【完結】100回生まれ変わっても心のないオレの心を奪ったのは黒い竜

MINORI

文字の大きさ
31 / 71

31:翡翠2

しおりを挟む

俺のただひとつの大切な光を失ってからの世界は、空虚で、何もなく、空っぽだ。

生きるってなんだ?
俺の光はなくなってしまった。
ここにいる意味はもうない。
守るべき、大切な光をなくしたのに、どうして、こんな何もない空っぽの世界を、自分が守らねばならないのだ。

そんなこと、誰が決めたのだ?

神様なんてやめてやる。
俺は、俺のただひとつの大切な光を探しに行く。
眷属も他の竜共のことも、この世界のことも知ったことか。

創主の元へは、ゲートを潜れば行ける。
問題は、天の高みの更にその上にあるといわれるゲートまで、飛べるかどうか。
この世界の神たる竜体でも、その高みに到達するには、命を懸けても届くかどうか。

俺の命など、どうでもいい。
ここに留まったところで、愛しい光は、この手には戻らない。

緑の竜は、空を翔けた。

何処までも遠く、何処よりも高く。
息もつけず、自らの竜体が焼かれることも厭わず、ソラを登り、そうして、神たる竜すら到達することが叶わないはずの、尊ぶべき創世の主神のおわす場所に、彼は、とうとうたどり着いた。



「―――無茶がすぎる」



星屑を固めたような創世の主が、呆れたとばかりに声を零した。

「本来、僕の作った世界の神は、圖書館ここに来ることは叶わない。そんな力は与えていない。絶対にたどり着けるはずはないのに、君も根性で、来てしまったねえ。体は、死にかけだけど」

寝台に横たえられた緑の竜は、その命の燈火が消える、一歩手前位の満身創痍だ。

呼吸は浅くしか出来ず、目は霞み、やっとの思いでたどり着いたというのに、創世の主の姿は、朧気にしか見えない。
今の翡翠は、全身を焼かれ強靭な竜の鱗は剥げ落ちて、全身に大火傷を負い命を終えそうなただの人間に等しい。

「―――君は6竜の中で、二番目に諦めが悪いね。翡翠」

うるさい。浅い呼吸の中で翡翠は呟く。
自分だって、一番星あのひとを手放す気がなくて、俺たちから、あのひとを奪ったクセに、その言い草は無いだろう。

瀕死の自分を奮い立たせ、敢えての不敵な笑みでに創主を睨みつける翡翠に、創主はやれやれと寝台横の椅子に腰掛けた。

「せっかく命を懸けでココまで来たのに、翡翠。君の光は、ここには居ない」

残り少ない力をかき集め、射殺す眼差しを向ける翡翠に、創主は悲しそうに表情を陰らせた。

「一番星は、自分に定められたことわりを破り……魂が砕けてしまった」
「――――――な?!」
「砕けた魂の数は、およそ100。理を破ることは、僕でも、許されない大罪だ。贖いは、砕けた魂分の、生のやり直しだ」

翡翠は目を剥き、声にならない叫びを上げた。
例え声とはならなくとも、その心の叫びは、創主には届いていた。

「そうだ。僕の一番星は……あの子は、僕の作った世界を巡り、生まれ落ち命を終え、それを繰り返し、贖い続ける――――砕けた、魂の数だけ……」

それは、途方も無いことだ。
ひとつの命を同じ世界で生き続ける、自分達竜とは違い、孤独の中で、異邦人たる自分を知り、何度も何度も世界を変えて生まれ変わり続けるなんて、苦行どころの話ではない。

「贖いは、ひとりで、行わなければいけない。あの子はひとり、誰にも愛されず誰も愛さず、孤独の中で、それに耐え続けなければ、いけない。……君達の、いや、あの、黒い竜のせいでね」

翡翠の目から涙が流れた。
あの光が、自分の大切なたったひとりの人が、そんな地獄に落ちていることも知らず、俺はただ、悲しんでいるだけだった。

抱き締めてあげたい。
あなたはひとりではないと、俺にとっては自分の命よりも、世界の何よりも大切だと、愛していると、伝えたい。

「そんな目をしても、君達のしでかした事は、なくなりはしない。僕が、君達を許すことは、未来永劫ないからね。そして、100の生まれ変わりの禊を終えて、あの子が『初回の記憶』を取り戻し、心を取り戻して、ここに戻ったら、あの子を、僕の一番星を、誰にも渡しはしない」

