20 / 65
20.結婚式を開こう
しおりを挟む
「……話を聞いていただけますか?」
細身の男性が、大翔に話しかけた。
「はい、えっと……」
大翔がとまどっていると、細身の男性は言った。
「私はホークと申します。こちらはアンです」
「アンと申します」
ドワーフの女性がお辞儀をした。
「はじめまして、ホークさん、アンさん。僕は大翔です。こちらは……」
「健だ」
「よろしくおねがいします、大翔さん、健さん」
「よろしくお願いします。ところで、込み入った話なら、もう少し落ち着いた場所で話しませんか?」
ホークとアンは顔を見合わせてから頷いた。
「そうですね。では、そこの食堂にはいりましょうか?」
ホークは昔、俺たちが入った食堂を指さした。
「わかりました」
俺たちは食堂に入り、ジュースを頼んだ。
「で、結婚式を俺たちの食堂で開きたいというのは、どういうことだ?」
「実は、私たちは見ての通りドワーフと人間という種族を超えた愛で結ばれています。お互いに、一緒に生きていきたいと思い、結婚式を挙げようとしたのですが……」
そこまでホークが言うと、アンが続けた。
「ドワーフの神殿では人間を受け入れることはできないと言われ、人間の教会ではドワーフに祝福を与えることはできないと言われました……」
俺はふと疑問に思って、ホークとアンに尋ねた。
「どうして、俺たちの食堂で結婚式を挙げようと思ったんだ?」
「それは、冒険者ギルドでレンさんに相談したら、良いところがあるって紹介されて……」
俺と大翔は見つめあってから、そういうことか、と同時に頷いた。
「健、僕はホークさんとアンさんの結婚式のお手伝いをしたいと思うんだけど……健はどう思う?」
「俺も……反対する理由はないな」
俺は、種族が違うからと言って周囲に祝福されない結婚を上げようとしている二人と、自分の立場を無意識に照らし合わせていた。
「それじゃあ、引き受けてくださるんですか!?」
ホークとアンの目が明るく輝いた。
「ああ、引き受けよう。式はいつ行う予定なんだ? それと参加者は何人の予定だ? 予算は?」
俺がホークに尋ねると、ホークは笑顔で答えた。
「式は来週末に行えればうれしいです。参加者は僕たちの両親と僕たちなので、合わせて6人の予定です。予算はできれば銀貨二枚以内でお願いしたいです」
「ドレスや礼服は?」
大翔がたずねるとアンが答えた。
「それはこちらで用意します」
「それなら、食事と場所の用意をすれば大丈夫だと考えていいか?」
「はい!」
俺と大翔はホークたちの返事を聞いて頷いた。
「出してほしい料理はあるか?」
俺が聞くと、ホークとアンは首を横に振った。
「特にありません」
ホークが言った後に、アンが付け足した。
「ホークはイノシシの肉が好きなので、使っていただけると嬉しいです」
「わかりました」
大翔は頷いてから、立ち上がって手を差し出した。
「良い式になるよう、がんばります」
「ありがとうございます。よろしくおねがいします」
ホークは差し出された大翔の手をとり、握手した。
「それでは、式の当日に町はずれの宿屋に来てください」
「はい」
ホークとアンは手をつないで、食堂を出て行った。
「じゃあ、俺たちも結婚式の準備をするか」
「結婚式と言ったらウエディングケーキだよね。あとは白い花をたくさん飾りたいな……」
大翔は楽しそうにそう言うと、俺に向かって質問した。
「健も、いつか結婚したいの?」
「俺は……」
大翔とずっと一緒にいたいなんていえるはずもなく、息を吐いて目をつむった。
「俺のことは良いだろう? 大翔はどうなんだ?」
「僕は、健と一緒にいられる今の時間が楽しいから、今は考えられないかな」
俺はさらりと言う大翔に、うまく答えられず、ごまかすように速足で歩きだした。
「あ、待ってよ、健」
大翔は会計を済ませて、俺の後についてきた。
「結婚式なんて、はじめてだからうまくできるか心配だな……」
大翔のつぶやきを聞いて、俺は大翔の頭をぐしゃぐしゃとなでた。
「まあ、最善を尽くそうぜ」
俺たちは、家に帰ってホークとアンの結婚式の準備について話し合うことにした。
細身の男性が、大翔に話しかけた。
「はい、えっと……」
