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12.森の入り口

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 家を出て、少し歩くと森の入り口に着いた。
「健! けっこう野草が生えてるね。あ、きのこもある!」
 はしゃぐ大翔を見て俺は笑った。
「大翔、あんまり奥にはいくなよ? どんなモンスターが出てくるかわからないからな」
「わかったよ、健」

 そういった大翔は、道のわきの草や木の実と本を見比べてはうなづきながら収穫をしていた。
 俺も大翔から本を借りて、採集の手伝いをする。
「大翔、この草はどうだ?」
「ああ、それはローズマリーの代わりになるやつだよ。ありがとう、健」

 大翔の持ってきたカバンがだんだん膨らんでいく。
 俺たちが採取に夢中になっていると、森の中から人がうめくような声が聞こえてきた。
「何だろう? 健?」
「さあ……」
「ちょっと、様子を見に行こう」
 大翔が森の中に入っていった。
 俺はあわててそのあとを追いかける。
「大翔! そんなに中に入ったら……」
「健! けがしてる子がいる!」

 しゃがみこんだ大翔が何かを持ち上げた。
 大翔の両手の中を覗き込むと、そこにはとがった耳と透き通った羽を持った小さな少女が震えていた。
「誰? あなたたち?」
「僕は大翔。こっちは健。君はだれ?」
「……私は……アイラ」

 アイラのおなかから小さな音が聞こえた。
「アイラちゃん、君、おなかがすいてるの?」
「……」
 アイラはこくりとうなづいた。
「じゃあ、これどうぞ」
 大翔はかばんから卵サンドを取り出してアイラに渡した。

「……」
 アイラは卵サンドの匂いを嗅いで、不思議そうな顔をしている。
「食べて大丈夫だよ? 僕と半分こしようか?」
 大翔はアイラの持っている卵サンドを半分にすると、片側を食べて見せた。
 アイラは美味しそうに食べる大翔を見て、おそるおそる卵サンドを一口かじった。

「美味しい……」
 アイラはそう言った後、ぱくぱくと残りの卵サンドを食べ切った。
「アイラちゃん、君、怪我してるみたいだけど大丈夫? お父さんとか、お母さんは?」
「……いない」
 アイラはうつむいて答えた。

「健……」
 大翔が俺のことを見ている。
「わかったよ。うちに連れていくか?」
「うん。アイラちゃん、よかったら傷がなおるまで僕らの家においでよ」
 アイラは大翔の顔を伺うように見た。大翔の笑顔を見て、アイラはちいさくうなづいた。
「よし! じゃあ、植物採集はここまでにして家に帰ろう」
「そうだな、大翔」
 俺たちはアイラを連れて家に帰ることにした。

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