錬金術師として召喚されたけど、錬成対象が食べ物限定だったので王宮を追い出されました。

茜カナコ

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30、アレックス様お仕事中

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 アレックスとのお茶会から二週間が過ぎた。
 あおいは毎日お店に出ていたが、アレックスを見かけることはなかった。
 ロイドは時々、店に顔を出したがやはりアレックスと会っていないとのことだった。

「うーん、アレックス様元気かな? 手紙出しても王子様だから沢山の手紙が来てて埋もれちゃうだろうし」
 あおいは悩んだ末に、一つの結論を出した。
「よし! 私から会いに行っちゃおう!」

 あおいはそうと決めると、アレックスの好きな薬草クレープとチョコレートクレープ、いつくかの錬成物をかごに入れて外出の準備をした。
「あ、念のためこれも多めに持っていこう」
 あおいは姿の消せるミルクキャラメルをスカートのポケットにねじ込んだ。

「行ってきます!」
 あおいは誰も居ない部屋に声をかけ、鍵をして王宮に向かった。

 王宮に着くと兵士に声をかけられた。
「あの、わたしアレックス様の友人のあおいと言います。今日は差し入れを持って来ました」
「アレックス王子は忙しいのです。お帰り下さい」
 兵士を説得する隙も無く、あおいは門前で追い返された。

「よし。じゃあ、コレの出番ね」
 あおいは姿の消せるミルクキャラメルをなめて、裏門に向かった。

「あれ? 今、門が開かなかったか?」
「気のせいだろう」
 裏門を見張っていた兵士に気付かれず、城に潜入することが出来た。

「えっと、執務室はあっちだったはず……」
 あおいは以前お茶会で聞いた場所を思い出しながら、静かに歩いた。
 すると、前方からクレイグがやって来た。
「!!」
 あおいは壁にくっつくようにして立ち止まった。

「おや? 何か気配がするようですが?」
 クレイグはあおいの目の前で立ち止まり、辺りを見回した。
「誰も居ませんね……気のせいでしたか」
 クレイグは首をひねりながら歩いて行った。

「ああ、危なかった」
 あおいは急ぎ足で執務室に向かった。

「ここだ!」
 あおいはそっとドアを開けた。
 机には書類の山がそびえ立っていた。
 あおいは机の後ろに回り込んだ。

 アレックスが真面目な顔で書類を読み、サインをしている。
 その目鼻立ちはやはり美しく整っていて、見とれてしまう。
「アレックス様!」
「!? あおいの声が聞こえたようですが……疲れすぎでしょうか?」

 アレックスが周りを見渡している。あおいは口の中のキャラメルを飲み込んだ。
「おひさしぶりです、アレックス様! 差し入れを持ってきました!」
 あおいの姿が急に現れたので、アレックスは少し驚いた。
「あおい、勝手に入ってきてはいけませんよ」
 アレックスはそう言いながらも嬉しそうだった。

「兵隊さんに追いかえされてしまったから……こっそり入って来ちゃいました」
 あおいはポケットから姿を消せるミルクキャラメルを出して、アレックスに渡した。
「売るなとは言われたけど、あげるなとは言われていませんから」
 アレックスはちょっと呆れた顔をしてから、笑ってキャラメルを受け取って机の上に置いた。

「差し入れはこちらです」
 あおいはバスケットを置いて、中にあった薬草クレープとチョコレートのクレープを取り出した。そしていつものポーションゼリーなども机の脇に置いた。

「ありがとう、あおい。それにしても、そんなに私に会いたかったのですか?」
 アレックスが悪戯っぽく笑って問いかける。
「……アレックス様が来られないと、楽しくありません」
 あおいは赤い顔をして答えた。
「あおい……」

 アレックスの手が、あおいの髪に優しく触れる。

「はい! そこまで! 勝手に王宮に入るのは犯罪ですよ!」
「クレイグ!?」
「クレイグ様!?」

 ドアを開けたクレイグは、冷たい目であおいとアレックスを見た。

「やっぱり、先ほどの気配はあおい様でしたか」
「うう……」
「差し入れなら、私を通して下さい。あと姿を消せるキャラメルは没収致します」
 クレイグはアレックスの机の上に置かれていたキャラメルをすべて取り上げてしまった。

「アレックス様、お仕事が終わればまた自由に町に遊びにいけますから。頑張って下さい」
 クレイグはそう言って綺麗な顔で微笑んだ。怖い。

「もう二週間も書類漬けですよ?」
 アレックスは疲れた表情でクレイグに訴えた。
「いままで城を抜け出して遊んでいたツケですよ」

 あおいは、アレックスが可哀想になった。
「あおい様も、アレックス様の仕事の邪魔はされませんよう、お願い致します」
 クレイグは微笑んでいたが、目は笑っていなかった。

「はい! 分かりました!!」
 あおいは逃げるようにして、王宮を後にした。
「クレイグ様、怖かった……」
 
 あおいは、アレックスに会うには、またしばらくかかりそうだなとため息をついた。
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