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新たなる仲間たち
29.悪魔の招待状
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「もしかして、レンちゃんもトイレ行かない派? 」
「あたし? そうね、便利なスキルだよね! 」
「ズルいズルいズルい~! 」
「まぁ、その話は置いといて! 2人とも初の魔族戦はどうだった? 」
「私は、最初かなり苦戦したので、初めて鬼化スキルを使いました。自我を保つのが難しいけど、魔族は1撃で倒せましたね」
「もぅ、メルちゃん強すぎ! でも、助けてくれてありがと! 私は、全然通用しなかったもん。精霊さんもみんな消されちゃったし――」
「えっ!? みんな死んじゃったの? 」
「まさか! 精霊界に戻されただけ。精霊さんは基本的に不老不死だから! 」
そう言いながら、アユナちゃんはシルフを呼び出して一緒にくねくねダンスを踊り始めた。
崖からバンジーしてもらったトレントさんたち、もしかしたら死んでないのかな? それなら良いけど、魔結晶やドロップアイテムがあったんだよね――。
「精霊召喚も中級になったし、女神様の加護もいただいたし、レベルだって上がってたのに――」
「じゃあ、レベル上がってどれくらい成長したのか確かめなきゃね! 」
ボクは小5なエルフを押し倒してボディチェック中だ。アユナちゃんはくすぐられてキャッキャ叫びながら座席から転げ落ちる。このエルフっ娘、5年後には世界一の美少女になるんじゃない?
「だめですよ、リンネちゃん! アユナちゃんが泣いちゃ――ひゃんっ!? 」
「メルちゃんもあたしと同級生とは思えないくらいの発達振りよね! 神様ぁ~差別はいけないよ? 片方ちょうだ~い!」
チロル行きの馬車の中は黄色い笑い声で賑やかだ。いつもこんなに楽しい旅なら良いのになぁ。
「あのぅ……僕たち……男性陣も居るんですが……」
馭者のティミーさんが赤面状態になっていた。この状況、声を聞くだけでも興奮するでしょ。
「ティミーよぉ、小さな女の子を見て赤くなってたって、アリスちゃんに言っちゃうぜ? 」
「アリスさんに? どういうことですか? 」
「あぁ、リンネは寝てたから知らんのか。ティミーはエンジェルウィングのアリス団長と婚約したんだぜ? 」
「え~~っ!? 」
この世界に来て既に15日目――たくさんの出会いがあった。出会いは偶然が何乗にも掛け合わさって生まれる奇跡だと思う。もしも運命の糸が目に見えたなら、奇跡を奇跡だと感じられず、出会いも味気ないものになってしまうのかなぁ。だからこそ、こういう嬉しい驚きは、とても新鮮で、貴重で――心から大切にしたいよね!
「婚約? じゃあ、私はリンネちゃんと結婚する! 」
「リンネちゃんは私の婚約者だからだめです! 」
「あははっ! リンネちゃんモテモテだね! じゃあ、あたしも参戦しちゃうぞぉ~! 」
みんなに抱き付かれた! ヤバい、柔らかい! なけなしの男心という名の理性が崩壊しそう! このパーティなら美少女コンテストで表彰台独占できるよ、きっと!
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
[レンがパーティに加わった]
★☆★
朝5時にヴェルデを発ったボクたちは、夕方にはニンフと出会った町を臨む丘を通り過ぎた。早ければ明日の昼頃には目的地チロルへ到着する予定だ。
頂き物のサーベルを装備したレンちゃんがことのほか強く、メル&レンの青赤コンビが次々に魔物を倒していった。ここまでで既に上級2、中級18、下級80匹以上を討伐している。
気付いたら全員がレベルアップしていた。特にレンちゃんはもうレベル5だ。ステータスポイントは攻撃・体力・防御・敏捷に各1ずつ割り振ったらしい。魔力はスルーかい――。
◆名前:レン
年齢:14歳 性別:女性 レベル:5 職業:剣士
◆ステータス
攻撃:3.60(+2.50 +2.50)
魔力:0.30
体力:2.90
防御:2.25(+1.80)
敏捷:3.70
器用:1.45
才能:2.00(ステータスポイント0)
★☆★
影が徐々に長くなり、世界が夕闇に染まりつつある頃、ボクたちは反対方向から来る馬車に遭遇した。
「前方に馬車が見えますね」
「おぅ、珍しいな。行商か? 」
「冒険者かもしれませんよ? 」
馭者席からの声を聞いていたボクは、さりげなく訊いてみた。
「どうせ夜営するなら誘ってみます? その方がお互いに安全じゃないですか? 」
「正直何とも言えんな、相手次第だろ。こっちは強いとはいえ、女の子が居るし。無用なトラブルになりかねん」
渋い表情で慎重論を唱えるラーンスロットさん。
「こちらではなく、あちらが安全に夜営出来ることの方が重要だと思います」
相手方を慮るメルちゃん、優しい。
結局、北へ向かう相手の馬車が心配ということで、挨拶がてら共同での夜営を提案することになった。
「いやぁ、本当に助かりました。この先、強い魔物がたくさん出るみたいで、どうやって夜を過ごそうかと悩んでいたんですよ。しかもこんなに可愛いお嬢さん方と一緒だなんて、私にも運が巡ってきたかな」
