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13. 嫉妬
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このまま泊まっていけば? と皐月さんには言われたけれど、一人でちゃんと考えたくて家まで送って貰った。あんな風に体を繋げておきながら一言も好きだと口にしない僕を皐月さんは責めたりしなかった。それどころか、ゆっくり考えていいと言ってくれる。
「今日のことは俺にとってはご褒美みたいなものだから。でも、もし、またしたくなったら迷わずに俺を選んで」
皐月さんの優しさにほっとすると同時に胸が痛む。こんなに甘えていていいんだろうか。
玄関を開けて部屋に入るとリビングに明かりが見えた。
「泉、帰ってたんだ」
「あ、うん。楓は出掛けてたんだな」
「うん、ちょっとね」
泉の前を横切って冷蔵庫から飲み物を出す。お酒を飲んで散々喘いだ後で、喉が渇いていた。
「ちょっと声、掠れてる。風邪でも引いた?」
泉が近づいてくる。欲求不満は解消されたから、泉が近づいてももう平気なはずだ。
「そうかな?」
「楓?」
「ん?」
「その香水の匂い、皐月さんといた?」
「あぁ、ご飯、ご馳走になってたんだ」
「へぇ、首にキスマークなんかつけて」
「あ……」
泉に見つけられると恥ずかしくて首に手を当てた。
「この間、俺の手は避けたのに皐月さんには触らせるんだな。ま、付き合ってるなら当然か」
「付き合ってるわけじゃないよ」
僕の言葉に弾かれたようになって泉が僕の手を掴んだ。
「それってまだ俺にもチャンスはあるってこと?」
「なっ、なんだよそれ。泉、彼女いるだろ」
「いないよ。俺が好きなのは楓だから」
「……冗談にしても面白くないよ」
「冗談じゃない。すっと楓が好きだった。でも、楓はノンケだし試験勉強で誰とも付き合う気がないって言うからずっと我慢してた」
「嘘だろ?」
「皐月さんと付き合ってると思ってたから楓に拒否されたくなくて距離をとってたけど、付き合ってないって言うならもう遠慮はしない」
「ちょ、ちょっと待って」
泉が僕の手を掴んでソファに押し倒した。
「なんで皐月さんとセックスしたの? 無理やり? なわけないか。皐月さん、そういうことしなさそうだし。じゃあ、合意か」
クソっと泉が呟いて僕の唇に噛みつくようなキスをした。
脱がされるというよりははぎ取られるという表現の方が正しい。そのくらいぐちゃぐちゃに衣服を取られて裸にされると、僕の体に残る情事の痕に泉が舌打ちをした。
「こんなに印つけられて」
「あっやだっ」
愛撫することもなくアナルに指を突っ込まれる。
「中もこんなに柔らかい」
泉が中の感触を奥まで確かめていると、掻きだしたはずのものが中から流れ出てくる気配がした。
「あっ、だめっ」
慌てて中を締めようとするにも泉の指が入っているこの状態では無意味だ。
「中出しまでさせたのかよ。全部、上書きしてやる」
「あっ、あぁっ」
さっきまで皐月さんのを咥えていた場所に今度は泉が入ってくる。
「楓の体のことは俺が良く知ってる」
円を描くように回した後で深く突き刺され、ヒィッと鳴いた。乳首を舌でなぞり突起を弾かれるとより大きな快楽を求めようと下半身が揺れる。
「ほら、な。もっと欲しくて腰が動いてる。この奥を突きながら膝にキスすると、楓はいつも涙目になって体を震わせるんだ」
「あっ、あっ、あっ、いずみっ」
「俺にしなよ。どこまでも気持ち良くしてやるから」
両足を掴まれて突き当りの更に奥まで泉が腰を進めようとする。ジュクジュクとお腹の中から泡立っているような音が聞こえて、そのいやらしさに内部が震えた。
「ほら、言えよ。俺がいいって」
泉がそう追い詰めれば追い詰めるほど皐月さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。あぁ、僕、本当にどうしようもないんだ。泉の意地悪な抱き方も、美味しい料理も、キスも好き。皐月さんの綺麗な笑顔も、優しく僕を追い詰めるようなセックスも好き。
