祭囃子

冬真

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3、時忘れ

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「なんだ人間か、こんなところにいると帰れなくなるぞ。」と、黒髪短髪の男が言う。
この男は、お面を斜めにかけているので顔が見える。
 
呆けている僕に「送ってやるかついてこい」と手招きした。

「どうしてこんなところに? 」と問われ「迷った」と言えば、たまに迷ったまま帰れなくなる人間がいると教えてくれる。

男が言うには、自分も迷い込んでしまった口だと。
元は人間だったが今はもう戻れないのだそうだ。

「可哀想なことするな」という男に「こっちにいた方が楽しいよ」と嘯く友人。
それと男は、祭りにいた人たちに「話しかけてはいけない」と教えてくれた。
もう話しかけてしまったのだが…。

「でもみんな答えてくれなかった」
「それは、まだお前が人間だからだ」

違う世界から来たばかりだから認識されなかったのだろうと言う。
そのうちに視線が合うようになって言葉が分かるようになる。

話しかけて答えが返ってきたら危ない。
会話が成立するようになったらもう遅い。
同じ世界の住人になってしまったということだ。


あまり長く居すぎると「時忘れ」になるから気をつけろとも言う。

「時忘れって? 」

人間は不思議な生き物でどんな世界でも順応してしまう。
その世界の時間に合わせて生きてしまうのだそうだ。

人間以外の生き物は場所に関係なく「己の時」を生きる。
だが、人間だけはその「世界の時」を生きる。

普通の人間があちらの世界に招かれてもあっという間に老いて死んでしまうと思うだろうが、そうはならないらしい。
限界はあるがそれでも遙かに人間の寿命を越えて生きてしまうのだ。
逆に時の流れが速い場所では、あっという間に死んでしまうこともある。

それを「時忘れ」というのだと教えてくれた。
 
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