嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)

第5節(第4幕:完結編):希望へと続く未来を信じて

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 それから数日後、予定より二日遅れでノエルくんたちがヴァーランドへ帰郷することになった。この変更は怪我けがをしたスティール家の兵士さんたちの回復と休養を考慮しての措置だ。

 みんな肉体的にはもちろん、精神的にも疲労が溜まっているだろうからね……。

 ちなみに事件の真相についての調査はジョセフが中心となって進めているみたいだけど、現時点では何も私の耳に届いてきていない。つまり敵もそう易々と尻尾をつかませてはくれないということなんだろうな……。

 まぁ、しばらくはそのことを頭の隅に置いておくことにして、とりあえずはノエルくんたちの見送りに意識を集中しよう。



 今、私はリカルドたちとともに屋敷の前へ出て、別れを惜しむノエルくんと向き合っている。

 すでに出立の準備は整い、警備の兵士さんたちは隊列を作ったまま待機中。馬車の横ではキールさんがいつものように鋭い目つきで周囲を警戒しつつ、静かに控えている。

 彼の怪我けがはまだ完全にえていないけど、人並みに剣を振るうことが出来るくらいには回復しているから心配はいらないと思う。それにこれ以上は時間を掛けてゆっくりと治していく方が良いという面もあるから。

 回復魔法は便利で効果が高いけど、万能でもない。どうしても治癒ちゆの遅い部分は出てしまって、むしろそうしたところは自己治癒ちゆ能力に任せる方が結果的に体への負担が少ないことも多々ある。

「――リカルド兄様、それにシャロン姉さん。フィルザード家の皆さんも本当にお世話になりました」

「うん、色々とあったがこうして無事にノエルを見送ることが出来てなによりだ。一応、領地の境界まで当家の兵士たちを護衛に付けることにしたから、少しは安心してくれ」

「お気遣きづかい感謝します、リカルド兄様」

「またこれにりず、気軽に遊びに来い。楽しみにしているぞ」

「はいっ! 必ず!」

 ノエルくんはリカルドと握手を交わし、さらにゆっくりとハグをした。

 続いて彼は瞳を潤ませながら私を見つめ、鼻をすすりながらハグをしてくる。綺麗きれいな銀髪と華奢きゃしゃな体。心なしかその腕には力が入っていて、体を寄せている時間もリカルドに対するものよりわずかに長いような……。

 こんなにも気を許してくれるようになったのだと思うと、なんだか嬉しい。それだけ別れもさびしく感じる。出会った時のことを考えると、こうしているのが信じられない気もするけど。



 こうしてノエルくんは私たちに挨拶あいさつを済ませ、馬車に乗って警備の兵士さんたちとともに屋敷を去っていった。

 彼らは青空に包まれた地平線まで続く道を進み、少しずつ私たちから遠ざかっていく。

「出る杭は打たれる――か」

 横に立つリカルドがノエルくんたちを眺めながら、不意にポツリと呟いた。それは独り言だったのか、それとも私への問いかけだったのか。

 いずれにしても息を呑んで私が視線を向けると、ほぼ同時にこちらを向いた彼は神妙な面持ちで小さくうなずく。そして今度は明瞭な声で私に対して話し始める。

「目的は不明だが、今回の騒動で何者かが暗躍あんやくしているのが確実になった。どうやら『僕たちの夢』の実現を妨害しようとしているらしい。今まで以上に警戒しなければな、シャロン」

「うん、そうだね」

「今後はシャロンが屋敷の外に出る際には、必ずナイルを護衛に付ける。そしてナイルが僕のそばにいない以上、同じタイミングで僕がキミと別の場所へ外出するのは避けることにする」

「でも……それだと皆さんに新たな負担が……」

 眉を曇らせる私に対し、リカルドはフッとさわやかな笑みを浮かべて私の肩を軽く叩いてくる。

「僕はシャロンのやろうとしていることになるべく制限を掛けたくないし、領地や領民のために働きたいというキミの意志を尊重したい。だからこそ、そのためにもこの措置を受け入れてほしいんだ」

「……分かった。配慮してくれてありがとう。それと気をつかわせてゴメンね」

「謝る必要はない。ただ、それはそれとして、そろそろ本腰を入れて黒幕や実行犯をなんとかせねばな」

「目星は付いてるの?」

「――いや、まだだ」

 真摯しんしな顔つきで返事をしたリカルド。ただ、その時の彼の目は真実を語っていないように私は感じた。それと同時に何かを察してほしいという意思も伝わってくる。

 つまり何らかの理由があって、現段階ではそれを口にすることが出来ないんだ。いつどこで敵の息が掛かった者が聞いているかも分からないわけだしね。

 それに時が来れば、リカルドは絶対に打ち明けてくれるはず。焦らず待てばいい。

「リカルド、こんなことに負けずにこれからも頑張っていこうね」

「あぁ、もちろんだ!」

 りんとした顔つきで力強く返事をするリカルド。私はそんな彼に身を寄せ、希望へと続く未来を想うのだった。


(第4幕:終幕/第5幕へつづく……かも……!?)

※次回の更新は未定ですっ。気長にお待ちいただければ幸いですっ!!
 
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