魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ

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14.自己紹介

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「メルヴィン、こちらへ」
「はい」
 ニコラスのそばに行くと、ニコラスが僕の肩に手をかけて言った。
「改めて、紹介しよう。もう知っているかもしれないが、こちらはメルヴィン・バレット。新しい錬金術師見習いだ。いろいろ教えてあげるように」
 ニコラスは口の端だけ上げた笑顔で僕を紹介した。

「メルヴィン・バレットです」
 僕は頭を下げた。
 ニコラスはビルのほうにツカツカと歩いて行った。
「こちらはビル・マクネアー。私の息子で一番弟子だ」
「よろしく」
 ビルがはにかむような笑みを浮かべると、フランクが目を伏せた。息子と言われれば、たしかに金色の髪もグレーの目も、ニコラスによく似ている。

 ニコラスはフランクに右手を向けた。
「あちらはフランク・バンクス。バンクス子爵の息子さんだ。優秀な錬金術師見習いだ」
「……」
 フランクは何も言わずに胸に手を当て少しだけ頭を下げた。肩にかからない程度に切り揃えられた茶色の髪が、サラリと揺れた。その奥にあるこげ茶色の目は暗い色を宿している。

「で、デニス・アナキン。君の兄弟子だね」
「よろしく」
 デニスはニコラスの前では愛想の良い笑みを浮かべるようだ。癖のある短めの赤毛を指で梳いている。細められた薄茶色の目は、冷たい光をはらんでいた。

「これからよろしくお願いします」
 僕は皆に頭を下げた。
 ニコラスは頷いた後で、ふと思いついたように言った。
「それはそうと。メルヴィン、君は昨日と同じ服じゃないか?」
「あの……着替えを持っていなくて……」
「そうか。身の回りのものはあるのかい?」
 僕は無言で首を横に振った。

「ふむ……。デニス、今日の午前中は商店街に行ってメルヴィンの身の回りの物をそろえてあげなさい」
「……かしこまりました」
「メルヴィン、身の回りの物を買うお金はあるのかい?」
「……いいえ」
「では、いくらかお金を貸してあげよう」
 ニコラスは銀貨を二枚と書類を持って来た。

「借用書だ。これにサインしなさい」
 ニコラスは机の上に借用書とペンを置いた。
 僕が書類を確認すると<賃金の中から、銀貨二枚と利息分の返却が終わるまで、毎月銅貨20枚を支払います>と書いてある。僕に選択の余地は無い。震える手で借用書にサインをした。

「うん。それじゃあ、デニス、頼んだよ」
「はい、ニコラス様」

 ニコラスは僕がサインした借用書を回収し、店の方に歩いて行った。
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