鷲鼻の行商人の男は、二つ返事で提案を受け入れた。馬車には馭者を含めて男性が4人乗っている。行商人と護衛3人らしい。無口な護衛たちは何も言わずにじっと見つめてくる。いつの間にかシルフは隠れてしまっていた。恥ずかしがりやさんだね。
「いえ、最近は魔人も暗躍しているようなので、安全確保は大切だと思いますよ」
「魔人ですか。貴女方は魔人を見たのですか? 」
「はい、この先のヴェルデという町で。既に討伐済みですが――まだまだ安心できないので気を付けてください」
「なるほど、それは大変困りました。情報ありがとうございます。ところで、お嬢さん方は、どこかのお姫様ですか? とても見目麗しいので」
「ボクたちは――」
「私たちはただの冒険者です。明日はなるべく早く発つので、もう寝ましょう。失礼します」
途中、メルちゃんが会話に乱入してきて、いきなり話を切り上げてしまった。
「メルちゃん! チロル方面の情報をこれから聞こうと思ってたのに! 」
「勇者です、なんて言い出しそうだったので――それに、あの護衛の人たちはかなり強いです。関わらない方が良さそうです」
普段は優しいメルちゃんだけど、今回はあまりにもそっけない塩対応だ。
「あたしもメルちゃんに賛成! あの紫髪の剣士、只者じゃないと思う。ちょっと距離置いて夜営しよ? 」
「じゃあ、私が安心安全なアユナ結界を張っておくからね! 」
確かに、僅か3人の護衛で北へ向かうということは、かなりの手練れかもしれない。ラーンスロットさんたちにも、気を付けるよう何度も注意された。だから、鑑定はやめておきましたよ。
★☆★
夜はアユナちゃん結界もあり、とても快適に過ごせた。
行商の人たちは結界の外だったけど、魔物に襲われずに済んだらしく、とても感謝していた。
「おはようございます、皆様。昨日言いそびれてしまったのですが、この先2kmほど進んだ山中に新しい迷宮が現れたそうですよ。冒険者の方々と伺ったので――余計な情報でしたらすみません」
特ダネらしく、鷲鼻さんがボクに近づき耳打ちしてきた。
「迷宮が!? 」
「噂ですが、その迷宮には誰にも入れない結界が有るとか無いとか。貴女方にはあまり関係がない場所かもしれませんね。では良い旅を! 」
「情報ありがとうございます! 良い旅を!! 」
「ほら~! ちゃんとお話したら役に立つ情報が手に入るんだから! 行商人は歩くウィキなんだよ? 」
行商人を乗せた馬車が去った後、ボクはみんなに文句を言う。もっと仲良くしていれば、もっと情報が手に入ったかもしれないからね。でも、メルちゃんは反省の色もなく、旅支度を始めている。
「ウィキが何だか知らねぇが、例の召喚石があるかも知れねぇってことか? じゃあ、俺らは近くで留守番しとくからな」
「北の大迷宮前の練習には良いよね! 迷宮探索の大先輩リンネ様が案内してあげる! ボクのローブや魔法は迷宮の宝箱産なんだよ、期待していこう!! 」
「「はい、センパイよろしくお願いします! 」」
メルちゃんは嫌々、レンちゃんとアユナちゃんは元気と気合いに満ちた掛け声を上げる。
★☆★
目の前には、小さいながらも、ぽっかりと口を広げた洞窟がある。できたてホヤホヤな迷宮だからか、どちらかと言うと豪華な洞窟みたいな感じだ。
ボクは、ランゲイル隊長から習った迷宮攻略のイロハを後輩たちに伝授しながら足を踏み入れた。
「シンプル過ぎて――」
「センパイ、何の気配も感じません――」
「欠伸が止まらなーい」
50mほど続く一直線の通路、行き止まりにある鉄製の大きな扉――途中、1つだけ部屋があったけど、魔物も宝箱もなし。時間が惜しいのでそれはそれでありがたい反面、肩透かし感が半端ない。みんなの不平不満が出るのも仕方がない。
ボクたちは扉を開けて先に進むことにした。
「ん? んんっ!? 扉が固くて開かないよ! 」
精一杯引っ張るが、両開きの扉は無反応。筋力不足?
「センパイ――今は遊んでる場合ではないかと」
メルちゃんが軽くボクにツッコミながら、両開きの扉を軽く押す。すると、扉がすんなり開いた。
「センパイ!! きゃははっ!! 」
アユナちゃんが、おへそでお茶を沸かす勢いで笑い転げる。
「アユナちゃん、笑わないであげて! センパイはみんなの緊張を解くために――ププッ! 」
真顔でアユナちゃんを窘めていたレンちゃんも、笑いを堪えきれずに噴き出す。こうなると、もう“センパイ”というのも嫌味にしか聞こえない――。
「ぷぅ~! だってボクの世界――というか国では扉が外開きだから、引くのが普通なんだもん! 」
鉄扉の中には5m四方ほどの狭い部屋があった。
橙色の白熱電球が照らし出すような薄暗い部屋を、目を凝らして眺める――目の前には祭壇らしきもの、足下には魔法陣がぼんやりと輝いている。
「召喚魔法陣? 」
「ここはどんな目的で――」
ボクたちが一歩足を踏み入れたその瞬間、魔法陣が光を放つ! 一瞬にして部屋中を赤い光が包み込む!
足下の床が崩れ堕ちる!!
「「「「キャー!!! 」」」」
フワっとした感覚――上昇? 違う、凄い速度で下に落ちてる!
