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資源ごみとは
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「定義……」
アーロンがいや~~~な顔をした。
まためんどうなことを、って感じの顔。
やっぱり。
薄々気になっていたんだよね。
「これ、私のカンなんだけど、実はこのスキルの資源ごみって、定義曖昧でしょ」
そう言うと、ちょっと沈黙があった。
なので、にっこり笑ってみる。
でしょ? でしよ?
アーロンはちょっとうんざりした顔をした。
「ふむ。なぜ、そう思った?」
「初めて会った時にアナスタシアが言ったのよね。ドイツの資源ごみでもウルグアイの資源ごみでも漁れるって」
「なるほど……」
「でも、ウルグアイのごみ処理は日本やドイツみたいにきちんと制度化されているわけじゃない」
むかーし、どこかの環境団体がやっていた廃油から石鹸を作るワークショップに行ったことがあってそこで、聞かされたんだよね、ウルグアイのごみ処理事情。
政府がきちんと管理しきれていないみたいな話だった。
資源ごみの回収は日本でも自治体によってまちまちだけど、世界規模だったら余計だ。
そしてスキルは「資源ごみ」で世界の資源ごみにアクセスできる。
……絶対に定義は私が最初に思ったものより広い。
「それで何が言いたいのだ」
アーロンは低い声で尋ねる。
「んー。資源ごみの定義をもう少し、こう、ね?」
「いや、だから、その手は何なんだ。いくら手をわやわやしても、何が言いたいのか全くわからんぞ」
アーロンは苛立ったような声を上げるけど私は全く気にせずに続ける。
「つまりね、資源ごみの定義の一番大事な部分って、まだ使えるもので、所有者が所有権を放棄しているものってことだよね」
「それだけではない。所有権を他者に譲渡していると認識していないものだ」
「あ、そうだね。バザーにだすものとか、確かに」
「厳密に言うと資源ごみも日本では自治体によっては自治体の財産だとしている」
「え、そうなの?!」
びっくりだ。
「しかし、多くの場合は捨てる人間は譲渡だと認識していないし、受け取り側も正確に把握していないから、スキルの対象になるというわけだ」
ってことは、あれだよね。時々田舎の農家の道端とかにある「ご自由にどうぞ」って書いてあるような野菜とか……「資源ごみ扱い」してもいいよね?
あとスーパーが、資源ごみのゴミ箱には入れない賞味期限切れの食品とかも、その定義だと「資源ごみ」だよね?
「賞味期限切れのオリーブオイルとか、箱やパッケージが壊れただけの洗剤とか石鹸とか、塩とかお酢とか、こちらに持って来れる可能性がある、ってことだよね? っていうか、その定義だと絶対持ってこれるよね?」
「まあ、理屈では」
アーロンは渋々認める。
やっぱり!!!
私の目前に、今まで考えたこともないような資源ごみの地平線が広がった!
「わー! わー! わーお!」
「お、おい。大声を出すな」
え、だって。だって、だって!!
「これ、ものすごくいろんなものが該当するよね? 使用済み核燃料とか……」
「技術レベルが違いするものはダメだ」
これは絶対譲らん! といった感じでアーロンが断言した。
あー、そうだった、そうだった!
すっかり忘れてたよ!
「そもそも、一体使用済み核燃料で何をするつもりだったんだお前は……」
いや、別に何かしようと思ったわけじゃないけど、だって色々できそうじゃんね。
「ということで、週の終わりまでに事業系資源ごみに向けてポイントを貯めるよ、アーロン!」
まず、手始めに、日本中の道端から「ご自由にどうぞ」なトマトやキュウリを探すよ!
「……なぜ、そこでトマト……」
さっきまで核燃料とか言ってたのに……とあきれたような声でアーロンが呟いていたけど、単純だよ!
この地域にトマトや、キュウリやナスがないからだよ!
私の味覚はお馴染みの野菜を求めてるよ!
こんなの絶対テンション上がるでしょう。
「水を差して悪いが、お前の世界とこちらの世界の季節は同期していない」
え? あれ?
「というか、現在この世界の季節はお前の世界の南半球と同期している」
えええっ!
つまり、日本は今、冬……
いや、確かに私が死んだのは冬でしたね。こっちがすっかり夏だったから忘れていた。
「現在はってことは、変わることもあるの?」
「最近アナスタシア様がかなりお力をお使いになって変えた」
えええっ!
どうして?!
びっくりして、聞くとアーロンがジトっとした目で私を見た。
「こちらに来てすぐに冬ではお前が死ぬ確率が高かったからだ」
!!!
明らかになる衝撃の事実。
「色々制約があってお前にはこの世界の平均的な生活しか与えることができなかった。同期季節の変更は神力を大量に使うが制限を受けないアナスタシア様の管轄内だからな」
あー。私に直接色々与えるのはアウトだったけど、私の環境に手を加えるのはやり方次第だったのか……。
ありがとう!アナスタシア!!
アナスタシアに栄光あれ!
パッパパー
と、ファンファーレが鳴る。
《称号『神のどういたしまして』を取得しました!》
「ですから~!! アナスタシア様!!」
アーロンが叫んだ。
称号『どういたしまして』……
しかし、まあ、それはそれとして、冬の日本の道端にもそれなりに食材は置かれていた。特に柑橘類で甘みのないもの。
柚子やレモン!