二人とも、すき。
こんなこといけないことなのに。
「泣くなよ。楓」
泉が傷ついたような表情をした。
「ちがう、ちがうんだ」
泉が嫌いなわけでも、セックスが嫌なわけでもない。ただ、僕がどうしようもなさ過ぎて泣けてくる。
「……もっとして、泉」
ソファの背もたれにつかまる様に促され、背後から泉が激しく突き上げる。お腹を押されると鳴く玩具みたいに声を上げながら、足を震わせた。飲み込み切れない泉の精液が太ももを濡らし床に染みを作る。
「すげぇ、ぐちゅぐちゅ言ってるよ、ここ」
「はぁっ、あっ、こっ、こわ、れるっ」
「でも、こういうの好きだろ?」
「すきぃ、すきっ、あっ、あっ、いくっ、いくっ」
体を震わせてそのまま崩れた。さんざんイキまくった僕のペニスからは精液が出ることはなく、ヒクヒクと身を震わすだけだった。
翌朝、というか起こされて目を開けたのは午後3時で、腰が重苦しくはあるけれど久しぶりに良く眠れたことでようやく自分に戻ったような気分だった。
「体、どう? 今日バイトだっけ?」
「体は大丈夫。バイトだけど、17時からだから。泉が起こしてくれなきゃヤバかったな」
「楓?」
「ん?」
「今朝言ったこと、全部本当だから。俺、楓のこと好きだ」
「あ、うん。ありがと」
「そんな困った顔すんなよ」
「困ってなんか……」
「嘘ついたってバレバレだぞ。何年お前のこと見てきたと思ってんだ」
「何年?」
「高校の時と今」
「えっ?」
「ずっと好きだったんだよ。だからもう暫く待つのなんて平気だから、思い詰めんなよ」
「泉」
「それから、もう我慢しないから。キスもセックスも」
「待って泉、それは待って。もう少し、ちゃんと考えさせて」
「……わかった。じゃあ、キスだけにする」
泉はそう言って僕にキスをした。
自業自得とはいえバイトは結構散々だった。中腰の姿勢がとにかく辛くて、ビールケースを持ち上げた時は腰が死ぬかと思った。それなのに山口さんに言わせると「ここ最近じゃ一番マシよ」だ。
「山口さん、仕事終わったらちょっとだけでいいからお茶しない?」
「なに? 相談でもあるの?」
「うん」
「仕方ないなー。 隣のハンバーガー屋さんでポテトおごってよ」
「うん、驕らせて頂きます!」
こうして入った店内は深夜1時すぎとあって人はまばらだ。窓際のカウンター席に並んで座ると山口さんはポテトを口の中に放り込んだ。
「で、相談って?」
「引いたりしないで聞いて欲しいんだけど」
「それは内容を聞かないと分からないわ」
「だよね」
ははっと僕が笑うと山口さんはもう一本ポテトを口に放り込んで指を舐めた。
「でもまぁ、話してみなよ。どんなだって、那須川君は那須川君だもん」
「……あのさ、僕、好きな人が二人いるんだ。どっちかに決めるべきなんだけど、どっちも同じくらい好きで決められなくて」
「相手には話したの?」
「話しては無いけど、気付いてると思う。それで、自分を選んで欲しいって二人に言われてる」
「わおっ、那須川君ってモテるんだねーっ。羨ましいわ」
「ちょっと山口さん、これでも本気で悩んでるんだから」
「んー、決められないって二人に言えば? 二人とも同じくらい好きだって」
「それってアリなの?」
「えーっ、私が那須川君の相手ならナシだけど、でも、伝えられた方がいい。だって決められないんでしょ?」
「うん」
「変に言い訳されるのもムカつくし」
「そう?」
「これは私の経験なんだけど、恋愛ってお互いのルールでするべきなんだよ。一般論とか普通とか関係ない。だって、恋愛はその人とするものだから。私は二人好きってナシだと思うし、一般的にもナシだと思うけど、那須川君の相手がどうかは分からないから」
「話すべき?」
「うん。話すべきだよ。話したら無理だって二人ともいなくなるかもしれないし、一人だけ残るかもしれない。相手にも決めさせてあげなよ」
