魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ

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15.買い物

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「ビルさん、フランクさん、行ってきます」
 デニスが二人に挨拶をして店を出た。
「行ってきます」
 僕もあわてて挨拶をする。

「行ってらっしゃい」
 ビルは、にこやかに送り出してくれた。フランクは興味のなさそうな目で、僕たちをちらりと見ただけで、自分の仕事に戻った。

 街に出ると、デニスが言った。
「中央にある店は金持ち相手の店ばっかりだ。俺たちみたいな見習いは街はずれにある庶民向けの店で買い物をすることが多い。覚えておけ」
「はい」

 中央から街のはずれに向かって歩いていると、だんだん周りの建物が、華美なものから質素なものへ変わっていく。

 デニスが古びた店の前で立ち止まった。
「それじゃあ、服を選ぶぞ。ここで程度の良い服を探すか」
「ここは?」
「古着の店だ」
 デニスが店に入ると、愛想のいいおばさんがやってきた。
「いらっしゃい」
 デニスは軽く頭を下げると、店の奥へと歩き出した。

「シャツとズボン、上着を4セット選ぶぞ」
「はい」
 デニスはハンガーにかけて並べられた古着から、状態の良いものをいくつか選んだ。
「この辺か?」
「……」
 白いシャツと、黒いズボン、紺のジャケットを3セット、うす茶色のシャツとこげ茶のズボンと、グレーのジャケットを並べ、デニスが僕に確認する。
「どうだ?」
「えっと……よくわからないので、お任せします」
 デニスはつまらなそうに鼻をフンと鳴らした後、店の伯母さんを呼んだ。
「すいません、お願いします」
「はいよ。あら? ずいぶん買ってくれるんだね。じゃあ、おまけだよ」
 おばさんはハンカチを二枚、おまけでつけてくれた。
「ありがとうございます」
 僕はおばさんにお礼を言った。

「お会計は……銀貨一枚と銅貨10枚だね」
 おばさんが笑顔で言う。デニスはおばさんにお金を渡した。
「ありがとうございました」
 おばさんは服を布袋に入れ、店の出口まで運んでくれた。

 服の入った大きな布袋を渡された僕は、デニスに遅れないように頑張って歩いた。
「次は日用品だな。洗面道具や風呂で使う道具と……メモやペンか」
 古着屋の二件となりに雑貨店があった。
 僕は一番安い歯ブラシとコップ、タオルを選んだ。
 支払いはデニスがした。銅貨4枚だった。

「最後に文房具だな。いいか、メルヴィン。次からは買い物は一人で行くんだぞ? ちゃんと店を覚えろよ?」
 デニスはそう言ってから文房具屋へ入った。

 ペンとメモ、ノートを買い、デニスが支払いを済ませる。銅貨が30枚残ったはずだ。
「えっと、どうもありがとうございました」
 僕は荷物を抱え、デニスにお礼を言った。
「まあ、ニコラス様の命令だからな」
 デニスは銅貨10枚を僕に渡し「帰るぞ」と言って歩き始めた。

「え? あの……もっと残ったはずですけれど?」
「俺の手間賃だよ」
 デニスはニヤリと笑って、銅貨20枚を自分の財布にしまった。
「ええっ!?」
「タダでこんなに親切にしてやるわけがないだろ?」
 あきれたような口調で、デニスは言う。

「……」
 僕はもやつく心をなだめながら、荷物を抱え、デニスと一緒に店に戻った。
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