【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理

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第四章

4. つかの間の日常

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庭に出るとグショウ隊長とジョン様が結界の中から攻撃を繰り出していた。どうやら中から結界を打ち破ろうとしているかのようだ。グラントさんはその様子を真剣に見つめ、時折結界に触れたりしていた。

「グラントさん!」
駆け寄っていくとグラントさんが顔を上げた。

「帰ってきたのか。」
「はい。」
「小弓とシューピンを出しておけば後でメンテナンスしておくぞ。」
「よろしくお願いします!これが先生が言っていた結界装置ですか?」
「そうだ。ライファたちが旅立って直ぐからリベルダ様の案で作りはじめた。魔力を蓄えて結界として放出する。膨

大な魔力を蓄え強固な結界を作るんだ。似たような物はいくつもあるが、弱い結界ではあの魔獣たちは止まらないだろう。ようやく形になってきたところだ。」

グラントさんが装置に触れるとウィンと音を立ててから結界が消失した。少し前からこちらを伺っていた二人と目が合う。

「グショウ隊長、ジョン様、お久ぶりです!」
「元気そうで何よりですね。」
「ライファさん、今日のご飯は何ですか?何にしますか?」
「えっと、まだ決めてないです。」

「ジョン、会ってそうそう何ですか・・・。いくら楽しみにしていたとはいえ少し落ち着いた方がいいですよ。」

ジョン様はそんなグショウ隊長の言葉を無視して私の手を握る。

「アイス・・・アイスクリーム付きでお願い致します!!」
「は、はい。」

私がジョン様に気圧されている間にレイとルカがグショウ隊長と話をしていた。

「へぇ、5秒先の未来を見るスキル・・・。それは興味深いスキルですね。あとでお手合わせをお願いしても宜しいですか?」

「え、あ、いや、僕はそんなガチで戦うタイプでは・・・。ほら、魔力ランク的には全然敵わないですし。平民です・・・よ?」

「大丈夫ですよ。殺しはしませんし、多少の怪我はね、ほら、この家には薬がたくさんありますから。」
「ヒイイイ。ら、ライファ?」

助けを求めるルカの表情が思いっきり引きつっていて、いつもは余裕綽々に切り抜けるルカの動揺している姿に思わず笑う。

「そういえばグラントさん、レイさんはこの中では一番魔力ランクが高いですよ。レイさんにも混ざっていただいて、もう一度装置の実験をしてみてはどうですか?」

「それは助かります。レイさん、いいですか?」
「あ、はい。勿論。」
「ルカさんは、その後お願いしますね。」

グショウ隊長に笑顔を向けられたルカがまた助けを求める視線を私に送るが、笑顔で頑張れと返した。

「5秒先スキル・・・。組んで戦ってみるのも良いかもしれませんね。」
ジョン様がルカを見つめてニヤリと笑う。

「なんか話がどんどん戦う方向に・・・。」
「じゃあ皆が戦っている間に私はご飯作っておきますね。」

トホホ、と諦めた顔をしているルカを置いて私は食事を作りに家に戻った。



夕食は作り慣れた我が家で作ることにした。

「テン、ただいま。私の留守中、どうだった?」

「お帰りなさいませ。特に変わりはございませんでした。が、シームが仕事をしたくないとごねて出てこない日が10回ほどございました。」

「それでどうしたの?」

「ウニョウを放り込みました。そうすると、ウニョウのしつこさに観念したシームが井戸の中から出てくるのでございます。クックックック。」

「そ、そうなのね。ウニョウも役に立っているってことかな・・・。あとでシームには何か果物を持っていってあげよう。」

「では私は夜のパトロールに行って参りますので。」
「あぁ。いってらっしゃい。」

テンに軽く手を揚げると食材庫の扉を開けた。

野菜に果物、ランチョウの卵にお肉、サワンヤもたくさん。食材庫は食べ物でいっぱいだった。師匠がこんなに料理をするとは思えない。

「カオまである。師匠、私が帰ってくるから食材庫をいっぱいにしたんだろうな。ふふふ。」
思わず声に出して小さく笑う。

今日のメニューはグラタンにしよう。きっと師匠たちのことだ、野菜不足に違いない。だが寒い冬に生野菜という気分にもなれず、野菜たっぷりの熱々グラタンにしようと思った。サラダは焼いて甘みを出した温野菜に、クロッカを使ったオイル系ドレッシングにする。レモンのような酸味のあるカオの実の汁でさっぱり味にしよう。グラタンのこってり味を爽やかに拭ってくれるはずだ。あとは野菜のスープとアイスクリーム。あれ?肉がないな。食事のメンバーを思い浮かべる。