「シルフ! 助けて!! 」
アユナちゃんが咄嗟にシルフを召喚する。
優しい風の渦が4人を包み込む。
そして、ボクたちは闇の中へとゆっくりと落ちていった――。
★☆★
ボクは固い地面に立っていた――。
「みんな、大丈夫!? 」
我に返ったボクが、暗闇の中でみんなの安否を確認する。
「少し……出ちゃったかも……うぅぅ……」
「あたしは大丈夫、ん? 何か音が聞こえるよ? 」
「センパイ、魔物の気配! 100m先、数は5! 」
瞬時に現状を悟る――。
「罠だったのか! ごめん、ボクのせいだ!! 」
「4人全員居るから大丈夫ですよ! 」
メルちゃんの手がボクの右手をしっかり掴んでくれる。ボクの左手は小さな手を握っている。多分、アユナちゃんの手だと思う。
「精霊さん、力を貸して! 」
ウィルオーウィスプの放つ光で、空間が照らし出される。
淡い光に映し出されたのは、高さが100m以上はありそうな、半径300mくらいの円柱状の空間だった――その中央付近で、ボクたち4人は手を握り合っている。
「あっち見て!! 」
レンちゃんが指し示す方向に全員の視線が集まる。
奥まった場所に見える台座、その中央には、3mはあろうかという人型の魔物が、左右に2匹ずつ大トカゲを従えて立っている。
「「魔人!? 」」
[鑑定眼!]
「…………」
「5体全て鑑定で見れない! 魔力28以上あるってことだよ、どうする!? 」
「リンネちゃん、落ち着いて! 雷魔法で先制お願いします。相手の視力が回復するまでに、4匹の大トカゲを全滅させます」
「私もリンネちゃんに合わせて光魔法撃つよ! 」
「あたしは隠術で隙をつく! 」
「魔人はかなりヤバい気がする、みんな気を付けて! 」
魔人と魔物はこちらを向いたまま微動だにしない。もしかして、見えてない?
ボクたちは散開して徐々に近づいていく。確実に魔法を当てるため、10m以内までは――。
彼我の距離が30mを切ろうかというタイミングで、魔人が話し掛けてきた。
『昨晩は一緒に夜営をしてくれてありがとうございます』
「まさか、あの馬車の人!? 」
『ぎゃはは! まさか騙されてノコノコ来るとは思わなかったぜ。そこまで馬鹿だと、普段は考えることが少なくて楽だろうな! 』
「リンネちゃん、安い挑発です。相手にしちゃだめです」
「…………」
『黙りか? お前らみたいな馬鹿なガキ共にヴェローナがやられたなんてな! ざまぁねぇな! 』
「あのサキュバスの敵討ちですか? 」
『馬鹿言え! あの女を殺った奴等をぶっ殺したら、俺が序列第8位になれるからよぉ! 』
「あなたは今、何位ですか? 」
『俺は、魔人序列第10位のギャラント様だ! 』
「10位? あなたが1番下の、最弱魔人さんでしたか」
『なんだと!? 喰らうぞ、ガキが! 』
メルちゃんが逆に相手を挑発してる。この蜥蜴魔人、もしかして頭が弱い系? お陰でボクたちは攻撃準備が整ったよ、ありがとうメルちゃん!
身体に流れる熱い魔力。たっぷり集める。まだまだ足りない。大気中からも集めるイメージ。身体が火照る。魔力が満ち溢れる。全身で、全力で練り上げる。胸の中でぐるぐる回し続けると、これでもか!ってくらいに濃密になっていく。
右手の掌へとゆっくり動かすと、それを杖が全て吸い上げてくれる。距離は10m、容赦なく1撃で終わらせるつもりで、5匹の真ん中に半径5mの雷を落とすイメージを脳裏に刻み込む!
「爆雷魔法、サンダーバースト!!! 」
巨大な雷が落ちる! ボクの9割の魔力を注ぎ込んだ巨大魔法だ。広大な空間が真っ白に染まる! 耳をつんざく轟音、それに引き続いて奏でられる地響き!!
アユナちゃんも精一杯の光魔法を合わせる! もう、明る過ぎて敵も味方も見えない!
5秒経っても、視界はまだ真っ白だ。
でも、凄まじい打撃の音が聞こえる。メルちゃんだ! 4回、いや5回の鈍い音が空気を揺らす!
10秒経った。
光が闇に吸い込まれ、視界が戻ってきた。
ボクは既に、サンダーストーム3連撃分の魔力を練り終えている――。
前方、立っている1人が見える――メルちゃん?
違う、もっとでかい!
じゃあ、メルちゃんは!?
あっ、魔人の足元に倒れてる!!
ボクは、地面に倒れているメルちゃんに駆け寄る!
魔人が勝ち誇ったかのような顔で斧を振り上げる!
間に合わない! メルちゃんが危ない!
『グァ!? 』
その時、振り上げられた魔人の右腕が空中を舞う! 切断したのはレンちゃんの双剣だ、ナイスだよレンちゃん!!
「ヒール! ヒール! ヒール!! 」
メルちゃんを抱きかかえて離脱し、溜め込んだ3発分の魔力を全てメルちゃんの回復に回す!
意識が飛ぶ……でも……まだ倒れたくない!
メルちゃんが立ち上がる。笑顔でこっちを見る。大丈夫だ、何とか間に合った!!
レンちゃんが背後から連撃を浴びせている!
アユナちゃんも光魔法で援護射撃をする!
復活したメルちゃんの、強烈な1撃が頭部を殴り付ける!
『ギャオ~!! 』
大口を開いて咆哮をあげる魔人!
「サンダーボルト! 」
至近から、その口の中に雷撃を叩き込む!!
