【完結】君が好きで彼も好き

SAI

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1. 契約

「だいぶ慣れてきたんじゃん?」
「んあっ……慣れ、てなん、か、ない」
「そう? 前回より柔らかくなるのが早くなったよ」

「そんな、ことっ、な、い」
「そうかな、ほら、もう入れるよ。力抜いて」
「はっ、あ、あぁっ」

身を開いてぬちぬちと飲み込めば、大きなソレを内部に馴染ませる間もなく抽送が開始された。ぞわぞわとした刺激が背中を這い、射精感が高まる。

「まだイッちゃダメだよ。夜は長いから」
「あ、あぁっ」

毎月15日と30日、僕はこうして同居人である泉アキラに抱かれる。

「舌、出して」

言われるまま舌を出すと、泉の舌先が僕の舌を撫でた。

「んんっ」

「腰が揺れてる。楓は真面目だね。俺が言えば素直に舌を出して。ご褒美に一回イっていいよ。もう、もたなそうだし」

泉の腰が激しく僕の体にぶつかり、パンパンと鳴る音と共に最奥を突き続けた。快楽が僕の体を支配すると同時に、黒点のような恐怖が心に沁みを作る。

「あっ、やだ、もうっ」
「だから、イっていいって」

片足を高くあげられて膝に泉の唇が触れた瞬間、僕は身体を反らせてイッた。


 セックスをした日は大抵、僕はそのまま力尽きるので泉のベッドで昼に目が覚める。泉はまだ眠っていて寝息が聞こえた。サラサラの髪の毛、高校の時よりの明るい髪色、鋭い切れ長の目、あの頃よりも大人びた顔は男を感じさせる。

「……イケメンとはこういう顔のことを言うんだろうな」

高校の時から変わらない黒髪ショートカット、平凡な二重顔の僕とは大違いだ。

 泉と僕は高校の同級生だ。同級生と言っても地味でオタク寄りの僕とは正反対。泉は派手で女性が群がるような目立つグループにいて、僕と関わることは殆ど無かった。この先も関わることがないと思っていた。

そんな僕が泉と一緒に暮らすようになったのは、短大を卒業して直ぐのことだ。公務員試験に落ちた僕はこれ以上実家に迷惑はかけられないと家を出て一人暮らしを決意。バイトで生計を立てながら勉強してもう一度公務員試験に挑むつもりだった。

だが現実は甘くない。

意気揚々と向かった不動産屋で想像していたよりも高い家賃相場に頭を抱えていた時に再会したのが泉だ。泉は仕事を辞めホストに転職したばかりでお金が無いという。そんな泉のルームシェアの話を断る理由はなかった。


うぅ、トイレ行きたい。

泉を起こさない様にそっとベッドを抜け出そうとすると腕を掴まれた。

「契約。ヤッた翌日は俺が起きるまでベッドにいること……」

「分かってる、分かってるけどちょっとトイレに……あっ、んんっ」

泉に腕を引かれてベッドに倒れるとそのまま泉の唇に唇を塞がれた。触れただけのキスが少しずつ深くなる。

「ちょ……もう、無理。漏れる」

俺は泉の体を押しのけるとトイレへと駆け込んだ。

 契約は一緒に暮らして半年後の10月に結んだ。僕が公務員試験に落ちて酷く落ち込んでいた日だった。テーブルに突っ伏して、飲めない酒を飲みまくっていた僕に泉が言った。

「働きすぎなんじゃん。俺が養ってやろうか? そしたら勉強に集中できるだろ」

その頃の泉はお店でもナンバー4だかの位置にいて結構お金が稼げるようになっていた。僕は試験に落ちた理由を勉強不足のせいにしたかったんだと思う。回らない頭で考えて、頷いた僕に泉は二つの条件を出した。

一つ、毎月15日と30日にセックスさせること。トップを目指すホストともなるとお客さんに手を出すわけにもいかず、その辺の女性に手を出すわけにもいかず、下の方の欲求解消に不自由するらしい。二つ目はセックスした翌日は泉が目を覚ますまで一緒にいて目が覚めたらキスをすること、だ。

正常な判断なら断る契約だと思う。でも僕はその時、明らかに酔っぱらっていたし、人肌恋しくもあった。試験に落ちるとお前はダメだと判を押されたような気分になる。劣等感の塊のようになっていた僕に、キラキラしている泉が欲情する。そのことに欲情した。


「お、やっとトイレから出た。飯、パスタで良い?」
「うん」

セックスが終わり、翌日のキスが終われば僕たちはただの同級生に戻る。泉は器用に何でもこなすキラキラホストで僕は冴えないフリーターだ。

「今日はバイト?」
「うん、16時から」
「辞めればいいのに」

「いや、全部を面倒見てもらうのは気が引けるから」

「楓がその方が気が楽っていうならいいけど」

泉は契約をした日から「勉強はどう?」とか「勉強してる?」とか、とにかく「勉強」っていう言葉を言わなくなった。それは勉強する身にとってはありがたい。

「ほら。ペペロンチーノ。スープはレトルトな、好きなの選べよ」

色々な種類のレトルトスープが入っている長方形の箱を泉は俺の前に置いた。

「今日はコンポタにする」

ほら、と出した泉の手にコンポタを乗せると数十秒後にはカップに入って出てくる。月2回のセックス、それだけで至れり尽くせりだ。でもこれって、どうなんだろう。この生活に慣れてしまうのは少し、いや結構ヤバい気はしている。


 バイト先は家から20分ぐらい歩いたところにある居酒屋だ。お金が欲しいからと言って俺には泉のようなホストは出来ないし、でも時給は高い方が良い。そこで見つけたのが深夜まで営業している居酒屋だ。夜型寄りの生活になれば泉との生活リズムも大きく変わらないし、気を遣うことも少ないのかなと思ったのも、このバイトに決めた理由だ。

「あ、那須川君、テーブルのお醤油チェックもお願いっ」

「はい」

「んふふ、今日の賄い、那須川君の好きなマグロ丼にするって。良かったね」

山口さんは僕と同じ歳の大学生で、ここのバイト歴は僕より一年先輩だ。

「え、なんで知ってるの?」

「この間、休憩がちょっとだけ被った時、嬉しそうな顔して食べてたのを見たから。なんかハムスターみたいで可愛かった」

「可愛いって……」

「ほら、そうやって直ぐに赤くなるところも可愛い」

「もう、からかうのやめてよ」

「そろそろお店オープンするよー」
「いらっしゃいませー」

17時半に店が開店するとちらほらと人が入り20時にはピークをむかえ、21時半を過ぎると人が減り始め、22時過ぎには酔っ払いの宝庫になる。

「お待たせしました。生ビールでございます」

「あー、おにーさん、なんかいい雰囲気だねー。真面目で浮気とかしなさそう」

テーブルにビールを置いた手を掴まれた。でた、絡み酒の酔っ払いだ。最初の頃は戸惑っていた酔っ払いへの対応もこの半年で随分慣れたと思う。

「はははは、どうですかね」
「おい、お前絡むなよ」

「俺、バイなんだけど、俺と付き合わない~?」

「こら、おにーさん、困ってるだろ」

「人は見かけによらないって言いますよ。ちゃんと自分を大事にしてくれる人、見つかると良いですね」

ニコリと微笑むと空いたお皿をお盆に乗せて下がった。

「聞いてたよー。最近、バイのお客さんに口説かれること多くない?」

「そうかな」

「きっとそういうフェロモン出てんだよ、ふふふ」

「山口さんこそ、お客さんによく口説かれてるじゃん」

「既婚者のおっさんにね……うがー」


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