優しい家族は私が護ります!

山葵

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それはグラベルド伯爵家に届いた1通の手紙から始まった。

国王陛下より、お義父様への呼び出し状。
両親と共に、シャロンお義姉も登城せよとの御達しだった。

家族全員、とても嫌な予感しかしない。

何故なら、国王陛下とバラドーラ側妃が、バーロック第1王子の婚約者を本格的に探しに入ったと聞いていたからだ。

他家の貴族ならば、もしや我が娘が!と国王陛下からの手紙に喜んだのだろうけれど、グラベルド伯爵家は違った。

なぜならシャロンお義姉様には、近々婚約する予定のカイバルン侯爵家嫡男ライナス様が居たからだ。

幼馴染みであった2人は、相思相愛の間柄。
留学しているライナス様の帰国後に、国王陛下へ婚約許可を貰う事に決まっていた。
後3ヶ月でライナス様も帰国する。

それなのに、このタイミングで、まさかの国王陛下の呼び出し。
本当に嫌な予感しかしない。


国王陛下への謁見の為に登城した両親とシャロンお義姉様を、どうか私達の思い過ごしで有ります様にと祈りながらアロンお義兄様と帰宅を待っていた。

馬車から降りてきたシャロンお義姉様の青い顔を見て、私達の予想通り最悪の事態が起きたのだと理解した。

「国王陛下の命により、シャロンとバーロック第1王子との婚約が決まった。」

「なぜシャロンなのですか?伯爵家である我が家よりも王家に相応しい高位貴族令嬢が居るではないですか?」

「バラドーラ側妃の希望だそうだ。シャロンの優秀な所が目に留まったのだろう。バーロック殿下の不足する部分を補って欲しいと言われた。」

「不足部分?ならば殿下の執務全てをシャロンが行なう様になるではないですか?それに殿下は、女性関係にもダラシないとの噂です。そんな男に…」

「アロン!少し口が過ぎる。不敬罪で捕らわれるぞ!」

「僕だって場を弁えて発言します。この場だからこそ言えるのです!父上は、あんな男にシャロンを嫁がせて良いとお考えですか?シャロンが不幸になると分かっているのに、あんな男にシャロン嫁がせるのですか!?」

「誰があんなのに娘を嫁がせたいなどと思うか。王命でなければ辞退している。国王陛下も、バーロック殿下には悩まされていると聞くが、やはり我が子可愛さなのだろう。足りない分は王妃になる者が補えば良いとのバラドーラ側妃の言葉に頷いたそうだ。」

お義母様に抱かれ、泣き崩れるシャロンお義姉様。

私に何か出来る事はないのだろうか?
この家に、家族として迎え入れてくれたグラベルド家の人達に恩返しが出来たなら…。

ふとある計画が浮かんだ。
駄目元で試してみたい。
上手く行けば、シャロンお義姉様を幸せに出来るのでは無いだろうか。

「お義父様。上手く行くかは分かりませんが試してみたい事が有ります。聞いて頂けますか?」

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