなら。あと、敬語も控えめに。年下の私相手ではおかしいから」
注意してから、本題を伝える
「風の日の授業後に、ここで待ち合わせして一緒に向かいましょう」
待ち合わせを約束して、お互い教室に戻った。
午後からは授業も無いのでさっさと街に繰り出した。
今日の午前の薬師の授業で自分用の調合道具を使っても良いとの事だったので早速店を覗きに行きたかったのだ。
先生に教えもらった道具屋にたどり着いたので中に入る。
薬屋だけのことはあって独特の匂いだ。
調合道具の棚の前で物色しているとカウンターから店員らしきおばさんが出て
きた。
「いらっしゃい。何をお探しかな」
「こんにちは。学園の授業で使える道具を見にきました」
「それならこっちの棚のが使い勝手が良いよ」
案内してもらった棚で商品を見てるとライムが急に腕輪から出てきた
「どうしたの」
珍しいので訪ねてみるとスカイが教えてくれる。
『ライムが選ぶって』
嬉しそうに飛び跳ねながら一つの道具の前で立ち止まった。
「あら、この子は貴女の従魔かしら。グリーンスライムはある程度のレベルになると薬草にも詳しくなるし、調合も手伝ってくれるのよ。薬師にとってはありがたい存在なのよ」
確かに。以前ステータスを除いたらそんな様なスキルを持ち合わせていた。
「これにしたら良いのかな」
『えっと、これは僕が欲しいってライムいってるよ。主のは今から選ぶって。』
スカイ曰く、今選んだのは自分用らしい。道具を欲しがるスライム、、、
それも主が後回し、、、
仕方がないのでライムの選んだ道具を店員に渡す。
「これで良いかな」
おばさんが会計をしようとするのでもうワンセット選ぶのを待ってもらう。
ライムはまた、嬉しそうに道具の回りを飛び跳ねている。
様子を見ていると一つの道具の前で止まった。
「あら、これが良いのかな。お嬢さん、この道具はどちらかと言うと上級向けのタイプよ。使える様になるには練習が必要だけどどうする?さっきのだけでも十分だけど」
二匹の様子を見ると両方買うまで動きそうにない。授業ではライム用を使って普段はこっちを使えば良いそうだ。ここはこの子達の言う通りにしておこう。
「両方貰います。おいくらですか」
「最初に選んだ方が500Gでこっちが80000Gになるよ。結構高いけどお金は大丈夫かい」
うわぁ、中々なお値段だ。80000Gって、、、

「お金は大丈夫ですがギルドカードで支払い出来ますか」
「大丈夫だよ。お嬢ちゃんは冒険者かい」
カードを支払いの板にかざしてお金を払う。正直金銭的には問題無いが学園で見つかってトラブルになるのが嫌だ。だって80000Gって平民の平均収入の2ヵ月分になる。
「この道具に何か保護魔法掛けれますか」
先程念の為鑑定したら破損防止はかかっていた
「そうだね、盗難防止と使用者限定をがなければ盗まれたりする事は無くなると思うよ。手元に返ってくるからね」
「こちらでお願いできますか」
私はまだ、付与魔法は使えない。錬金術師になると出来る様になるみたいだ。
「ここでは無理だけどコレを作った職人の工房にいけばしてくれるよ」
場所を聞いて店を出る事にした。
「お嬢ちゃんありがとうね。また、困った事があったらいつでもおいでよ」
とても丁寧な方だった。
ご機嫌な二匹はすでにブレスレットの中だ。
教えてもらった工房にとりあえず向かう。
「ここかな。なんだか工房?武器屋に見えるんだけど」
恐る恐る扉をあける。
「こんにちは」
なんとなく挨拶をしてみる。
店の奥からがたいの良い男性が出てきた。
「何か用か」
「あの、さっきコレを買ったんですがこっちで付与魔法をしてもらえるって聞いて」
言いながら道具をカウンターに置く。
男性はしばらく道具を見つめていた。
「ほぅ、お前が買ったのか」
「そう、私の従魔がコレにする様勧めてくれたから」
「その従魔はいまつれてるか」
「いるよ、呼ぼうか」
男性が頷くのでライムを呼んだ。
ブレスレットからプルンっと出てきてカウンターにのる。
「コイツが選んだのか。ふむ、ちょっと試したい事があるんだが」
と男性曰く、能力の高いグリーンスライムは道具や薬草の知識が豊富で調合も出来るとか。スライムが調合しているところを見てみたいらしい。
「今日はたまたま息子夫婦が留守にしてて俺しか店に居ないが本来なら裏の工房で作業をしているだけだ。錬金術が本業で当然調合もする。俺もグリーンスライムを連れているが中々そこまでレベルが上がらなくてな。本当に出来るか見てみたいんだ。」
成る程。スカイも呼んでライムの意見を聞いてみる。
『主のお願いなら喜んでだって』
「調合は見せてくれるみたいです。但しお分かりかとは思いますが珍しい事なので他言しないとお約束頂けるのなら」

ちょっと威圧を飛ばしつつ男性に伝えると一瞬ビクッとはするも笑顔でサムズアップ。
「もちろん、秘密は守る。なんなら契約で縛っても構わん。俺のスライムも一緒に見ていても良いか」

「分かりました。一応他言しない様契約で縛らせてください。」
「ありがとう。紙を取ってくるからちょっと待ったてくれ」
私は男性を止めて契約魔術が使えるのでと伝える。

どちらにしても奥の工房を使うみたいなので男性の後をついていく。
店はすっかり休業の看板が出されて閉めてしまった。
工房に入るとグリーンスライムが一匹此方の様子を伺っている。
「コイツが俺の従魔でウララだ。自己紹介もまだだったな。俺はBランク冒険者のヴェルトだ。今はソロで活動してて殆ど素材採取ぐらいしか行かないがな」
「私はミーナ、Cランク冒険者です。普段はパーティで活動してます。」
当たり障りのない程度にしておいた。
「Cランクか。成る程な。よし早速頼むわ」
契約魔術を済ませてライムの調合を見守る事にした。
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