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第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)
第4-5節:事態の決着と新たな出会い
しおりを挟むやがてアンヌ様の顔色が青くなってきて、足がガクガク震え始める。今にも泣き出しそうだけど、私は彼女が謝罪するまで許さない。
ただ、そんな時のこと、不意に私たちの間にポプラが入ってきて静かに呟く。
「もういいのです、シャロン様。ボーッとしていた私が悪いだけなのです。アンヌ様、ご迷惑をおかけして申し訳がありませんでした」
「……ふ、ふんっ!」
アンヌ様は不機嫌そうに外方を向くと、その場から逃げるように早足で去っていった。その後ろ姿を彼女のメイドが戸惑いながら慌てて追いかける。
周りで見ていた人たちも気まずそうに私たちのいる付近から遠くへ離れていったり、視線を逸らしたりしている。
そしてこれを機に会場内に雑踏が明確に戻り、空気はまだ淀みつつもとりあえずの平穏へと至ったのだった。
◆
その後、私は近くにいたスティール家のメイドさんにポプラの着替えをお願いした。
ひとりになるのは少し不安だったけどその辺も察してくれて、ポプラが着替えで会場を離れている間は別のスティール家のメイドさんが私に付いてくれることになったのだった。
その人とはさっきのいざこざの話をしていたんだけど、私の毅然とした対応を見て胸が熱くなると同時にスカッとしたとのこと。彼女もポプラと同じメイドだから、共感して感銘を受ける部分があったのかもしれない。
こうしてしばらく時を過ごし、やがてポプラが着替えを終えて戻ってくる。
さらにそれよりわずかに遅れたタイミングで、私たちのところへアリアさんがやってくる。ただし、彼女はひとりでということではなく、その傍らには三十代くらいのご婦人もいらっしゃる。
その御方は高貴なオーラに包まれ、私と同様に地味ながらもスタイリッシュなドレスを身につけている。また、大人の女性といった色香を漂わせ、肌も白くて美しい。
「アリアさん、どうかなさったのですか?」
「シャロン様にご紹介したい方がおりまして」
アリアさんが視線を隣にいたご婦人に向けると、その御方はニッコリと穏やかな笑みを浮かべて私に丁寧なお辞儀をした。その所作は優雅で無駄がない。
おそらくそれなりの家柄の夫人か爵位を持つ貴族本人なのだろう。
私はすかさず背筋を伸ばし、緊張した面持ちで彼女の反応を待つ。
「お初にお目にかかります、シャロン様。私はルティア子爵第一夫人のレイミです」
「えっ!? あっ、シャ、えっと、フィルザード辺境伯夫人のシャロンです! 以後、お見知りおきください!」
彼女の素性を知って驚いた私は、戸惑いつつも慌てて頭を下げた。
だってルティア子爵といえば、さっき揉め事があったアンヌ様と同じ家のご夫人。そして第一夫人ということはレイミ様が正室であり、何人もいる奥方を統括しているということになる。
まさかまたルティア家の人と関わることになるなんて……。
これは偶然? ……いや、それにしては出来すぎている。つまりおそらくはアリアさんが何らかの意図を持って、私と巡り合わせたんだろう。
目を白黒させながらアリアさんを見ると、彼女は屈託なく明るく微笑む。
「私は幼い頃からレイミ様に可愛がっていただいていて、大変お世話になっているのです。ルティア家とスティール家は領地が隣同士ですから。私が王都へ留学する際にも尽力していただいたのですよ」
「そ、そうでしたか……」
「実は先ほどのシャロン様とアンヌ様のやり取りを、隅で拝見していました。このまま放置して事態が変にこじれるのもマズイと思い、顛末をレイミ様にお話ししてこうしてお連れしたのです」
「シャロン様、それからそちらのメイドさん、このたびは当家のアンヌが大変失礼いたしました。あの子に代わり、私からお詫び申し上げます」
レイミ様は神妙な面持ちで、私とポプラに向かってそれぞれ深々と頭を下げた。そこに躊躇いや形式的といった空気は全くない。だからこそ、その想定外の行為に思わず私は恐縮して狼狽えてしまう。
(つづく……)
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