『 ゆりかご 』 

設楽理沙

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2. ◇芹 裕輔、繁華街にて

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2. ◇芹 裕輔、繁華街にて

 今日は仕事の合間に妻へのpresentを見繕うため、繁華街に
やって来ていた。

 先月妻から貰ったバレンタインチョコのお返しをするつもりで。

 平日の午後、まだ夜の帳も降りていないというのに結構な人出だ。

 普段特に明るい時間帯にこの辺をうろうろすることなどほとんどないので、
思っていた以上の人の多さに少し驚き、意外性を感じつつ私は歩を進めて
行った。

 だいたいどんな物を贈るのか一応考えていたので、求める品物の置いて
ありそうなSHOPはどこだろうと、あちこち視線を流しながら人混みの中を
歩いた。


 こんなにたくさんの人間の中に紛れ込んでいようとも見知っている人間の姿
というのは不思議なくらい、眼がフォーカスしてしまうようだ。

 顔を上げ風景を視野に入れながら歩いていた時に、視覚が瞬時に知っている
顔を捉えた。

 それは見慣れた者だけが感じ取れる感覚。-

 だが、最初はよく似ている他人なのだと思った。
 理由はその女性が隣の見知らぬ男に楽しげに話しかけていたからだ。

 
 だが、よく見ると、見知っている人物と髪型までよく似ている上に、服装
まで同じなのだ。-

 その女性は明らかに私の妻だった。

 あんなにやさしげに笑みを湛えた表情の彼女を見るのは何年振りだろう。
 もう自分は長い間、あのような表情を向けられたことがない。

 明らかに横にいる男は妻よりも若い。
 昨日今日知り合ったという関係ではなさそうだ。

 ふたりを見ていたのはほんの一瞬間のことだった。

 長い時間観察していたわけでもないのに、彼らは親密な関係なのかも
しれないと思った。-

 すぐさまそう思ったのは自分が脛に傷持つ身だからだ。
 人間とは不思議なものだ。

 不倫を経験する前の自分ならすぐさまこのような考えには
直結しなかったろうと思う。

 身勝手だとは思うが、妻が私の知らない別の顔を持っていることを
受け入れられない自分がいた。




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