直立したまま、魔人は息絶えていた――。
そして数分後、膨大な魔素が爆散し、薄明りの中に紫の欠片が舞い散る。
地面には、巨大な魔結晶とともに1mほどの角が落ちていた――。
[リザードキングの巨角:非常に高い魔力収縮が可能なうえ、硬度は黒鉄鋼を凌ぐ一級品の武器の素材となる]
★☆★
ボクたちは樹木の精霊ドライアードが作ってくれた木の梯子を登り、何とか地上に戻ることができた。
『リンネ様――こんな魔人の気配が充満した場所に安易に踏み込むなんて、軽率に過ぎます! 』
洞窟の入口で、半裸のドライアードさんに説教をされるボク――。
「ごめんなさい……調子に乗りました」
『まったく! この先も思いやられます。私の眷族、森の精霊クピィをお連れなさい。魔族の気配を感じることができるので、少しは役に立つでしょう? では、失礼します』
そう言い残してドライアードは消えてしまった。
代わりに現れたのは、白くてフワフワな生き物――雪ウサギみたいな小動物だ。毛皮のファーのような手触りで、ピンクのつぶらな目が2つ。毛が長いためか手足は見えない。
『クピ? 』
「「「カワイイ!! 」」」
その後、壮絶なクピィ争奪戦が繰り広げられたのは言うまでもない。
その結果、クピィは今、ボクの頭の上に乗っかっている。そう、ボクは勝者だ!
「で、迷宮で手に入れたのは、そのちんまい毛虫だけってか」
『クピィ! クピピッ! 』
「あたしが通訳する! “アタシはケムシじゃないもん、クピィだもん!”だって」
「ちげぇよ。“俺はケムシの王様だ!”だろ! 」
『クピッピ! クピピピッ! 』
「あ、クピィが怒った」
「クピィちゃん、お怒りです」
「はいはい、すみませんね! じゃあ、改めて出発するぜ? チロル到着は誰かさんのせいで真夜中だ! 」
「プゥ~! 」
「あ~! リンネちゃんが膨らんだ!! 」
★☆★
途中、中級魔物の群れに遭遇するなどのピンチはあったけど、馬たちが頑張ってくれたお陰で、夕刻には城塞都市チロルの門を潜ることができた。メリンダさんの提案でチロルを出てから僅か5日で戻って来たことになる。
冒険者ギルドでは、諸々の買取り総額が48500リル(4850万円)にもなり、メルちゃん先生主導のもと、以下の装備4点と10日分の食料、レンちゃんの服類を購入した。残金は8000リル(800万円)。またまた貧乏逆戻り――。
(リンネ用)
[フェアリーワンド:魔力+3.50 特殊:魔法効果+10%]
(8500リル) 物理攻撃なしの完全魔法職用の杖。
(アユナ用)
[フェアリーワンド:魔力+3.50 特殊:魔法効果+10%]
(8500リル) ボクのをマネしんぼ。
(レン用)
[ミスリルサーベル:攻撃+3.00 敏捷+2.50]
(8000リル×2) 二刀流スキルの効果重複に期待だよ!
[ミスリルアーマー:防衛+4.50 魔法防衛+2.50]
(12000リル) 軽くて丈夫、皆と同じピュアホワイト。
★☆★
「早かったわね! その子が赤の召喚者ね! 白くてふわふわで可愛いじゃない! 」
えっと……クピィを抱き締めるメリンダさんに、誰もツッコめない。
「綺麗な髪と目だわ――強く可憐な花のよう」
クピィを大きな谷間に埋めながら、メリンダさんは食い入るようにレンちゃんを見ている。恥ずかしがってもじもじしているレンちゃん、何か新鮮な感じだね。
「それに、魔人2体の討伐と魔界の門の破壊、街道沿いの1000を超える魔物の駆除、素晴らしい成果だわ!! 故に、4人全員のギルドランクをAに引き上げます! 」
「メリンダさん、そんなテキトーで良いんですか? 」
呆れ顔でツッコむボクに、彼女が即答する。
「どうせコツコツ依頼を受けたり、昇格試験を受けたりしないでしょ? いいのいいの! 」
ボクたちは苦笑いするしかなかった。
「迷宮の件だけど、ギルドの総力を結集して全30階層分のマップを作ったわ。正規のリートを辿れば、最下層最奥の結界まで7日間で行けるはず! 」
★☆★
今日もギルド来客用のお部屋にお泊まり。
メルちゃんの手作り料理を食べて、仲良くお風呂へ。最近は入浴中にステ振りの相談をするのが当たり前の流れになっている。
レベルは、ボクが19、メルちゃん12、アユナちゃん10、レンちゃん8になり、それぞれのステータスは以下の通りになった。明日からの迷宮探索、頑張ろう!!
