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「ご、ごめんなさい…やっぱり私には、む、無理です。こ、これ以上は、出来ません。」
目の前には、私の事を凄い目で睨むクルエラ様。
「何を今更言っているのよ!ほら、ここで私の事を押して噴水に突き落とすのよ!ほら、ドンと押す!」
クルエラ様は、私の手を掴むと自分を押せと強要した。
「もう許して下さい。これ以上は、本当に無理なんです。」
「今更、手を引こうなんて許さないわよ!ほら、こうやってドンと押し…」
「きゃあー!!!」
ザバーンッ!!!!
クルエラ様が、私を押した拍子に、体制を崩してしまった私が噴水に落ちた。
水飛沫の音に気が付いた人達の視線が私達2人に向けられていた。
「…ひ、酷いです。もう無理だと嫌だと言ったのに…」
「ちょっと、早くそこから出て来なさい!皆が私達を見ているでしょう!?まったく鈍臭いんだから。」
「シャルロッテ!!」と呼びながら慌てて駆け寄ってくれたのは、私の婚約者ドルマイン様だ。
「シャル、大丈夫かい?どうしてこんな事に。」
ドルマイン様は、自分の服が濡れるのも気にせずに私を噴水から助け出してくれた。
「クルエラ嬢、どういう事か説明して貰えるかな?なぜシャルロッテが噴水に落ちたのかな?」
「ド、ドルマイン様、もしかして勘違いされていますの?嫌ですわぁ~、わたくしが丁度通り掛かった時に、シャルロッテさんが石に躓いて、そのまま噴水に落ちてしまわれましたの。わたくしも咄嗟に手を差し伸べたのですが間に合わず…本当に災難でしたわね、シャルロッテさん。」
クルエラ様が扇子を出して引き攣った口元を隠している。
この状況を見れば、クルエラ様が言っている事も嘘とは取る事が出来ない。
「あ、あのー、私達、イジワール侯爵令嬢様が、シャルロッテ様を突き落とす所を見てました。2人が噴水の前で何か言い争いをしていたので、気になって3人で見ていたんです。そしたらイジワール侯爵令嬢様がシャルロッテ様の手を掴んで…。ごめんなさい。私達が見てないで助けていれば、シャルロッテ様が噴水に落ちなくて良かったのに。」
彼女達は、子爵家と男爵家のご令嬢。
イジワール侯爵家のクルエラ様に物申すなんて、相当の勇気がなければ出来ない。
状況を説明してくれたのだって、ドルマイン様が問われたから出来た事だろう。
「だ、そうだよ。君、最近は僕のシャルロッテに近付いて居るんだって?シャルロッテに嫌がらせされたと有りもしない悪い噂を言いふらしているとか聞いたけれど、どうやら話しは本当だったみたいだね。」
クルエラ様は、顔色が悪く震えていた様に見えたのだが、それは一瞬の事だった。
「違います!わたくしは、シャルロッテさんに本当に嫌がらせを受けていたのです!!信じて下さい、ドルマイン様。…わ、わたくし、シャルロッテが怖いです…彼女はドルマイン様には良い顔を見せて…本当は凄く性格の悪い意地悪な人なのです…それに気が付いたわたくしに嫌がらせを…。ドルマイン様、どうか騙されないで下さいませ。その人は、貴方様には相応しくありません。直ぐにでも婚約を解消した方が宜しいと存じます。」
「へー。シャルロッテのもう1つの顔か、あるなら見てみたいなぁー。本当に有るならね!君さぁー、しつこいくらいに我が家に釣書を送って来たよね?僕とシャルの婚約が決まっても何回も送って来てた。イジワール侯爵家に抗議文を送った程だ。僕が駄目ならシャルに嫌がらせして婚約者の座から下ろそうとしたのだろうけれど、生憎と僕がシャルロッテを嫌になる事なんて無いよ。婚約も僕から申し込んだんだからね。」
「………そんな」と言って座り込んでしまったクルエラ様に手を差し伸べる者は居ない。
クルエラ様だけでなく、私とドルマイン様との婚約を不快に思って居るご令嬢は多いだろう。
