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私、マリアベルは、グラベルド伯爵夫妻の実子ではない。
10年前に両親が事故で儚くなり、幼児であった私を母の生家であった子爵家からは引き取りを拒否された。母の従姉であったお義母様が、このままでは孤児院に連れて行かれると知り、不憫に思いグラベルド伯爵に頼んで、私を引き取ってくれたのだ。
母は、子爵令嬢であったが、出入り商人であった父と許されざる恋に落ちた。
それを知った父親に引き裂かれそうになり駆け落ちしたのだと、お義母様から聞いた時には驚いた。
私の母は、元貴族令嬢とは思えない位に、平民生活に馴染んでいた。
裕福ではなかったが、毎日の暮らしには困らない生活をしていたし、家族仲も良く、とても幸せだったのを覚えている。
優しいグラベルド夫妻は、私を引き取ると直ぐに養子縁組をし、実の娘の様に育ててくれた。
平民の娘を養子にするなんてと、周りに陰口を言われただろうに、2人は気にする事もなく、アロンお義兄様とシャロンお義姉様と同じ様に私に接し愛情を持って育ててくれたのだ。
そして、突然、兄妹になってしまった私を、アロンお義兄様もシャロンお義姉様も嫌がる事なく、本当の兄妹として接してくれた。
そんな優しい私の家族が困っているのだ。
今こそ恩返しが出来ないでどうする。
「シャロンお義姉様。どうか1年間だけ我慢して下さい。私が、学園に入学したらバーロック殿下を落としてみせますわ。こちらからの婚約を断われないなら、向こうからシャロンお義姉様に婚約破棄して貰いましょう。傷物になっても、シャロンお義姉様にはライナス様が居ますから問題ないでしょう。」
私の計画を聞いて、家族は驚き反対したが、最終的には他に方法がない為、渋々了承した。
入学までに私達はバーロック殿下の好みの女性のタイプや何やらを全て調べ上げ、それに沿って計画を練りに練って準備をし、私はシャロンお義姉様と同じ学園に入学した。
◈◈◈
「お義姉様、どうですか?」
「とても綺麗よ。本当に、どこから見てもマリアベルには見えないわ。」
「うふふ♪化粧の練習をした甲斐が有りました!では行ってきますね♪」
今の私は、マリアベルではなく、ライナだ。
平民で家名もない只のライナ。
カツラを被り、少し濃いめの化粧をし胸に詰物をすれば、地味のマリアベルは消える。
バーロック殿下は、派手めのグラマーな女性が好みと聞いている。
私は、いつもバーロック殿下が派手な取り巻き女性達とイチャイチャして騒いでいる場所へと向かった。
バーロック殿下達が、イチャ付く前に到着して待機していないと行けない。
「おい、お前!ここは俺様の場所だっ!とっとと…んっ!?泣いていたのか?お前は、新入生か?」
好みの女性達を引き連れた殿下が、いつも通りお気に入りの場所へとやって来た。
「…あっ。ご、ごめんなさい…えっ?バ、バーロック殿下!?た、た、た、た、大変、も、申し訳、あ、ありません。今、直ぐに消えますので…」
「ふぅ~ん、悪くない。おい、お前、名は何と言う?」
「ライナです。」
「ライナか。おい、お前達は、先に教室に戻れ!」
そう言われた令嬢達は、文句を言いながら私を睨み付けると去っていった。
「ライナ、なぜ泣いていたんだ?」
「あたしも。あっ、すみません。敬語に慣れていなくて。あた、私も、教室に戻りま…」
「何故泣いていたのか答えてないぞ?ライナは美人だから嫌がらせでもされたのだろう?これからは俺の側に居れば良い。俺の側にいればライナに嫌がらせをする者など居ないだろう。」
良し、掛かった!!
私は、それから毎日、この場所でバーロック殿下と会う様になった。
10年前に両親が事故で儚くなり、幼児であった私を母の生家であった子爵家からは引き取りを拒否された。母の従姉であったお義母様が、このままでは孤児院に連れて行かれると知り、不憫に思いグラベルド伯爵に頼んで、私を引き取ってくれたのだ。
母は、子爵令嬢であったが、出入り商人であった父と許されざる恋に落ちた。
それを知った父親に引き裂かれそうになり駆け落ちしたのだと、お義母様から聞いた時には驚いた。
私の母は、元貴族令嬢とは思えない位に、平民生活に馴染んでいた。
裕福ではなかったが、毎日の暮らしには困らない生活をしていたし、家族仲も良く、とても幸せだったのを覚えている。
優しいグラベルド夫妻は、私を引き取ると直ぐに養子縁組をし、実の娘の様に育ててくれた。
平民の娘を養子にするなんてと、周りに陰口を言われただろうに、2人は気にする事もなく、アロンお義兄様とシャロンお義姉様と同じ様に私に接し愛情を持って育ててくれたのだ。
そして、突然、兄妹になってしまった私を、アロンお義兄様もシャロンお義姉様も嫌がる事なく、本当の兄妹として接してくれた。
そんな優しい私の家族が困っているのだ。
今こそ恩返しが出来ないでどうする。
「シャロンお義姉様。どうか1年間だけ我慢して下さい。私が、学園に入学したらバーロック殿下を落としてみせますわ。こちらからの婚約を断われないなら、向こうからシャロンお義姉様に婚約破棄して貰いましょう。傷物になっても、シャロンお義姉様にはライナス様が居ますから問題ないでしょう。」
私の計画を聞いて、家族は驚き反対したが、最終的には他に方法がない為、渋々了承した。
入学までに私達はバーロック殿下の好みの女性のタイプや何やらを全て調べ上げ、それに沿って計画を練りに練って準備をし、私はシャロンお義姉様と同じ学園に入学した。
◈◈◈
「お義姉様、どうですか?」
「とても綺麗よ。本当に、どこから見てもマリアベルには見えないわ。」
「うふふ♪化粧の練習をした甲斐が有りました!では行ってきますね♪」
今の私は、マリアベルではなく、ライナだ。
平民で家名もない只のライナ。
カツラを被り、少し濃いめの化粧をし胸に詰物をすれば、地味のマリアベルは消える。
バーロック殿下は、派手めのグラマーな女性が好みと聞いている。
私は、いつもバーロック殿下が派手な取り巻き女性達とイチャイチャして騒いでいる場所へと向かった。
バーロック殿下達が、イチャ付く前に到着して待機していないと行けない。
「おい、お前!ここは俺様の場所だっ!とっとと…んっ!?泣いていたのか?お前は、新入生か?」
好みの女性達を引き連れた殿下が、いつも通りお気に入りの場所へとやって来た。
「…あっ。ご、ごめんなさい…えっ?バ、バーロック殿下!?た、た、た、た、大変、も、申し訳、あ、ありません。今、直ぐに消えますので…」
「ふぅ~ん、悪くない。おい、お前、名は何と言う?」
「ライナです。」
「ライナか。おい、お前達は、先に教室に戻れ!」
そう言われた令嬢達は、文句を言いながら私を睨み付けると去っていった。
「ライナ、なぜ泣いていたんだ?」
「あたしも。あっ、すみません。敬語に慣れていなくて。あた、私も、教室に戻りま…」
「何故泣いていたのか答えてないぞ?ライナは美人だから嫌がらせでもされたのだろう?これからは俺の側に居れば良い。俺の側にいればライナに嫌がらせをする者など居ないだろう。」
良し、掛かった!!
私は、それから毎日、この場所でバーロック殿下と会う様になった。
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