創世の星である創主は、己の力の全てをもって、翡翠を睨み据えてきた。

「はじめから、一番星は、僕の為だけに、僕と共に生きるために、僕が誕生させた、たただひとつの星なんだよ?君達が、欲しがっていいものなんかじゃあない」

自分を生み出した創主からの、焼けただれた全身の火傷すら、瞬時に凍らすが如きの冷たい眼差しを受けようが、翡翠は一歩も、引くつもりはない。

今度こそ、譲らない。
誰にも、渡しは、しない。

指一本動かす事も出来なかった全身を叱咤し、今にも消えそうな命を燃やして、翡翠は上体を起こして、震える足を叩き、立ち上がった。

幼かった昔、聞いたことがある。
導き手の俺の光が、話してくれた秘密の話。

――自分は6竜の導き手で、役目を終えたら、天の座に戻る。
  それは自分に課せられた役目であり、理。
  理を破れば自分の魂は砕けてしまうけど、
  そこから生まれ変わって新たな魂を手に入れられたら……

「―――戻ってくると、俺と黒竜に、俺の光は、アキは……言った。新たな魂で、必ず、戻る……と」

――必ず、私を見つけてね。
  姿は違えども、私を、必ず――

そう言って、アキは、笑ったのだ。
必ず見つけると、俺と黒竜は、約束したのだ。

「――あんた、には……絶対に、渡さ、ない」
「創主たる僕に、喧嘩を売るとは、良い度胸だ。では、君も、【賭け】をしようか?」
「君、―――だと……?」
「ああ。黒い竜も―――ここまで来て、一番星を求めて僕と、【賭け】をしている」

黒竜が、先にここに来ていただと?
俺があと一歩を踏み出せず、只、嘆き悲しんでいた時に、アイツは、既にここに来ていたのか……。

「黒い竜との【賭け】の内容は、彼を見つけるか否か。ただし、一番星が黒い竜を見つけるまで、黒い竜は目を閉じ続けなければいけない。一番星の100の贖いの苦境を、閉じた目の中で見続けて、救いの手を差し出すことは許さない。あの子が生まれ変わりを終えるまでの悠久の長い時を、黒い竜はただ一人、暗闇にその身を落とし、目を閉じ、あの子の贖いの夢を見て、眠り続ける。【賭け】と【罰】の掛合わせだ」

それが、黒竜が姿を見せなくなった理由であると、翡翠は合点がいった。
怒りが込みあげる。
アイツは、黒竜は、どれだけ俺の先を行っていたのかが、この時初めてわかった。

「さて、君との【賭け】はどうしようか。そうだな、黒い竜とは逆にしようか?一番星の生まれ変わりの贖いを、目を見開いてリアルタイムで見続ける。救いの手を伸ばすことは同じくNGで、ただ、見つめ続けるだけ。ああ、一番星が、清浄な新たな魂に生まれ変わる、最後の転生だけ、傍に在れるように、整えてあげよう。だが、今僕が話した全てを伝える事は、禁止だ。一番星は、『初回の記憶』以外全部覚えているからね。それを破ったら、君の負けだ」

「―――いい趣味を、してやがる」
「褒めて貰えて嬉しいよ」
「……いいだろう。乗ってやるよ、創主」

俺は、絶対にアキを取り戻して見せる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?

銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。 王命を知られる訳にもいかず… 王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる? ※[小説家になろう]様にも掲載しています。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

(完結)冷徹アルファを揺さぶるオメガの衝動

相沢蒼依
BL
 名門・青陵高校に通う佐伯涼は、誰もが一目置く完璧なアルファ。冷静沈着で成績優秀、規律を重んじる彼は、常に自分を律して生きてきた。だがその裏には厳格な父と家の名に縛られ、感情を抑え込んできた孤独があった。  一方、クラスの問題児と呼ばれる榎本虎太郎は自由奔放で喧嘩っ早く、どこか影を抱えた青年。不良のような外見とは裏腹に、心はまっすぐで仲間思い。彼が強さを求めるのは、かつて“弱さ”ゆえに傷ついた過去がある。  青陵高校1年の秋。冷徹で完璧主義の委員長・佐伯涼(α)は、他校の生徒に絡まれたところを隣のクラスの榎本虎太郎(Ω)に助けられる。だがプライドを傷つけられた佐伯は「余計なことをするな」と突き放し、二人の関係は最悪の出会いから始まった。 《届かぬ調べに、心が響き合い》 https://estar.jp/novels/26414089 https://blove.jp/novel/265056/ https://www.neopage.com/book/32111833029792800 (ネオページが作品の連載がいちばん進んでおります)

【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!

N2O
BL
脳筋ゆえ不本意な塩対応を只今猛省中、ユキヒョウの獣人 × 箱入りゆえガードが甘い愛され体質な竜人 愛しい幼馴染が有象無象に狙われて、居ても立っても居られなくなっていく余裕のない攻めの話。 (安心してください、想像通り、期待通りの展開です) Special thanks illustration by みとし (X:@ibarakiniarazu) ※独自設定かつ、ふんわり設定です。 ※素人作品です。 ※保険としてR設定にしていますが、基本健全。ほぼない。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

処理中です...