ドルマイン様は、現国王陛下の甥で王位継承権第4位を持つブランビラ公爵家の嫡男。
婚約者の決まっていないご令嬢方が狙っていた優良物件だった。
その中でも、クルエラ様のアプローチは凄まじく、侯爵家の権力を使って、ドルマイン様に近付くご令嬢達を牽制していた。
陰で、自分がドルマイン様の唯一の婚約者候補だと息巻いていたのに、突然のドルマイン様の婚約発表。
しかも相手は、ライバル視もしていなかったラブリー伯爵家のシャルロッテ。
婚約の報告を聞いた時のイジワール侯爵家は凄まじい程の食器が割れる音が鳴り響いていたとか…。
「僕の婚約者に害を成すなんて。イジワール卿には父上から抗議文を送ってもらうから。おい、イジワール侯爵令嬢を屋敷まで送り届けろ。そうだ。イジワール侯爵令嬢、最後にシャルロッテに言う事は有る?」
下唇を噛み、ドルマイン様に抱きかかえられている私を睨むと「有りませんわ!」と言い放った。
彼女も分かっている。
ここで謝罪すれば、少しは恩情される事も。
でも、彼女のプライドがそれを許さなかった。
護衛に連れて行かれるクルエラ様を見送りながら、全てが終わったのだとホッとする。
「…終わりましたね。」
「ああ終わったね。まったく今回の計画を聞いた時の僕の心情を理解している?いくら嫌がらせを止めさせたいからと自分を犠牲にするなんて、ブランビラ家からイジワール家に抗議文を送れば良かっただろう。」
「それでは駄目なんです。クルエラ様に従った様に見せ掛けて最後に鉄砕をくださないと、彼女は諦めてくれません。」
そう、それではクルエラ様の気持ちがそのままで、いつまで経っても私への恨みは消えない。
それに今回の騒動で他のご令嬢達への牽制も出来た。
他のご令嬢達にもドルマイン様を譲るつもりはない。
うふふ、クルエラ様の言う様に、私は本当は性格の悪い悪役令嬢なのかも知れませんね♪
End
最後まで読んで頂き ありがとうございます。
目の前には、私の事を凄い目で睨むクルエラ様。
「何を今更言っているのよ!ほら、ここで私の事を押して噴水に突き落とすのよ!ほら、ドンと押す!」
クルエラ様は、私の手を掴むと自分を押せと強要した。
「もう許して下さい。これ以上は、本当に無理なんです。」
「今更、手を引こうなんて許さないわよ!ほら、こうやってドンと押し…」
「きゃあー!!!」
ザバーンッ!!!!
クルエラ様が、私を押した拍子に、体制を崩してしまった私が噴水に落ちた。
水飛沫の音に気が付いた人達の視線が私達2人に向けられていた。
「…ひ、酷いです。もう無理だと嫌だと言ったのに…」
「ちょっと、早くそこから出て来なさい!皆が私達を見ているでしょう!?まったく鈍臭いんだから。」
「シャルロッテ!!」と呼びながら慌てて駆け寄ってくれたのは、私の婚約者ドルマイン様だ。
「シャル、大丈夫かい?どうしてこんな事に。」
ドルマイン様は、自分の服が濡れるのも気にせずに私を噴水から助け出してくれた。
「クルエラ嬢、どういう事か説明して貰えるかな?なぜシャルロッテが噴水に落ちたのかな?」
「ド、ドルマイン様、もしかして勘違いされていますの?嫌ですわぁ~、わたくしが丁度通り掛かった時に、シャルロッテさんが石に躓いて、そのまま噴水に落ちてしまわれましたの。わたくしも咄嗟に手を差し伸べたのですが間に合わず…本当に災難でしたわね、シャルロッテさん。」
クルエラ様が扇子を出して引き攣った口元を隠している。
この状況を見れば、クルエラ様が言っている事も嘘とは取る事が出来ない。
「あ、あのー、私達、イジワール侯爵令嬢様が、シャルロッテ様を突き落とす所を見てました。2人が噴水の前で何か言い争いをしていたので、気になって3人で見ていたんです。そしたらイジワール侯爵令嬢様がシャルロッテ様の手を掴んで…。ごめんなさい。私達が見てないで助けていれば、シャルロッテ様が噴水に落ちなくて良かったのに。」
