私の好きなお兄様

山葵

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そろそろ夏の長期間休暇も終わるのでは無いかと思われる頃に、お兄様は、用が出来たからと侯爵邸に1度戻ると言う。

「リリアナも一緒に戻らないか?1人で残すのは心配でならない…」

「お兄様は、心配性ですね。わたくしは、そんなに子供ではありませんよ。それに、お兄様は、学園も始まりますし、このままお戻り頂いても構いませんよ?」

「な、何で…リリアナは、俺が居なくて寂しくはないのか!?」

 お兄様は、怒って拗ねてしまって、なんだか可愛らしい。

「ふふ…」

「ムッ、何が可笑しいんだ?」

あらあら、顔が赤くなってしまって。

「寂しいですよ…でも、わたくしの為に、お兄様の貴重な時間を裂くわけには参りません。どうか学園に戻り…「嫌だ!」

はいっ?

「1度、屋敷には戻るけれど、直ぐに此方に戻ってくるから!」

そう言われて、馬車ではなく、馬に乗って行った方が早いと帰って行きましたわ…。

お兄様が居なくなった屋敷は静かで、わたくしの為に、散歩や庭でのお茶をする事もなく、やはり何だか寂しいです。

わたくしの記憶が戻り、体調も万全になれば、屋敷の方に戻るのでしょうが…。

何故わたくしは階段から落ちたのでしょう?

階段を踏み外したのでしょうか…。

分からない…思い出せない…。

思い出すのが…怖い。

「ハァ…ハァ…」

異変に気が付いたマリーが慌てて駆け付けてくれた。

「お嬢様、大丈夫ですか?今、先生を呼びますので、ベッドで横になりましょう」

ご、ごめんねマリー…。
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