「相手にも選択肢を……か。確かにそうかも。ありがとう、山口さん」
「うむ。感謝してるならアップルパイも奢ってくれ」
「……太るよ」
「うぐっ、ぬおーっ」
「今日のことは俺にとってはご褒美みたいなものだから。でも、もし、またしたくなったら迷わずに俺を選んで」
皐月さんの優しさにほっとすると同時に胸が痛む。こんなに甘えていていいんだろうか。
玄関を開けて部屋に入るとリビングに明かりが見えた。
「泉、帰ってたんだ」
「あ、うん。楓は出掛けてたんだな」
「うん、ちょっとね」
泉の前を横切って冷蔵庫から飲み物を出す。お酒を飲んで散々喘いだ後で、喉が渇いていた。
「ちょっと声、掠れてる。風邪でも引いた?」
泉が近づいてくる。欲求不満は解消されたから、泉が近づいてももう平気なはずだ。
「そうかな?」
「楓?」
「ん?」
「その香水の匂い、皐月さんといた?」
「あぁ、ご飯、ご馳走になってたんだ」
「へぇ、首にキスマークなんかつけて」
「あ……」
泉に見つけられると恥ずかしくて首に手を当てた。
「この間、俺の手は避けたのに皐月さんには触らせるんだな。ま、付き合ってるなら当然か」
「付き合ってるわけじゃないよ」
僕の言葉に弾かれたようになって泉が僕の手を掴んだ。
「それってまだ俺にもチャンスはあるってこと?」
「なっ、なんだよそれ。泉、彼女いるだろ」
「いないよ。俺が好きなのは楓だから」
「……冗談にしても面白くないよ」
「冗談じゃない。すっと楓が好きだった。でも、楓はノンケだし試験勉強で誰とも付き合う気がないって言うからずっと我慢してた」
「嘘だろ?」
「皐月さんと付き合ってると思ってたから楓に拒否されたくなくて距離をとってたけど、付き合ってないって言うならもう遠慮はしない」
「ちょ、ちょっと待って」
泉が僕の手を掴んでソファに押し倒した。
「なんで皐月さんとセックスしたの? 無理やり? なわけないか。皐月さん、そういうことしなさそうだし。じゃあ、合意か」
クソっと泉が呟いて僕の唇に噛みつくようなキスをした。
脱がされるというよりははぎ取られるという表現の方が正しい。そのくらいぐちゃぐちゃに衣服を取られて裸にされると、僕の体に残る情事の痕に泉が舌打ちをした。
「こんなに印つけられて」
「あっやだっ」
愛撫することもなくアナルに指を突っ込まれる。
「中もこんなに柔らかい」
泉が中の感触を奥まで確かめていると、掻きだしたはずのものが中から流れ出てくる気配がした。
「あっ、だめっ」
慌てて中を締めようとするにも泉の指が入っているこの状態では無意味だ。
「中出しまでさせたのかよ。全部、上書きしてやる」
「あっ、あぁっ」
さっきまで皐月さんのを咥えていた場所に今度は泉が入ってくる。
「楓の体のことは俺が良く知ってる」
円を描くように回した後で深く突き刺され、ヒィッと鳴いた。乳首を舌でなぞり突起を弾かれるとより大きな快楽を求めようと下半身が揺れる。
「ほら、な。もっと欲しくて腰が動いてる。この奥を突きながら膝にキスすると、楓はいつも涙目になって体を震わせるんだ」
「あっ、あっ、あっ、いずみっ」
「俺にしなよ。どこまでも気持ち良くしてやるから」
両足を掴まれて突き当りの更に奥まで泉が腰を進めようとする。ジュクジュクとお腹の中から泡立っているような音が聞こえて、そのいやらしさに内部が震えた。
「ほら、言えよ。俺がいいって」
泉がそう追い詰めれば追い詰めるほど皐月さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。あぁ、僕、本当にどうしようもないんだ。泉の意地悪な抱き方も、美味しい料理も、キスも好き。皐月さんの綺麗な笑顔も、優しく僕を追い詰めるようなセックスも好き。
二人とも、すき。
こんなこといけないことなのに。
「泣くなよ。楓」
泉が傷ついたような表情をした。
「ちがう、ちがうんだ」