彼女達は、子爵家と男爵家のご令嬢。
イジワール侯爵家のクルエラ様に物申すなんて、相当の勇気がなければ出来ない。
状況を説明してくれたのだって、ドルマイン様が問われたから出来た事だろう。
「だ、そうだよ。君、最近は僕のシャルロッテに近付いて居るんだって?シャルロッテに嫌がらせされたと有りもしない悪い噂を言いふらしているとか聞いたけれど、どうやら話しは本当だったみたいだね。」
クルエラ様は、顔色が悪く震えていた様に見えたのだが、それは一瞬の事だった。
「違います!わたくしは、シャルロッテさんに本当に嫌がらせを受けていたのです!!信じて下さい、ドルマイン様。…わ、わたくし、シャルロッテが怖いです…彼女はドルマイン様には良い顔を見せて…本当は凄く性格の悪い意地悪な人なのです…それに気が付いたわたくしに嫌がらせを…。ドルマイン様、どうか騙されないで下さいませ。その人は、貴方様には相応しくありません。直ぐにでも婚約を解消した方が宜しいと存じます。」
「へー。シャルロッテのもう1つの顔か、あるなら見てみたいなぁー。本当に有るならね!君さぁー、しつこいくらいに我が家に釣書を送って来たよね?僕とシャルの婚約が決まっても何回も送って来てた。イジワール侯爵家に抗議文を送った程だ。僕が駄目ならシャルに嫌がらせして婚約者の座から下ろそうとしたのだろうけれど、生憎と僕がシャルロッテを嫌になる事なんて無いよ。婚約も僕から申し込んだんだからね。」
「………そんな」と言って座り込んでしまったクルエラ様に手を差し伸べる者は居ない。
クルエラ様だけでなく、私とドルマイン様との婚約を不快に思って居るご令嬢は多いだろう。
ドルマイン様は、現国王陛下の甥で王位継承権第4位を持つブランビラ公爵家の嫡男。
婚約者の決まっていないご令嬢方が狙っていた優良物件だった。
その中でも、クルエラ様のアプローチは凄まじく、侯爵家の権力を使って、ドルマイン様に近付くご令嬢達を牽制していた。
陰で、自分がドルマイン様の唯一の婚約者候補だと息巻いていたのに、突然のドルマイン様の婚約発表。
しかも相手は、ライバル視もしていなかったラブリー伯爵家のシャルロッテ。
婚約の報告を聞いた時のイジワール侯爵家は凄まじい程の食器が割れる音が鳴り響いていたとか…。
「僕の婚約者に害を成すなんて。イジワール卿には父上から抗議文を送ってもらうから。おい、イジワール侯爵令嬢を屋敷まで送り届けろ。そうだ。イジワール侯爵令嬢、最後にシャルロッテに言う事は有る?」
下唇を噛み、ドルマイン様に抱きかかえられている私を睨むと「有りませんわ!」と言い放った。
彼女も分かっている。
ここで謝罪すれば、少しは恩情される事も。
でも、彼女のプライドがそれを許さなかった。
護衛に連れて行かれるクルエラ様を見送りながら、全てが終わったのだとホッとする。
「…終わりましたね。」
「ああ終わったね。まったく今回の計画を聞いた時の僕の心情を理解している?いくら嫌がらせを止めさせたいからと自分を犠牲にするなんて、ブランビラ家からイジワール家に抗議文を送れば良かっただろう。」
「それでは駄目なんです。クルエラ様に従った様に見せ掛けて最後に鉄砕をくださないと、彼女は諦めてくれません。」
そう、それではクルエラ様の気持ちがそのままで、いつまで経っても私への恨みは消えない。
それに今回の騒動で他のご令嬢達への牽制も出来た。
他のご令嬢達にもドルマイン様を譲るつもりはない。
うふふ、クルエラ様の言う様に、私は本当は性格の悪い悪役令嬢なのかも知れませんね♪
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