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第2章
雪解け
しおりを挟むさぁ、今こそ声を挙げよ!
望みはどうした?
祈りは届いたか?
声なき声など、聞こえぬものよ。
声を上げねば、望みは叶わぬ。
声に出しても、祈りは届かぬ。
ならば、願いは何処へ行く?
ならば、想いは何処へ行く?
届かぬ願いと、叶わぬ想いは何処へ行く?
悲劇も喜劇も、所詮は他人事。
消えた声など、皆無も同様。
消された祈りは、呪いと同様。
それでも消えぬ、望みを叶えてしんぜよう。
声に出して、大きく祈れ。
聞き届けるのは、魔法使い。
魔女の呪いは、誓いと同様。
決して違えぬ魔法をくれる、
祈りの対価と引き換えに。
※※
「あらあら、可愛い妖精ちゃん。貴女が此れほどか弱いモノと知らず、潰してしまうところでしたわ!ごめんなさい、でも許さなくとも結構よ? 何故なら許して貰えるまで、貴女の元へと私は通うと此処へ誓うから!」
姫の言葉で解放された私へ、女王は悪びれなく言葉を紡ぐ。
「今その言葉で全てを許したので、結構です。」
「あら、それは残念ね。 ところで、このお姫様はあの子に関係のあるキャストなのかしら?」
私の言葉に特に気を害した様子もなかったものの、興味は別にあるとばかりに女王は姫へと向き直り、温度のない笑みを浮かべ言い放った。
この方は姫がキャストとしての名無しかどうか、すら知らず、願いを受けたのか?
果たして、その問いに対して何と答えるのが最善なのか・・・。
そんなこちらの思いとは裏腹に、姫は毅然と言葉を放った。
「申し訳ございません、女王陛下。私は、泉の魔女の末の妹 、訳あって今は名乗れる名はありません。」
流石は失うものの無い名無しのお姫様、これ以上ない程シンプルな自己紹介であった。
女王は姫の言葉に何処か嬉しそうに笑みを浮かべ、瞬間空間が冷えた空気に満たされた。
「あら、貴女がそうなのね。 名の無いお姫様なんて、新しい物語みたいで素敵ね! そういえば似たような子が昔いたような気がするわ、名を奪われた貴族の娘・・・あの子元気かしら?」
姫の問いに余計なモノを混ぜ、女王は語る。
魔法使いの女王は気まぐれで己の為に、思うがままに魔法を行使でき、魔女では無いからこそ、どの物語の先なども見通せる。
しかし、ここにいるのは魔女。
この魔女の物語の行く末に、女王は極力干渉をしない約束をしたはずだった。
『氷の女王よ、それは此度の物語には関わりのない者です。どうか、触らぬ様にお願い致したい。』
言葉は重い、想いを乗せれば重さも増す。
彼女にはこの程度の重さなど布切れ一枚にも満たないことは分かっているが、それでも示さねばならない私たちの重さだった。
「うふふ、相変わらず可愛いわね~。険しい顔どせずとも理解したわ、愚かな可愛い私の魔女の子の友の約束ですもの護ってあげましょう。」
女王の言葉が終わると同時に、底冷えする様に寒かった空気が澄んだ様に感じた。
やはりどれだけ優しく見えても、彼女の役割女王なのだ。
彼女の降り立つ空間はその時から、王の間となる。
誰も声の発せない間がおりる。
「それで、女王様とやらへのお願いは既に終わった様ですが、これ以上私の領域に留まる理由はおありですの?」
そんな中、銀の魔女は成り行きを見つつ用事は終わったとばかりに声をかけた。
一瞬、それに僅かに動揺をしてしまった。
けれど確かにその成り立ちを思えば、王の間など銀の魔女には関係無かった。
だからこそ、間を破れるのは彼女にしか出来ないことだったのか。
そんな銀の魔女の言葉に女王は今気づいたとばかりに手を合わせ、ハッとした様に言葉に出した。
「あらあら、ごめんなさい。そうね、私があまりここに留まれば物語に干渉してしまうことになってしまうわね~。可愛い子の顔も見れたもの、約束は果たすと誓いましょう。また、いつかどこかのお話でお会い出来ると良いわね~。」
慌ただしくも音はせず、手を振りつつも心ここに在らず、実在せずとばかりに霧の様に彼女は跡形もなく消えて言った。
「貴女の友人とやらは、中々大物ですわね。あと少しでも私の領域を好き勝手しようものなら、例え筋書きなど無くとも膝をつかせてやるところでしたわ。」
最後の最後に女王は銀の魔女の結界をワザと綻ばせて立ち去っていった。
あの方実は最終幕の黒幕では無いと良いんですけどね。
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