イケメンと体が入れ替わってラッキーと思ったらそのイケメンがゲイだった

SAI

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8. 元通りの表と裏

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俺は女の子にがっつくのをやめ、というか若干女性不審気味になり、阿川は目標であった初体験を終えた。その相手が俺になったのは想定外ではあったが、こうして体を入れ替える理由を失った俺たちは元の生活に戻っていた。

「相変わらず阿川人気、凄いなぁ」

阿川が目の前で女子に囲まれているのを以前と同じように見つめる。違うのは抱く気持ちだけだ。

「でもあんだけモテたら、大変だと思うぜ」
「ど、どうした? まるでモテたことあるような発言して」

「んー、ちょっとな」
「そういやお前、阿川と仲良くなってなかったっけ?」
「どうだったかな……」

本当に何だったんだろ。夢みてぇ。

 阿川とセックスした翌日、いつものように阿川に挨拶をしたのだが返ってきたのは「おはよう」という作り笑顔だった。

……その他大勢の女に見せるような顔を向けやがって。

その後、何度話し掛けても阿川から返ってくるのはその他大勢へ向ける表情だけで、二人で寝転がった時の笑顔も、嫌味すらない。

「圭太くん!」
「んあ?」
「今日、サークル行く?」
「あー、悪い。今日はパス」

もやもやする日は走るのがいい。

「そっか。最近来てくれなくて寂しいな」
「え?」
「へへへ、前はちょっとなんか怖かったけど、最近の圭太君、なんか変わったって人気なんだよ」

「嘘、マジ?」
「本当。だから今度デートしてよね」

俺が返事をする前に佐藤さんが走って逃げていく。今起こったことが信じられなくて一馬を見ると「ヒューヒュー」といういつの時代なんだよと引くような冷やかしが返ってきた。


 なんか、納得いかねぇ。
夜ご飯を軽く済ませ、運動用スパッツにハーフパンツ、長Tを着ると走り出した。

なんで阿川は態度を変えたんだ? セックスが良くなかったとか?
それ以外、理由らしき理由は思いつかない。だってセックスをする前までは普通だったのだ。

そんなに俺の体ってダメなんだろうか。最初にヤッた奴も次にヤった奴も気持ちよさそうだったし、このまま付き合わないかと誘われもした。それなのに阿川だけ……。

阿川だけ、なんて言ったところで経験人数が3人じゃデータにもならない。

 家路を急ぐ人の群れをすり抜ける。冷たい風が心地よいのに鼻が冷たくてちょっとだけ痛い。そのまま1時間くらい走り続けると阿川とヤッたホテルのある通りに行き着いた。

苦しい、でも、ここから。この苦しさと戦うのが楽しい。止まるな、俺。止まったらもっと苦しくなる。

はっはっと息を吐く。

あ、ここ、このカフェで阿川を待った。カフェを横目に通り過ぎると、大通りに出る瞬間に見慣れたイケメンを見つけた。その容姿は見つけるなという方が無理だ。同じ様なイケメンの男と一緒にホテルの方向へ歩いていく。

阿川……。

思わず足が止まった。
「はっ……はぁ、はぁ、はぁ……っ、はぁ、くるしっ」

なるほど、そういうことかよ。俺ばっかりが気にしてバカみてぇ。

呼吸を整えると俺は家へと引き返した。












「えー、圭太君、誕生日おめでとーっ、そして二十歳、おめでとーっ」

「おーっ、さんきゅーっ」
「12月15日という半端な日ではあるが、お前がこの世に生まれたこの日に俺は感謝する!」

「半端な日って何だよ、半端って」
「彼女ができたら誕生日とクリスマスは一緒にされる確率が高い。家族なら尚更」

「た、たしかに」

 今日誕生日を迎えた俺は居酒屋で一馬に誕生日を祝ってもらっている。一馬は大学からの付き合いではあるが誕生日をちゃんと覚えてくれていて祝ってくれるマメ男だ。彼女がいるのも納得である。

「とりあえず、ビールから?」
「うん、そうしてみる」

父親の泡をすくって舐めたことがあるビールは、二十歳になれば甘く感じるのかと思えばそんなこともなく苦い。

「苦っ」
「ビールは喉越しって言うからな。何度も飲んでいれば分かるようになるぜ」

「おおぅ、一馬って大人」
「お前より半年早くデビューしてるからなっ、でもこれで一緒に飲みに行けるなー」

大学のことや一馬の彼女のことをなんやかんや話し、一馬はビールを3杯、俺はまだ一杯目をチビチビ飲んでいると一馬の携帯が鳴った。

「出れば?」
「いいよ、彼女だし。今日は圭太の誕生日だって言ってるから大丈夫。きっとお前の誕生日を忘れて電話したんだろ」

そのうち電話が切れ、メールが鳴った。

「え?」
「どうした?」
「いや、彼女、なんか痴漢にあったっぽくて」
「はっ、お前、今すぐ行ってやれよ」
「いや……でも」

「迷う必要なんかないだろ。今お前を必要としてんのは俺じゃなくて彼女の方だよ」

「悪いな。ここは俺が驕るからお前はゆっくりしてって」

一馬は一万円札を出すと、釣りはいらねぇから全部使って楽しめと言葉を残して店を出て行った。

「しかし、ビールって苦いな……」


 店を出て街をふらつけば、寒さも相まって妙な寂しさがある。ちょっとだけ体の中があったかいのはさっき飲み終えたビールのお陰だろう。

俺、なんで一人なんだっけ……。阿川の計画が上手くいけば俺、今頃彼女がいたかもしれないのにどこで道が分かれたんだろう。ってさやかちゃんか……。

「女ってこえぇな」

あんなに怖いんなら男でもいいんじゃないかとすら思える。なんか、俺、今本当に寂しいのな。

「あったかくなりたい……」

ふと思い出したのは阿川の腕の中で、同時に手に入らないものだという事も思い出した。

「きっと全部、酒のせいだ」

そう呟いた俺は二回目にセックスした男と会ったBARの扉を開けた。


 ドアを開けた瞬間からいくつかの値踏みをするような視線が体を撫でる。構わず店の奥に進んでバーテンダーに適当なカクテルを注文した。

「お酒は飲める方?」
「いや、わかんねぇ。今日、二十歳になったばっかだから」

「じゃあ、弱めのからにしようか。甘いのとかさっぱりとか好みは?」
「ちょっとだけ甘いやつがいい」

「スノー・ボールです」と渡されたカクテルは白色でクリームのような色をしている。ほんのりとバニラが香る甘めのカクテルで、意外にも後味はさっぱりだ。

カウンターに座ってお酒を飲んでいる間もいくつもの視線を感じてはいたが、自分からどうこうできるわけもなくお酒だけが減っていく。

「あれー?この間のおにーさんじゃん」

そう言って馴れ馴れしく肩に手を回しながら隣に座ったのは、この間俺を抱いた髭のワイルドイケメンだ。

「酒飲んでんの? 未成年じゃなかったっけ」
「今日、二十歳になった」

「へぇ、それはめでたいじゃん。で、そのめでたい日になんでここに1人でいんの? 待ち合わせ?」

俺はゆるゆると首を振ると自傷気味に笑った。

「なんでかな」
「ふぅん、寂しいの?」
「かもな」

体が熱くて気分がいい。良く分からないけど、不思議な力を与えられたような気分になっていた。

「なぁ、俺の体、良くなかった? セックス、下手だった?」


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