・・・やっぱり肉も必要か。から揚げを追加しよう。

8人と一匹で囲む食卓は賑やかな食事だった。ベルはグショウ隊長の側に張り付いて食事を分けてもらい、ジョン様は一口食べるごとに感動しては美味しさを語り、ルカは薬材の情報をせっせと先生と師匠から仕入れていた。

「こういうのっていいね。ヘイゼル公爵家では別々に食事だったからさ。こうして大勢で食べるってやっぱり、いいなぁ。」

しみじみと言うレイにそうだねと同意する。

「そういえばライファは18歳になっただろう?酒でも飲むか?」
1人で果実酒を飲んでいた師匠に声をかけられた。
「い、いや、お酒はちょっと・・・。」
「なんだ?その反応は。もっと興味津々に喜ぶと思ったんだがな。さては、旅の途中で酒を飲んでやらかしたな?」
師匠の顔がほれほれ、とばかりにニヤニヤっとする。
思い出されるのは酔っ払った挙句にレイに抱き付いて人前でキスをしたあの夜だ。
「くくくくく、ライファ、顔が真っ赤になっているよ。」
全てを知っているレイが笑いをこらえて言う。何をしでかしたんだと興味津々な眼差しに晒されて勢いよく立ち上がった。
「や、やらかしてなんかないっ!!!」



食事を終えジェンダーソン家に帰るレイをもくもくの木まで送る。クルルル、クルルル、と泣く夜鳥の鳴き声が聞こえてユーリスアに帰ってきたのだと身に沁みた。

「いつもこうしてライファが見送ってくれるね。」
「だね。」
「あんなに一緒にいたのに、なんだか帰る家が違うって変な感じがする。」
「くす、なに、それ。」
「一緒の家だったらいいのに、ね?」

レイの言葉に嬉しくなって微笑みかけたところで、サリア嬢の言葉が脳裏をかすめた。

―レイ様は貴族の地位をお捨てになるとまで言われて

「あ、あぁ、うん。」
レイの顔を真っ直ぐに見ることが出来なかった。

「ライファ、どうしたの?」
「え、何が?」
「なんか変な感じ。」
「そう?変わらないよ。あー、レイ?」

「ん?」
「家族と仲良くね。」
「ぷぷ、なにそれ。」

レイがクスクスと笑う。

「うち、家族仲はかなり良い方だと思うよ。父上も母上も大事に思ってくれているってちゃんと分かるし。」
レイはそう言った後、あ、兄さんと姉さんもね、と付け足した。

「ヴァンス様のことを忘れたら嫌味が2倍になって返ってきそうだな。」
「兄さんで2倍なら姉さんは4倍だな。くす、この会話を聞かれていたら3日間はこき使われるよ。」

二人でクスクスと笑った後、目が合って黙った。

そのまま顔を近づけて引き寄せられるように唇を重ねる。触れた皮膚と皮膚、唇を少し押し当てればその唇の柔らかさが分かる。

どうしよう、こんなにも好きだ。
唇を離して顔を上げるとレイに抱きしめられる。

「不安?」
「そういうんじゃ・・・。」
「大丈夫だよ。直ぐに戻ってくる。・・・リベルダ様が呼んでくだされば、だけどさ。」

早く呼んでくれればいいけど、と呟いた後レイは飛獣石に飛び乗った。

「連絡するよ。」
「うん。気を付けてね。」
「ありがとう。行ってきます。」

遠ざかるレイの後姿を見ながら泣きそうになる自分自身の心を掴みきれずにいた。
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