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:19 職業:勇者
◆ステータス
攻撃:8.75(+4.50)
魔力:30.60(+3.50、効果+10%)
体力:6.50
防御:8.60(+4.80)
敏捷:6.55
器用:2.35
才能:3.00(ステータスポイント0)
◆名前:メル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:12 職業:メイド
◆ステータス
攻撃:21.70(+5.20、風弾/中級)
魔力:10.60
体力:7.55
防御:8.55(+2.80)
敏捷:8.45(+2.00)
器用:6.90
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆名前:アユナ
年齢:11歳 性別:女性 レベル:10 職業:精霊魔法使い
◆ステータス
攻撃:3.20
魔力:26.00(+3.50、効果+10%)
体力:4.15
防御:4.55(+3.20、魔法防御+3.00)
敏捷:4.35
器用:2.10
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆名前:レン
年齢:14歳 性別:女性 レベル:8 職業:剣士
◆ステータス
攻撃:5.80(+3.00 +3.00)
魔力:0.30
体力:4.20
防御:3.65(+4.50、魔法防衛+2.50)
敏捷:4.80(+2.50 +2.50)
器用:1.45
才能:2.00(ステータスポイント0)
「あたし? そうね、便利なスキルだよね! 」
「ズルいズルいズルい~! 」
「まぁ、その話は置いといて! 2人とも初の魔族戦はどうだった? 」
「私は、最初かなり苦戦したので、初めて鬼化スキルを使いました。自我を保つのが難しいけど、魔族は1撃で倒せましたね」
「もぅ、メルちゃん強すぎ! でも、助けてくれてありがと! 私は、全然通用しなかったもん。精霊さんもみんな消されちゃったし――」
「えっ!? みんな死んじゃったの? 」
「まさか! 精霊界に戻されただけ。精霊さんは基本的に不老不死だから! 」
そう言いながら、アユナちゃんはシルフを呼び出して一緒にくねくねダンスを踊り始めた。
崖からバンジーしてもらったトレントさんたち、もしかしたら死んでないのかな? それなら良いけど、魔結晶やドロップアイテムがあったんだよね――。
「精霊召喚も中級になったし、女神様の加護もいただいたし、レベルだって上がってたのに――」
「じゃあ、レベル上がってどれくらい成長したのか確かめなきゃね! 」
ボクは小5なエルフを押し倒してボディチェック中だ。アユナちゃんはくすぐられてキャッキャ叫びながら座席から転げ落ちる。このエルフっ娘、5年後には世界一の美少女になるんじゃない?
「だめですよ、リンネちゃん! アユナちゃんが泣いちゃ――ひゃんっ!? 」
「メルちゃんもあたしと同級生とは思えないくらいの発達振りよね! 神様ぁ~差別はいけないよ? 片方ちょうだ~い!」
チロル行きの馬車の中は黄色い笑い声で賑やかだ。いつもこんなに楽しい旅なら良いのになぁ。
「あのぅ……僕たち……男性陣も居るんですが……」
馭者のティミーさんが赤面状態になっていた。この状況、声を聞くだけでも興奮するでしょ。
「ティミーよぉ、小さな女の子を見て赤くなってたって、アリスちゃんに言っちゃうぜ? 」
「アリスさんに? どういうことですか? 」
「あぁ、リンネは寝てたから知らんのか。ティミーはエンジェルウィングのアリス団長と婚約したんだぜ? 」
「え~~っ!? 」
この世界に来て既に15日目――たくさんの出会いがあった。出会いは偶然が何乗にも掛け合わさって生まれる奇跡だと思う。もしも運命の糸が目に見えたなら、奇跡を奇跡だと感じられず、出会いも味気ないものになってしまうのかなぁ。だからこそ、こういう嬉しい驚きは、とても新鮮で、貴重で――心から大切にしたいよね!
「婚約? じゃあ、私はリンネちゃんと結婚する! 」
「リンネちゃんは私の婚約者だからだめです! 」
「あははっ! リンネちゃんモテモテだね! じゃあ、あたしも参戦しちゃうぞぉ~! 」
みんなに抱き付かれた! ヤバい、柔らかい! なけなしの男心という名の理性が崩壊しそう! このパーティなら美少女コンテストで表彰台独占できるよ、きっと!
[メルがパーティに加わった]
[アユナがパーティに加わった]
[レンがパーティに加わった]
★☆★
朝5時にヴェルデを発ったボクたちは、夕方にはニンフと出会った町を臨む丘を通り過ぎた。早ければ明日の昼頃には目的地チロルへ到着する予定だ。
頂き物のサーベルを装備したレンちゃんがことのほか強く、メル&レンの青赤コンビが次々に魔物を倒していった。ここまでで既に上級2、中級18、下級80匹以上を討伐している。
気付いたら全員がレベルアップしていた。特にレンちゃんはもうレベル5だ。ステータスポイントは攻撃・体力・防御・敏捷に各1ずつ割り振ったらしい。魔力はスルーかい――。
◆名前:レン
年齢:14歳 性別:女性 レベル:5 職業:剣士
◆ステータス
攻撃:3.60(+2.50 +2.50)
魔力:0.30
体力:2.90
防御:2.25(+1.80)
敏捷:3.70
器用:1.45
才能:2.00(ステータスポイント0)
★☆★
影が徐々に長くなり、世界が夕闇に染まりつつある頃、ボクたちは反対方向から来る馬車に遭遇した。
「前方に馬車が見えますね」
「おぅ、珍しいな。行商か? 」
「冒険者かもしれませんよ? 」
馭者席からの声を聞いていたボクは、さりげなく訊いてみた。