大翔がとまどっていると、細身の男性は言った。
「私はホークと申します。こちらはアンです」
「アンと申します」
ドワーフの女性がお辞儀をした。
「はじめまして、ホークさん、アンさん。僕は大翔です。こちらは……」
「健だ」
「よろしくおねがいします、大翔さん、健さん」
「よろしくお願いします。ところで、込み入った話なら、もう少し落ち着いた場所で話しませんか?」
ホークとアンは顔を見合わせてから頷いた。
「そうですね。では、そこの食堂にはいりましょうか?」
ホークは昔、俺たちが入った食堂を指さした。
「わかりました」
俺たちは食堂に入り、ジュースを頼んだ。
「で、結婚式を俺たちの食堂で開きたいというのは、どういうことだ?」
「実は、私たちは見ての通りドワーフと人間という種族を超えた愛で結ばれています。お互いに、一緒に生きていきたいと思い、結婚式を挙げようとしたのですが……」
そこまでホークが言うと、アンが続けた。
「ドワーフの神殿では人間を受け入れることはできないと言われ、人間の教会ではドワーフに祝福を与えることはできないと言われました……」
俺はふと疑問に思って、ホークとアンに尋ねた。
「どうして、俺たちの食堂で結婚式を挙げようと思ったんだ?」
「それは、冒険者ギルドでレンさんに相談したら、良いところがあるって紹介されて……」
俺と大翔は見つめあってから、そういうことか、と同時に頷いた。
「健、僕はホークさんとアンさんの結婚式のお手伝いをしたいと思うんだけど……健はどう思う?」
「俺も……反対する理由はないな」
俺は、種族が違うからと言って周囲に祝福されない結婚を上げようとしている二人と、自分の立場を無意識に照らし合わせていた。
「それじゃあ、引き受けてくださるんですか!?」
ホークとアンの目が明るく輝いた。
「ああ、引き受けよう。式はいつ行う予定なんだ? それと参加者は何人の予定だ? 予算は?」
俺がホークに尋ねると、ホークは笑顔で答えた。
「式は来週末に行えればうれしいです。参加者は僕たちの両親と僕たちなので、合わせて6人の予定です。予算はできれば銀貨二枚以内でお願いしたいです」
「ドレスや礼服は?」
大翔がたずねるとアンが答えた。
「それはこちらで用意します」
「それなら、食事と場所の用意をすれば大丈夫だと考えていいか?」
「はい!」
俺と大翔はホークたちの返事を聞いて頷いた。
「出してほしい料理はあるか?」
俺が聞くと、ホークとアンは首を横に振った。
「特にありません」
ホークが言った後に、アンが付け足した。
「ホークはイノシシの肉が好きなので、使っていただけると嬉しいです」
「わかりました」
大翔は頷いてから、立ち上がって手を差し出した。
「良い式になるよう、がんばります」
「ありがとうございます。よろしくおねがいします」
ホークは差し出された大翔の手をとり、握手した。
「それでは、式の当日に町はずれの宿屋に来てください」
「はい」
ホークとアンは手をつないで、食堂を出て行った。
「じゃあ、俺たちも結婚式の準備をするか」
「結婚式と言ったらウエディングケーキだよね。あとは白い花をたくさん飾りたいな……」
大翔は楽しそうにそう言うと、俺に向かって質問した。
「健も、いつか結婚したいの?」
「俺は……」
大翔とずっと一緒にいたいなんていえるはずもなく、息を吐いて目をつむった。
「俺のことは良いだろう? 大翔はどうなんだ?」
「僕は、健と一緒にいられる今の時間が楽しいから、今は考えられないかな」
俺はさらりと言う大翔に、うまく答えられず、ごまかすように速足で歩きだした。
「あ、待ってよ、健」
大翔は会計を済ませて、俺の後についてきた。
「結婚式なんて、はじめてだからうまくできるか心配だな……」
大翔のつぶやきを聞いて、俺は大翔の頭をぐしゃぐしゃとなでた。
「まあ、最善を尽くそうぜ」
俺たちは、家に帰ってホークとアンの結婚式の準備について話し合うことにした。
133
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!
黒木 鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる