私に姉など居ませんが?

山葵

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「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」

「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」

「婚約破棄で構わない。慰謝料も勿論払うよ。クリス、ありがとう」

私は婚約者スティーブと結婚破棄した。

スティーブ様が用意していた書類にサインをし、慰謝料も請求し終えた。

「ところでスティーブ様、この事はリンベル伯爵様はご存知なのですか?」

「いや、まだ話してはいないよ。君に承諾して貰い、事を終えてから話した方が良いかと思ってね」

それで気が付いていないのね…。

「ところでスティーブ様、一体どこのお姉様と婚約をするのですか?」

「えっ?何処のってモーガン子爵家の…君のお姉さんだよ?」

モーガン子爵家には、私と弟のロイドしか子供は居ない。

「私には弟しか居ませんよ?姉などおりません」

「そんな馬鹿な…いつも君の支度が遅い時に挨拶に来てくれる…」

「ああっ!」

「ほらっ、居るだろう!?美人のお姉さんがっ」

「それは姉ではなく母のダリアですね。母は、童顔だから、20歳代によく見られるんです。ですが34歳ですよ。あら嫌だ。母の歳をバラしてしまいましたわ。怒られますので、内緒にして下さいね!」

「母親?嘘だー!!そんな…どう見たって…」

婚約する時に家族の顔合わせをしたと思うけれど、見ていなかったのかしら!?

私は従者に言ってお母様を呼んできて貰う。

「クリス。至急の用とは何なの?あらスティーブ君、ご機嫌…あらあら顔色が悪いわ。とてもご機嫌ようという感じではないわね!?先生を呼んだ方が良いかしら?」

「お母様。スティーブ様がお母様を私の姉だと思っていらしたみたいですわ」

「まぁスティーブ君ったら、お世辞でも嬉しいわ!ありがとう♪」

その言葉に、更にスティーブ様の顔色が悪くなったのは言うまでもない。

「それではスティーブ様、慰謝料の方は宜しくお願い致しますね!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!婚約破棄は…」

待つ訳がない!
いくらお母様が童顔で若く見え美人だけれど、姉と間違えるなんて信じられない。

母だろうが姉だろうが、私の身内を好きになったからって婚約を解消しようとする男なんて、こっちから願い下げだ!

従者にスティーブ様を玄関まで送るように伝え、私はお父様に婚約破棄の事を伝えに執務室へと向かった。


END
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