君の幸せ、僕の不幸

in the bathroom．

目を覚ますとキィは、バスルームにいた。

清潔そうな白いバスタブの中、膝を抱えていた。
辺りを見回す。
さっきまでいた自分の部屋のバスルームとは違う。

明かりに乏しくひび割れたバスタブと配管剥き出しのシャワーしかないのがキィの部屋のバスルームた。

白いタイルにふんわり暖かな色合いの照明。
もはや文明が違うとしか思えない。  

「…ふぅ、」

一息つくとキィは、ぬめっとした赤い液体を温かいシャワーで洗い流した。 


どうやら部屋の主はいないようだ。
安心して物色を開始する。
どうせ自分のものなのだから遠慮入らない。

"キィ"の部屋なはずなのに全然違う。

明るくて清潔で広い部屋。
ふかふかのベッド。なんでもある。

この世界のキィの服を着る。

どうやらこの世界のキィとは、ずいぶんと性格が違うようだ。
ボードの上には笑顔を浮かべるキィの写真が飾られていた。
楽しそうな写真。
恋人の写真、見知った人たちの写真。
よく見ればみんな同じようでやはりどこか違っている。

ちゃんと、違う世界にきたのだ！

違う世界の自分を殺して入れ替わる。
殺したキィを元の世界に送り返せば完了だ 。


あとは、この部屋の主が帰ってくるのを隠れて待つだけ。
いそいそとキィはバスルームに引き返した。
さぁ殺してやるぞと待ち構える。

なにも知らない哀れなこの世界のキィ…