「どうせ夜営するなら誘ってみます? その方がお互いに安全じゃないですか? 」
「正直何とも言えんな、相手次第だろ。こっちは強いとはいえ、女の子が居るし。無用なトラブルになりかねん」
渋い表情で慎重論を唱えるラーンスロットさん。
「こちらではなく、あちらが安全に夜営出来ることの方が重要だと思います」
相手方を慮るメルちゃん、優しい。
結局、北へ向かう相手の馬車が心配ということで、挨拶がてら共同での夜営を提案することになった。
「いやぁ、本当に助かりました。この先、強い魔物がたくさん出るみたいで、どうやって夜を過ごそうかと悩んでいたんですよ。しかもこんなに可愛いお嬢さん方と一緒だなんて、私にも運が巡ってきたかな」
鷲鼻の行商人の男は、二つ返事で提案を受け入れた。馬車には馭者を含めて男性が4人乗っている。行商人と護衛3人らしい。無口な護衛たちは何も言わずにじっと見つめてくる。いつの間にかシルフは隠れてしまっていた。恥ずかしがりやさんだね。
「いえ、最近は魔人も暗躍しているようなので、安全確保は大切だと思いますよ」
「魔人ですか。貴女方は魔人を見たのですか? 」
「はい、この先のヴェルデという町で。既に討伐済みですが――まだまだ安心できないので気を付けてください」
「なるほど、それは大変困りました。情報ありがとうございます。ところで、お嬢さん方は、どこかのお姫様ですか? とても見目麗しいので」
「ボクたちは――」
「私たちはただの冒険者です。明日はなるべく早く発つので、もう寝ましょう。失礼します」
途中、メルちゃんが会話に乱入してきて、いきなり話を切り上げてしまった。
「メルちゃん! チロル方面の情報をこれから聞こうと思ってたのに! 」
「勇者です、なんて言い出しそうだったので――それに、あの護衛の人たちはかなり強いです。関わらない方が良さそうです」
普段は優しいメルちゃんだけど、今回はあまりにもそっけない塩対応だ。
「あたしもメルちゃんに賛成! あの紫髪の剣士、只者じゃないと思う。ちょっと距離置いて夜営しよ? 」
「じゃあ、私が安心安全なアユナ結界を張っておくからね! 」
確かに、僅か3人の護衛で北へ向かうということは、かなりの手練れかもしれない。ラーンスロットさんたちにも、気を付けるよう何度も注意された。だから、鑑定はやめておきましたよ。
★☆★
夜はアユナちゃん結界もあり、とても快適に過ごせた。
行商の人たちは結界の外だったけど、魔物に襲われずに済んだらしく、とても感謝していた。
「おはようございます、皆様。昨日言いそびれてしまったのですが、この先2kmほど進んだ山中に新しい迷宮が現れたそうですよ。冒険者の方々と伺ったので――余計な情報でしたらすみません」
特ダネらしく、鷲鼻さんがボクに近づき耳打ちしてきた。
「迷宮が!? 」
「噂ですが、その迷宮には誰にも入れない結界が有るとか無いとか。貴女方にはあまり関係がない場所かもしれませんね。では良い旅を! 」
「情報ありがとうございます! 良い旅を!! 」
「ほら~! ちゃんとお話したら役に立つ情報が手に入るんだから! 行商人は歩くウィキなんだよ? 」
行商人を乗せた馬車が去った後、ボクはみんなに文句を言う。もっと仲良くしていれば、もっと情報が手に入ったかもしれないからね。でも、メルちゃんは反省の色もなく、旅支度を始めている。
「ウィキが何だか知らねぇが、例の召喚石があるかも知れねぇってことか? じゃあ、俺らは近くで留守番しとくからな」
「北の大迷宮前の練習には良いよね! 迷宮探索の大先輩リンネ様が案内してあげる! ボクのローブや魔法は迷宮の宝箱産なんだよ、期待していこう!! 」
「「はい、センパイよろしくお願いします! 」」
メルちゃんは嫌々、レンちゃんとアユナちゃんは元気と気合いに満ちた掛け声を上げる。
★☆★
目の前には、小さいながらも、ぽっかりと口を広げた洞窟がある。できたてホヤホヤな迷宮だからか、どちらかと言うと豪華な洞窟みたいな感じだ。
ボクは、ランゲイル隊長から習った迷宮攻略のイロハを後輩たちに伝授しながら足を踏み入れた。
「シンプル過ぎて――」
「センパイ、何の気配も感じません――」
「欠伸が止まらなーい」
50mほど続く一直線の通路、行き止まりにある鉄製の大きな扉――途中、1つだけ部屋があったけど、魔物も宝箱もなし。時間が惜しいのでそれはそれでありがたい反面、肩透かし感が半端ない。みんなの不平不満が出るのも仕方がない。
ボクたちは扉を開けて先に進むことにした。
「ん? んんっ!? 扉が固くて開かないよ! 」
精一杯引っ張るが、両開きの扉は無反応。筋力不足?
「センパイ――今は遊んでる場合ではないかと」
メルちゃんが軽くボクにツッコミながら、両開きの扉を軽く押す。すると、扉がすんなり開いた。
「センパイ!! きゃははっ!! 」
アユナちゃんが、おへそでお茶を沸かす勢いで笑い転げる。
「アユナちゃん、笑わないであげて! センパイはみんなの緊張を解くために――ププッ! 」
真顔でアユナちゃんを窘めていたレンちゃんも、笑いを堪えきれずに噴き出す。こうなると、もう“センパイ”というのも嫌味にしか聞こえない――。
「ぷぅ~! だってボクの世界――というか国では扉が外開きだから、引くのが普通なんだもん! 」
鉄扉の中には5m四方ほどの狭い部屋があった。
橙色の白熱電球が照らし出すような薄暗い部屋を、目を凝らして眺める――目の前には祭壇らしきもの、足下には魔法陣がぼんやりと輝いている。
「召喚魔法陣? 」
「ここはどんな目的で――」
ボクたちが一歩足を踏み入れたその瞬間、魔法陣が光を放つ! 一瞬にして部屋中を赤い光が包み込む!
足下の床が崩れ堕ちる!!
「「「「キャー!!! 」」」」
フワっとした感覚――上昇? 違う、凄い速度で下に落ちてる!
