貴方の言葉は信じられない…。

山葵

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「リリアンの事など好きなわけないだろう。親が決めた婚約者だから仕方なく仲良くしているんだ。うちが災害に合わなければ、あんなのと婚約破棄してライラと結婚したいよ。まぁあいつは俺に惚れているから、ちょっと優しくすれば俺の欲しい物を何でもくれるんだぜ!いい金蔓だよ」

婚約者であるロバート様の言葉に、私は動く事が出来ずに立ち尽くした。

「酷い奴♪リリアンの心を弄んで笑っているんだからなぁ~。そう言えば、ライラとはあの後どうなったんだよ?2人で途中で抜けて何処へ行ったんだ?」

「勿論、宿屋に直行さっ!!宿屋に行ってする事なんて決まっているだろう。今日も学園が終わったら落ち合う事になっている」

そう笑って話しているロバート様が気持ち悪い物に見えて目眩がした。
彼への信頼が崩れ落ちた瞬間だった。


私リリアン・モルガートは、伯爵家の一人娘。
その為、婿養子となるアイバン伯爵家三男のロバート様と婚約した。

アイバン伯爵に連れられて来たロバート様は、とても明るく人懐こい性格で、私達は直ぐに仲良くなった。

その後、アイバン伯爵領地が天災に見舞われ農作物や農地、橋の崩落と多大な被害が出てしまい、アイバン伯爵家だけではとても賄えない為、モルガート伯爵家から援助をしている。

金蔓ね…お父様も私も馬鹿にされたものね。

冷静になった私は、その場をそっと離れた。

もう私の心の中にロバートへの想いは無い。

将来モルガート伯爵家当主を継ぐ立場にある私を蔑ろにする男など要らない。

屋敷に戻った私は、お父様にロバートが話していた事を告げた。

「アイバンのクズがぁー!!婚約破棄だ!!」

「お父様、こちらから告げても証拠が有りません。ですから、言い訳の出来ない状況で婚約破棄しましょう!」

私は、計画内容を告げるとお父様と共に馬車に乗り、アイバン伯爵家と向かう。

「これはこれはモルガート伯爵。先触れもなく突然どうされた?」

「ロバート様が大変なんです。アイバン伯爵様もご一緒に来て頂けませんか?」

息子が一大事となれば、親のアイバン伯爵も断る事はしない。
馬車に乗り街に出る。

従者にロバートの後を付ける様に言っておいたので、ロバートの要る宿屋は直ぐに分かった。

「ロバート様は2階の一番奥の部屋です。女も入るのを確認しております」

「お父様、アイバン伯爵様。ロバート様は2階の一番奥の部屋に居るそうです。急ぎましょう!」

宿屋の主には従者がお金を渡していたので、私達が2階に行くのを見て見ぬふりをしていた。

部屋の前でお父様が扉を叩くが返事がない。

アイバン伯爵は、返事がない事から、ロバートが返事が出来ない状態なのだと悪い方に考え、従者が主から借りてきた鍵を受け取ると部屋の扉を開けた。

「ロ、ロバート!!何処だ!?」

「えっ!?父上?」

「な、何?キャー!!!」

あらあら♪
ベッドの上には裸で抱き合う2人の姿が見える。

「…ロバート、お前…」

「なっ!これはどういう事だ!?アイバン伯爵、説明してくれ?」

「まぁロバート様…お父様、私…」

「ああ可哀想なリリアン。こんな所に長居する事は無い。屋敷に帰ろう。アイバン伯爵、リリアンと、そこのク…婚約破棄とさせて貰う。援助も打ち切りだ。慰謝料や援助の返済については後で話そう」

「リリアン、待ってくれ!これは、その彼女が誘って来たんだ。俺の好きなのはリリアンだ」

何を言っているのだ?本当に最低な男ね。

「浮気する男なんて願い下げよ!私を好き?よく平気で嘘が言えるわね!貴方の言葉は、どれも嘘っぱちよ!!」

ベッドから飛び出て私を追い掛け様として全裸なのに気が付き慌てて散らばった服を集めている。

アイバン伯爵は、崩れ落ちる様に膝をついた。


「お父様、名演技でしたわ。お父様と私を馬鹿にした代償は今のアイバン伯爵家には大きいでしょうね」

私達が屋敷に戻り、ゆっくりお茶を飲んでいるとアイバン伯爵夫妻、長男のグライブ様、二男のエモンド様が訪ねて来た。

我が家に援助の返済を求められたら、今のアイバン伯爵家は没落するしか無い。
家族総出で謝りに来たのだろう。

お父様と応接室に入れば、4人は床に座り、頭を下げていた。

「この度は、愚息がリリアン嬢に大変な事をしてしまい申し訳御座いませんでした。ロバートとは縁を切り屋敷を追い出しました。慰謝料は、少しづつですが払わせて頂きます。ですが、援助の返済は領地が戻るまで待って貰えないでしょうか?お願い致します」

「援助なして領地の立て直しが出来るとは思えないが?」

「どこか援助してくれる所を探して…」

私は、お父様の顔を見て頷いた。

「リリアンが、今回の婚約破棄と援助は別の事と言っておる。援助は続けてやる。私もアイバン伯爵家が失くなるのは嫌だからな」

「あ、ありがとう御座います!」

お父様は、4人にソファーに座る様に言い、侍女にお茶の用意をさせる。

「しかしクズ…ロバートのお陰で、うちのリリアンは傷物になってしまった。これから婚約者探しとなるとなかなか…」

「あ、あのー僕は、駄目ですか?」

そう言ったエモンドを5人は一斉に見た。

「僕は二男ですし、兄のスペアでしたので、まだ婚約者も決まっていません。リリアン嬢の事は小さい頃から知っておりますし、ずっと可愛い人だと思っていて…」

「エモンド、なんて図々しい事を!モルガート伯爵、申し訳御座いません」

「いや、良いかもしれん。エモンド君は、グライブ君と共に伯爵当主と成るべく学んできた。そうだな…よし、エモンド君の申し込みを受けよう!」

「お、お父様!?」

良かった!良かった!と言って喜びお父様。
これはもう決定なのだ。

戸惑っていたアルバン伯爵夫妻とクライブ様も、お父様と一緒に喜んでいる。

「リリアン嬢。ロバートの事は本当にすまないと、謝っても許される事では無い事も分かっています。でも僕はリリアン嬢と一緒に歩んで行けたらと心から思っています。どうか一緒に歩む事を許して下さいませんか?」

「浮気は絶対に許しませんよ!」

「浮気はしません。約束します」

「私は次が有りません。裏切ったらアルバン伯爵家を全力で潰しますよ!」

「貴女を裏切りません。神に誓います!」

婚約は決定したのに私の意思を尊重してくれるエモンド様。
彼を信じてみよう。

「エモンド様、婚約の申し込みをお受け致します。貴方は私を裏切らないと信じておりますわ」

最後にもう1度、裏切ったら許さないと釘を刺して私は婚約を受け入れたのだった。


END
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