泉が嫌いなわけでも、セックスが嫌なわけでもない。ただ、僕がどうしようもなさ過ぎて泣けてくる。
「……もっとして、泉」
ソファの背もたれにつかまる様に促され、背後から泉が激しく突き上げる。お腹を押されると鳴く玩具みたいに声を上げながら、足を震わせた。飲み込み切れない泉の精液が太ももを濡らし床に染みを作る。
「すげぇ、ぐちゅぐちゅ言ってるよ、ここ」
「はぁっ、あっ、こっ、こわ、れるっ」
「でも、こういうの好きだろ?」
「すきぃ、すきっ、あっ、あっ、いくっ、いくっ」
体を震わせてそのまま崩れた。さんざんイキまくった僕のペニスからは精液が出ることはなく、ヒクヒクと身を震わすだけだった。
翌朝、というか起こされて目を開けたのは午後3時で、腰が重苦しくはあるけれど久しぶりに良く眠れたことでようやく自分に戻ったような気分だった。
「体、どう? 今日バイトだっけ?」
「体は大丈夫。バイトだけど、17時からだから。泉が起こしてくれなきゃヤバかったな」
「楓?」
「ん?」
「今朝言ったこと、全部本当だから。俺、楓のこと好きだ」
「あ、うん。ありがと」
「そんな困った顔すんなよ」
「困ってなんか……」
「嘘ついたってバレバレだぞ。何年お前のこと見てきたと思ってんだ」
「何年?」
「高校の時と今」
「えっ?」
「ずっと好きだったんだよ。だからもう暫く待つのなんて平気だから、思い詰めんなよ」
「泉」
「それから、もう我慢しないから。キスもセックスも」
「待って泉、それは待って。もう少し、ちゃんと考えさせて」
「……わかった。じゃあ、キスだけにする」
泉はそう言って僕にキスをした。
自業自得とはいえバイトは結構散々だった。中腰の姿勢がとにかく辛くて、ビールケースを持ち上げた時は腰が死ぬかと思った。それなのに山口さんに言わせると「ここ最近じゃ一番マシよ」だ。
「山口さん、仕事終わったらちょっとだけでいいからお茶しない?」
「なに? 相談でもあるの?」
「うん」
「仕方ないなー。 隣のハンバーガー屋さんでポテトおごってよ」
「うん、驕らせて頂きます!」
こうして入った店内は深夜1時すぎとあって人はまばらだ。窓際のカウンター席に並んで座ると山口さんはポテトを口の中に放り込んだ。
「で、相談って?」
「引いたりしないで聞いて欲しいんだけど」
「それは内容を聞かないと分からないわ」
「だよね」
ははっと僕が笑うと山口さんはもう一本ポテトを口に放り込んで指を舐めた。
「でもまぁ、話してみなよ。どんなだって、那須川君は那須川君だもん」
「……あのさ、僕、好きな人が二人いるんだ。どっちかに決めるべきなんだけど、どっちも同じくらい好きで決められなくて」
「相手には話したの?」
「話しては無いけど、気付いてると思う。それで、自分を選んで欲しいって二人に言われてる」
「わおっ、那須川君ってモテるんだねーっ。羨ましいわ」
「ちょっと山口さん、これでも本気で悩んでるんだから」
「んー、決められないって二人に言えば? 二人とも同じくらい好きだって」
「それってアリなの?」
「えーっ、私が那須川君の相手ならナシだけど、でも、伝えられた方がいい。だって決められないんでしょ?」
「うん」
「変に言い訳されるのもムカつくし」
「そう?」
「これは私の経験なんだけど、恋愛ってお互いのルールでするべきなんだよ。一般論とか普通とか関係ない。だって、恋愛はその人とするものだから。私は二人好きってナシだと思うし、一般的にもナシだと思うけど、那須川君の相手がどうかは分からないから」
「話すべき?」
「うん。話すべきだよ。話したら無理だって二人ともいなくなるかもしれないし、一人だけ残るかもしれない。相手にも決めさせてあげなよ」
「相手にも選択肢を……か。確かにそうかも。ありがとう、山口さん」
「うむ。感謝してるならアップルパイも奢ってくれ」
「……太るよ」
「うぐっ、ぬおーっ」
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