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第2幕:心を繋ぐ清流の協奏曲(コンチェルト)
第4-6節:動き出す壮大な計画
しおりを挟む――っ!?
もしかして『新しく吹いた春風』というのは私のことなのだろうか? もしそうだとしたら照れくさいというか、私のことを買い被りすぎだと思う。だって私はまだ何も実績を上げていないわけで……。
頬を赤く染めながら思わず目を伏せる私。それに対してリカルド様はクスッと笑う。
「今こそがフィルザードにおける真の黎明期なのかもしれんな。その時代に立ち会えるとは、僕はなんて幸せなのだろう」
「さ、さすがにそれはまだ気が早いのでは?」
「そうか? 気が早いどころか、もう動き出していると僕は思うがな」
彼の言葉を聞き、私は小さく息を呑んだ。
……確かにそうだ、行動自体はすでに始めている。そしてその小さな動きの積み重ねが未来の希望へと繋がっている。
そもそも結果なんてすぐに出るわけではないし、だからこそ実際に動き出すことが重要なのかもしれない。だとすれば、見方によっては気が早いわけではないのも頷ける。
「……そう……かもしれません! ならば何があっても絶対に踏ん張って、どんな困難も乗り越えていかないといけませんね!」
「フッ、それはそうなのだが、領主である僕の負担とプレッシャーは相当なものだぞ?」
「あなたならやり遂げられると、私は信じています!」
「いや、僕だけでは絶対に無理だ。たくさんの者たちの協力が必要になる。もちろん、その中にはキミも含まれているが、力を貸してくれるか?」
「もちろんです! その覚悟も出来ています!」
私はリカルド様の両手を握り、彼の凛々しい瞳を見つめた。もはや私には微塵も迷いはない。
彼も決意に満ちた表情で手を握り返してくる。私を引っ張っていってくれそうな力強さと夢の実現に向かって突き進もうとする情熱。その姿に私の胸の中ではワクワクする気持ちが膨らんでいく。
「水路の建設に関しての手続きや手配は、僕が明日から少しずつ進めていこう。一方で風車の導入に関しては、商人ギルドのクレストに相談する必要があるのだが――」
「風車の件は私にお任せいただけませんか? 有利に進められそうな策があります」
「分かった。では、クレストとの交渉やその日時について打診する書類は僕が作っておく。出来たらキミに渡すから、視察の際にでもギルドへ届けるといい」
「承知しました」
「それと交渉の前に姉上に相談することをオススメする。姉上は交渉のスペシャリストだからな。きっと良いアドバイスをくれる。……本当は姉上自身が交渉の場に立ち会えれば良いのだが、お体に負担を掛けさせるわけにはいかないからな」
そういえば、お義姉様は交渉術に長けているということをリカルド様とジョセフさんが話していたような気がする。
もちろん、お義姉様は外出するのが難しいだろうし、お屋敷にクレストさんを呼ぶにしても無闇に外部の人間と接触させるのはリスクがある。交渉が長引けば体調を崩してしまう可能性も高まる。
でもお義姉様に無理をさせられないなら、私がその分も頑張ればいいだけ。限られた時間の中で少しでも技術を吸収して、クレストさんとの交渉に臨めばいい。
「そうですね。お義姉様に相談をする時も、お義姉様の都合や体調についてルーシーさんと話し合った上で決めようと思います」
「うん、そうしてもらえるとありがたい」
「では、私はこれから畑へ行ってきます!」
私はグッと拳を握り締め、リカルド様に気合いの入った表情を見せた。
当然、これから私が何をしようとしているのか分かっていないであろう彼は目を白黒させる。
「なっ、こんな夜中にかっ!? 畑で何をするつもりだッ?」
「地下の水量について、水の声を聞くのです。もちろんここでもそれは出来るのですが、この時間ではすでに眠っている方もいらっしゃるでしょうから」
「そうか、力を発動させるにはオカリナの演奏が必要になるんだったな。寝ている者を音で起こしてしまうかもしれないわけか。だが、それなら明日の昼間でも良いのではないか?」
「昼間は公務や視察、それにこれから取り組む事業のあれこれなどで忙しいですから。それにやらなければならないことがたくさん決まって、片付けられる仕事は少しでも早く処理しておきたいのです」
その私の話を聞くと、リカルド様はお腹を抱えながら大笑いする。
「はっはっは! ウズウズして落ち着かないのか! まぁ、焦っても仕方ないとは思うが、このままだとシャロンは色々と気になったままで眠れなさそうだしな」
「はい、寝不足はお肌に良くありません。眠気で明日の公務などに支障が出るのも問題です」
「よし、僕も畑へ付き合おう。力を使うのは僕と一緒の時だけだと約束しているからな」
「ありがとうございます、リカルド様」
私は感謝を述べ、彼の差し出した手を握った。
(つづく……)
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