「シルフ! 助けて!! 」
アユナちゃんが咄嗟にシルフを召喚する。
優しい風の渦が4人を包み込む。
そして、ボクたちは闇の中へとゆっくりと落ちていった――。
★☆★
ボクは固い地面に立っていた――。
「みんな、大丈夫!? 」
我に返ったボクが、暗闇の中でみんなの安否を確認する。
「少し……出ちゃったかも……うぅぅ……」
「あたしは大丈夫、ん? 何か音が聞こえるよ? 」
「センパイ、魔物の気配! 100m先、数は5! 」
瞬時に現状を悟る――。
「罠だったのか! ごめん、ボクのせいだ!! 」
「4人全員居るから大丈夫ですよ! 」
メルちゃんの手がボクの右手をしっかり掴んでくれる。ボクの左手は小さな手を握っている。多分、アユナちゃんの手だと思う。
「精霊さん、力を貸して! 」
ウィルオーウィスプの放つ光で、空間が照らし出される。
淡い光に映し出されたのは、高さが100m以上はありそうな、半径300mくらいの円柱状の空間だった――その中央付近で、ボクたち4人は手を握り合っている。
「あっち見て!! 」
レンちゃんが指し示す方向に全員の視線が集まる。
奥まった場所に見える台座、その中央には、3mはあろうかという人型の魔物が、左右に2匹ずつ大トカゲを従えて立っている。
「「魔人!? 」」
[鑑定眼!]
「…………」
「5体全て鑑定で見れない! 魔力28以上あるってことだよ、どうする!? 」
「リンネちゃん、落ち着いて! 雷魔法で先制お願いします。相手の視力が回復するまでに、4匹の大トカゲを全滅させます」
「私もリンネちゃんに合わせて光魔法撃つよ! 」
「あたしは隠術で隙をつく! 」
「魔人はかなりヤバい気がする、みんな気を付けて! 」
魔人と魔物はこちらを向いたまま微動だにしない。もしかして、見えてない?
ボクたちは散開して徐々に近づいていく。確実に魔法を当てるため、10m以内までは――。
彼我の距離が30mを切ろうかというタイミングで、魔人が話し掛けてきた。
『昨晩は一緒に夜営をしてくれてありがとうございます』
「まさか、あの馬車の人!? 」
『ぎゃはは! まさか騙されてノコノコ来るとは思わなかったぜ。そこまで馬鹿だと、普段は考えることが少なくて楽だろうな! 』
「リンネちゃん、安い挑発です。相手にしちゃだめです」
「…………」
『黙りか? お前らみたいな馬鹿なガキ共にヴェローナがやられたなんてな! ざまぁねぇな! 』
「あのサキュバスの敵討ちですか? 」
『馬鹿言え! あの女を殺った奴等をぶっ殺したら、俺が序列第8位になれるからよぉ! 』
「あなたは今、何位ですか? 」
『俺は、魔人序列第10位のギャラント様だ! 』
「10位? あなたが1番下の、最弱魔人さんでしたか」
『なんだと!? 喰らうぞ、ガキが! 』
メルちゃんが逆に相手を挑発してる。この蜥蜴魔人、もしかして頭が弱い系? お陰でボクたちは攻撃準備が整ったよ、ありがとうメルちゃん!
身体に流れる熱い魔力。たっぷり集める。まだまだ足りない。大気中からも集めるイメージ。身体が火照る。魔力が満ち溢れる。全身で、全力で練り上げる。胸の中でぐるぐる回し続けると、これでもか!ってくらいに濃密になっていく。
右手の掌へとゆっくり動かすと、それを杖が全て吸い上げてくれる。距離は10m、容赦なく1撃で終わらせるつもりで、5匹の真ん中に半径5mの雷を落とすイメージを脳裏に刻み込む!
「爆雷魔法、サンダーバースト!!! 」
巨大な雷が落ちる! ボクの9割の魔力を注ぎ込んだ巨大魔法だ。広大な空間が真っ白に染まる! 耳をつんざく轟音、それに引き続いて奏でられる地響き!!
アユナちゃんも精一杯の光魔法を合わせる! もう、明る過ぎて敵も味方も見えない!
5秒経っても、視界はまだ真っ白だ。
でも、凄まじい打撃の音が聞こえる。メルちゃんだ! 4回、いや5回の鈍い音が空気を揺らす!
10秒経った。
光が闇に吸い込まれ、視界が戻ってきた。
ボクは既に、サンダーストーム3連撃分の魔力を練り終えている――。
前方、立っている1人が見える――メルちゃん?
違う、もっとでかい!
じゃあ、メルちゃんは!?
あっ、魔人の足元に倒れてる!!
ボクは、地面に倒れているメルちゃんに駆け寄る!
魔人が勝ち誇ったかのような顔で斧を振り上げる!
間に合わない! メルちゃんが危ない!
『グァ!? 』
その時、振り上げられた魔人の右腕が空中を舞う! 切断したのはレンちゃんの双剣だ、ナイスだよレンちゃん!!
「ヒール! ヒール! ヒール!! 」
メルちゃんを抱きかかえて離脱し、溜め込んだ3発分の魔力を全てメルちゃんの回復に回す!
意識が飛ぶ……でも……まだ倒れたくない!
メルちゃんが立ち上がる。笑顔でこっちを見る。大丈夫だ、何とか間に合った!!
レンちゃんが背後から連撃を浴びせている!
アユナちゃんも光魔法で援護射撃をする!
復活したメルちゃんの、強烈な1撃が頭部を殴り付ける!
『ギャオ~!! 』
大口を開いて咆哮をあげる魔人!
「サンダーボルト! 」
至近から、その口の中に雷撃を叩き込む!!
