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1:プロローグ
しおりを挟む落ちている―――――――――――。
いうなれば、スカイダイビングで空に飛びだした直後の状況と言えばいいか。
もちろん、パラシュートなんて背負ってない。
今持っているのは、この身体ひとつのみ。
見上げる空はどこまでも青い。
だけど、どんどん、どんどん、大地が近くなる。
これは、もしかしなくとも、ヤバいんじゃないのか?
これは、今世の世界とは違う………。
眼下には、緑豊かな広い大陸と、青い海が見える
緑の大地の中、木々の間に、小さな青。
―――湖だろうか?
この状況でも冷静な自分が、心底おかしくて、今までの自分歴で初めて、大口を開けて笑ってしまう。
………いきなり、死にそうだ。
・・・
どこに生まれても、最初に意識が開いたとき、思うことはいつも一つ。
『………今度はどのくらいで死ぬのだろう?』 だ。
自分には前世の記憶がある。
それも99回分。
いや、正しくは98回分か。
初回1回目だけは、なぜか記憶が残っていない。
だが、初回の記憶がないことだけはわかっているので、今回は100回目の生まれ変わりであることに間違いはない。
何故、何度も生まれ変わるのか?
何故、生まれ変わるたび、前世の記憶が蓄積されていくのか?
そして、どうして初回だけ記憶が残っていないのか?
何度も生まれ、その数だけ、死ぬ。
生きることを持て余した長い時間の中、98回分の人生の記憶を思い出し、考え、分析してはみたものの、答えの糸口さえ見つけることはかなわず、生まれると同時に「死までどれくらい」とその道程を達観する、「死」だけを待つ人生だ。
自分の死は、どの人生でも同じくおとずれる。
死に方も、どの人生でも同じ。
自分が生きる世界に、闇みたいな真っ黒い巨大な竜が現れて、直接、または、間接的であっても、黒い竜により、自分の命はそこで終わる。
自分には「平穏」という人生は用意されていていないことは、誰よりも理解ができている。
今回生まれた世界は、数百の国に分かれていて、安定している国、そうでない国と色々あるものの、自分は比較的平穏で、人の扱いが平等に近い国に生を受けたのではないかと思う。
ただ、気付いた時には両親はおらず、孤児を引き取る施設で育つこととなった。
この境遇に対しての異論はない。
「いつも」の事である。
飽きるほどの生まれ変わりの人生で、両親が側にいたことはないし、あたたかい家庭で育ったこともない。
そもそも「あたたかい家庭」というものも理解できない。
今までの変わらない境遇のせいなのか、自分の生まれ持った資質によるものか、人が言うところの「心」とか「感情」とかいうものを、持って生まれたためしがない。
なんとなく、これは、記憶のない初回の生まれによるものではないかと、推測はしているが、それも怪しいものだ。
心と感情がなく、すべてのものに対し、関心も執着も持つことのない自分が、今回生きることになったこの平穏な世界で、一つだけ気になることがあった。
『ここでどうしろと?』
今世に生まれ、世界を理解した時、一番初めに思ったのは、これだった。
何故なら、今世には、「竜」がいないから。
おとぎ話や、創作の世界では竜はたくさん描かれている。
それこそ、東洋型から西洋型、善き竜から悪い竜。創作の数だけ竜がいる。
だけれども、本物の、命を持った竜は今世には存在しない。
竜が、いない。
竜が、存在しないということは………、今世で、自分は、このまま、死を迎えず、生きていくことになるのだろうか?
否。
答えは、これ。
今、本気で死にそうだ。
自分は今、何処とも知れない世界の空中に放り出され、自分の意思では落下を止めることも出来ないでいる。
髪がすべて逆立ち、ものすごい風圧の中、息すらまともにできない。
………これは、今度こそ完全消滅で、自分は完全に死ねるのでは?と、本気で考える。
こんな死に方、99回の転生人生で初めてである。
だが――――――。
「初めて思うけど―——今回だけは、死ねないっ—————!!」
真行寺 暁 22歳の春
99回の人生の記憶の走馬灯が、今、物凄い倍速で頭の中を駆け巡っていた。
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