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第十一話【たこ焼きくるくるパーティ】お客さまもやってくる?
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二度目のたこ焼きを作り終えて、たこ焼き器の半分ずつを使って美寧用のミニケーキとつまみ用のアヒージョを作る。焼き上がりを待つ間に、怜と美寧はキッチンに行った。怜はワインを取りに、美寧は自分用に紅茶を入れる為だ。高柳はたこ焼き器の番をしている。
「ナギさんもれいちゃんと同じでお料理が得意なんだね。たこ焼き返しもすごく上手だった!」
やかんにお湯を沸かしている間に、紅茶の葉っぱをティポットに入れながらついさっきの話をする。
二度目のたこ焼きを竹串で返す時、自分が一つと格闘している間に高柳があっという間に十個をひっくり返していくのを見て驚いたのだ。
『ナギさん……すごい』
目を丸くした美寧に、高柳は坦々と『一時期住んでいた祖父母の家が関西だったからな』と言う。
『関西の方はみんなたこ焼きを作れるんですか?』
『みんなかどうかは分からないが、祖父はたこ焼き作りが得意で、俺もずいぶんと練習させられたんだ』
『おじいさま直伝なんですね』
『まあ、そうだな……おじいさまってほどのもんでもないけどな』
にこにこしながら言う美寧に、高柳は少しだけ瞳を細め薄く微笑みながら頷いた。
「確かにナギは料理上手ですが……ナギに興味がありますか?」
「ん?」
後ろから問われた言葉に、戸棚に伸ばしかけた手を止め頭だけ振り返る。
「ミネは相手が誰でもすぐに打ち解けますね」
「そう、かな?」
「ナギが初対面のしかも女性に、あんな風に笑いかけるのを久しぶりに見ました。今の会社に転職してしばらくして会った時には、何故かあまり感情を表に出さなくなっていて……。中身が変わったわけではないので、俺も敢えてそこは追及してはいないのですが」
「そうだったんだ……」
「ミネと話すナギが意外と楽しそうで、良かったと思っています。……ですが」
言い淀むようにいったん口を閉じた怜。その続きが気になった美寧が、紅茶の缶を手に持ったまま体ごと振り向くのと、怜が再度口を開くのは同時だった。
「ですが、正直、面白くありません」
「え?」
何が、とか、どうして、とか沸いた疑問符を口に出そうとした時には、すでに怜の体がすぐ目の前にあった。
美寧の小さな体が、怜の体と彼の背丈とほぼ同じ高さの戸棚の間に挟まれてしまう。
「れいちゃん……?」
戸惑いながら見上げた顔は、いつもながら恐ろしいほど整っている。
じっと美寧を見つめる切れ長の瞳は、一見すると冷たそうに見えるけれど、そこには明らかな熱が宿っている。
「俺は、約束を守れましたか?」
「え?やくそく?」
「はい」
さっきとは全然脈略のない怜の台詞に、美寧は長い睫毛をしばたかせる。
「ミネ以外には料理を作りません」
「あ、」
「今日のたこ焼きは、俺が全部を作ったわけではないのでセーフでしょうか?」
こくこくと、美寧が必死に頭を縦に振る。
久しぶりに会う友人をもてなす為の夕飯がたこ焼きだったのは、高柳の意見もあったのかもしれないが、以前の美寧との約束も理由の一つなのだと気付いたのだ。
「ミネも約束、守ってくださいね」
美寧を見下ろす怜の瞳が濡れたように光る。こういう時の怜が次にすることを、美寧はいつしか覚えてしまっていた。
「れ、れいちゃん…あの……お客様、いるから…」
「しっ。黙って」
短くそう囁くと、怜は美寧の唇を素早く塞いだ。
二度目のたこ焼きを作り終えて、たこ焼き器の半分ずつを使って美寧用のミニケーキとつまみ用のアヒージョを作る。焼き上がりを待つ間に、怜と美寧はキッチンに行った。怜はワインを取りに、美寧は自分用に紅茶を入れる為だ。高柳はたこ焼き器の番をしている。
「ナギさんもれいちゃんと同じでお料理が得意なんだね。たこ焼き返しもすごく上手だった!」
やかんにお湯を沸かしている間に、紅茶の葉っぱをティポットに入れながらついさっきの話をする。
二度目のたこ焼きを竹串で返す時、自分が一つと格闘している間に高柳があっという間に十個をひっくり返していくのを見て驚いたのだ。
『ナギさん……すごい』
目を丸くした美寧に、高柳は坦々と『一時期住んでいた祖父母の家が関西だったからな』と言う。
『関西の方はみんなたこ焼きを作れるんですか?』
『みんなかどうかは分からないが、祖父はたこ焼き作りが得意で、俺もずいぶんと練習させられたんだ』
『おじいさま直伝なんですね』
『まあ、そうだな……おじいさまってほどのもんでもないけどな』
にこにこしながら言う美寧に、高柳は少しだけ瞳を細め薄く微笑みながら頷いた。
「確かにナギは料理上手ですが……ナギに興味がありますか?」
「ん?」
後ろから問われた言葉に、戸棚に伸ばしかけた手を止め頭だけ振り返る。
「ミネは相手が誰でもすぐに打ち解けますね」
「そう、かな?」
「ナギが初対面のしかも女性に、あんな風に笑いかけるのを久しぶりに見ました。今の会社に転職してしばらくして会った時には、何故かあまり感情を表に出さなくなっていて……。中身が変わったわけではないので、俺も敢えてそこは追及してはいないのですが」
「そうだったんだ……」
「ミネと話すナギが意外と楽しそうで、良かったと思っています。……ですが」
言い淀むようにいったん口を閉じた怜。その続きが気になった美寧が、紅茶の缶を手に持ったまま体ごと振り向くのと、怜が再度口を開くのは同時だった。
「ですが、正直、面白くありません」
「え?」
何が、とか、どうして、とか沸いた疑問符を口に出そうとした時には、すでに怜の体がすぐ目の前にあった。
美寧の小さな体が、怜の体と彼の背丈とほぼ同じ高さの戸棚の間に挟まれてしまう。
「れいちゃん……?」
戸惑いながら見上げた顔は、いつもながら恐ろしいほど整っている。
じっと美寧を見つめる切れ長の瞳は、一見すると冷たそうに見えるけれど、そこには明らかな熱が宿っている。
「俺は、約束を守れましたか?」
「え?やくそく?」
「はい」
さっきとは全然脈略のない怜の台詞に、美寧は長い睫毛をしばたかせる。
「ミネ以外には料理を作りません」
「あ、」
「今日のたこ焼きは、俺が全部を作ったわけではないのでセーフでしょうか?」
こくこくと、美寧が必死に頭を縦に振る。
久しぶりに会う友人をもてなす為の夕飯がたこ焼きだったのは、高柳の意見もあったのかもしれないが、以前の美寧との約束も理由の一つなのだと気付いたのだ。
「ミネも約束、守ってくださいね」
美寧を見下ろす怜の瞳が濡れたように光る。こういう時の怜が次にすることを、美寧はいつしか覚えてしまっていた。
「れ、れいちゃん…あの……お客様、いるから…」
「しっ。黙って」
短くそう囁くと、怜は美寧の唇を素早く塞いだ。
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