直立したまま、魔人は息絶えていた――。
そして数分後、膨大な魔素が爆散し、薄明りの中に紫の欠片が舞い散る。
地面には、巨大な魔結晶とともに1mほどの角が落ちていた――。
[リザードキングの巨角:非常に高い魔力収縮が可能なうえ、硬度は黒鉄鋼を凌ぐ一級品の武器の素材となる]
★☆★
ボクたちは樹木の精霊ドライアードが作ってくれた木の梯子を登り、何とか地上に戻ることができた。
『リンネ様――こんな魔人の気配が充満した場所に安易に踏み込むなんて、軽率に過ぎます! 』
洞窟の入口で、半裸のドライアードさんに説教をされるボク――。
「ごめんなさい……調子に乗りました」
『まったく! この先も思いやられます。私の眷族、森の精霊クピィをお連れなさい。魔族の気配を感じることができるので、少しは役に立つでしょう? では、失礼します』
そう言い残してドライアードは消えてしまった。
代わりに現れたのは、白くてフワフワな生き物――雪ウサギみたいな小動物だ。毛皮のファーのような手触りで、ピンクのつぶらな目が2つ。毛が長いためか手足は見えない。
『クピ? 』
「「「カワイイ!! 」」」
その後、壮絶なクピィ争奪戦が繰り広げられたのは言うまでもない。
その結果、クピィは今、ボクの頭の上に乗っかっている。そう、ボクは勝者だ!
「で、迷宮で手に入れたのは、そのちんまい毛虫だけってか」
『クピィ! クピピッ! 』
「あたしが通訳する! “アタシはケムシじゃないもん、クピィだもん!”だって」
「ちげぇよ。“俺はケムシの王様だ!”だろ! 」
『クピッピ! クピピピッ! 』
「あ、クピィが怒った」
「クピィちゃん、お怒りです」
「はいはい、すみませんね! じゃあ、改めて出発するぜ? チロル到着は誰かさんのせいで真夜中だ! 」
「プゥ~! 」
「あ~! リンネちゃんが膨らんだ!! 」
★☆★
途中、中級魔物の群れに遭遇するなどのピンチはあったけど、馬たちが頑張ってくれたお陰で、夕刻には城塞都市チロルの門を潜ることができた。メリンダさんの提案でチロルを出てから僅か5日で戻って来たことになる。
冒険者ギルドでは、諸々の買取り総額が48500リル(4850万円)にもなり、メルちゃん先生主導のもと、以下の装備4点と10日分の食料、レンちゃんの服類を購入した。残金は8000リル(800万円)。またまた貧乏逆戻り――。
(リンネ用)
[フェアリーワンド:魔力+3.50 特殊:魔法効果+10%]
(8500リル) 物理攻撃なしの完全魔法職用の杖。
(アユナ用)
[フェアリーワンド:魔力+3.50 特殊:魔法効果+10%]
(8500リル) ボクのをマネしんぼ。
(レン用)
[ミスリルサーベル:攻撃+3.00 敏捷+2.50]
(8000リル×2) 二刀流スキルの効果重複に期待だよ!
[ミスリルアーマー:防衛+4.50 魔法防衛+2.50]
(12000リル) 軽くて丈夫、皆と同じピュアホワイト。
★☆★
「早かったわね! その子が赤の召喚者ね! 白くてふわふわで可愛いじゃない! 」
えっと……クピィを抱き締めるメリンダさんに、誰もツッコめない。
「綺麗な髪と目だわ――強く可憐な花のよう」
クピィを大きな谷間に埋めながら、メリンダさんは食い入るようにレンちゃんを見ている。恥ずかしがってもじもじしているレンちゃん、何か新鮮な感じだね。
「それに、魔人2体の討伐と魔界の門の破壊、街道沿いの1000を超える魔物の駆除、素晴らしい成果だわ!! 故に、4人全員のギルドランクをAに引き上げます! 」
「メリンダさん、そんなテキトーで良いんですか? 」
呆れ顔でツッコむボクに、彼女が即答する。
「どうせコツコツ依頼を受けたり、昇格試験を受けたりしないでしょ? いいのいいの! 」
ボクたちは苦笑いするしかなかった。
「迷宮の件だけど、ギルドの総力を結集して全30階層分のマップを作ったわ。正規のリートを辿れば、最下層最奥の結界まで7日間で行けるはず! 」
★☆★
今日もギルド来客用のお部屋にお泊まり。
メルちゃんの手作り料理を食べて、仲良くお風呂へ。最近は入浴中にステ振りの相談をするのが当たり前の流れになっている。
レベルは、ボクが19、メルちゃん12、アユナちゃん10、レンちゃん8になり、それぞれのステータスは以下の通りになった。明日からの迷宮探索、頑張ろう!!
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:19 職業:勇者
◆ステータス
攻撃:8.75(+4.50)
魔力:30.60(+3.50、効果+10%)
体力:6.50
防御:8.60(+4.80)
敏捷:6.55
器用:2.35
才能:3.00(ステータスポイント0)
◆名前:メル
年齢:14歳 性別:女性 レベル:12 職業:メイド
◆ステータス
攻撃:21.70(+5.20、風弾/中級)
魔力:10.60
体力:7.55
防御:8.55(+2.80)
敏捷:8.45(+2.00)
器用:6.90
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆名前:アユナ
年齢:11歳 性別:女性 レベル:10 職業:精霊魔法使い
◆ステータス
攻撃:3.20
魔力:26.00(+3.50、効果+10%)
体力:4.15
防御:4.55(+3.20、魔法防御+3.00)
敏捷:4.35
器用:2.10
才能:2.00(ステータスポイント0)
◆名前:レン
年齢:14歳 性別:女性 レベル:8 職業:剣士
◆ステータス
攻撃:5.80(+3.00 +3.00)
魔力:0.30
体力:4.20
防御:3.65(+4.50、魔法防衛+2.50)
敏捷:4.80(+2.50 +2.50)
器用:1.45
才能:2.00(ステータスポイント0)
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