国産レモンってあるんだね。
私はそういうのが路地で育つ地域に住んだことがないから分からなかったよ……。
あと、かぼす?すだち?みたいなのも。
時々大根やネギも。
あと、意外なものもあった。
竹の切ったものなんか、「??」と思いつつ、いくつか確保した。
細いのと、孟宗竹みたいなのと何本か。使う予定はなし。
その日、私は半分倒れそうになるまで、家庭菜園の野菜や果物を漁りまくった。
つきあわされたアーロンはちょっとうんざりした顔をしていたけれど、許して! 美味しいものを作ってあげるから!
事業系資源ごみが、とても楽しみだよ!
アーロンがいや~~~な顔をした。
まためんどうなことを、って感じの顔。
やっぱり。
薄々気になっていたんだよね。
「これ、私のカンなんだけど、実はこのスキルの資源ごみって、定義曖昧でしょ」
そう言うと、ちょっと沈黙があった。
なので、にっこり笑ってみる。
でしょ? でしよ?
アーロンはちょっとうんざりした顔をした。
「ふむ。なぜ、そう思った?」
「初めて会った時にアナスタシアが言ったのよね。ドイツの資源ごみでもウルグアイの資源ごみでも漁れるって」
「なるほど……」
「でも、ウルグアイのごみ処理は日本やドイツみたいにきちんと制度化されているわけじゃない」
むかーし、どこかの環境団体がやっていた廃油から石鹸を作るワークショップに行ったことがあってそこで、聞かされたんだよね、ウルグアイのごみ処理事情。
政府がきちんと管理しきれていないみたいな話だった。
資源ごみの回収は日本でも自治体によってまちまちだけど、世界規模だったら余計だ。
そしてスキルは「資源ごみ」で世界の資源ごみにアクセスできる。
……絶対に定義は私が最初に思ったものより広い。
「それで何が言いたいのだ」
アーロンは低い声で尋ねる。
「んー。資源ごみの定義をもう少し、こう、ね?」
「いや、だから、その手は何なんだ。いくら手をわやわやしても、何が言いたいのか全くわからんぞ」
アーロンは苛立ったような声を上げるけど私は全く気にせずに続ける。
「つまりね、資源ごみの定義の一番大事な部分って、まだ使えるもので、所有者が所有権を放棄しているものってことだよね」
「それだけではない。所有権を他者に譲渡していると認識していないものだ」
「あ、そうだね。バザーにだすものとか、確かに」
「厳密に言うと資源ごみも日本では自治体によっては自治体の財産だとしている」
「え、そうなの?!」
びっくりだ。
「しかし、多くの場合は捨てる人間は譲渡だと認識していないし、受け取り側も正確に把握していないから、スキルの対象になるというわけだ」
ってことは、あれだよね。時々田舎の農家の道端とかにある「ご自由にどうぞ」って書いてあるような野菜とか……「資源ごみ扱い」してもいいよね?
あとスーパーが、資源ごみのゴミ箱には入れない賞味期限切れの食品とかも、その定義だと「資源ごみ」だよね?
「賞味期限切れのオリーブオイルとか、箱やパッケージが壊れただけの洗剤とか石鹸とか、塩とかお酢とか、こちらに持って来れる可能性がある、ってことだよね? っていうか、その定義だと絶対持ってこれるよね?」
「まあ、理屈では」
アーロンは渋々認める。
やっぱり!!!
私の目前に、今まで考えたこともないような資源ごみの地平線が広がった!
「わー! わー! わーお!」
「お、おい。大声を出すな」
え、だって。だって、だって!!
「これ、ものすごくいろんなものが該当するよね? 使用済み核燃料とか……」
「技術レベルが違いするものはダメだ」
これは絶対譲らん! といった感じでアーロンが断言した。
あー、そうだった、そうだった!
すっかり忘れてたよ!
「そもそも、一体使用済み核燃料で何をするつもりだったんだお前は……」
いや、別に何かしようと思ったわけじゃないけど、だって色々できそうじゃんね。
「ということで、週の終わりまでに事業系資源ごみに向けてポイントを貯めるよ、アーロン!」
まず、手始めに、日本中の道端から「ご自由にどうぞ」なトマトやキュウリを探すよ!
「……なぜ、そこでトマト……」
さっきまで核燃料とか言ってたのに……とあきれたような声でアーロンが呟いていたけど、単純だよ!
この地域にトマトや、キュウリやナスがないからだよ!
私の味覚はお馴染みの野菜を求めてるよ!
こんなの絶対テンション上がるでしょう。
「水を差して悪いが、お前の世界とこちらの世界の季節は同期していない」
え? あれ?
「というか、現在この世界の季節はお前の世界の南半球と同期している」
えええっ!
つまり、日本は今、冬……
いや、確かに私が死んだのは冬でしたね。こっちがすっかり夏だったから忘れていた。
「現在はってことは、変わることもあるの?」
「最近アナスタシア様がかなりお力をお使いになって変えた」
えええっ!
どうして?!
びっくりして、聞くとアーロンがジトっとした目で私を見た。
「こちらに来てすぐに冬ではお前が死ぬ確率が高かったからだ」
!!!
明らかになる衝撃の事実。
「色々制約があってお前にはこの世界の平均的な生活しか与えることができなかった。同期季節の変更は神力を大量に使うが制限を受けないアナスタシア様の管轄内だからな」
あー。私に直接色々与えるのはアウトだったけど、私の環境に手を加えるのはやり方次第だったのか……。
ありがとう!アナスタシア!!
アナスタシアに栄光あれ!
パッパパー
と、ファンファーレが鳴る。
《称号『神のどういたしまして』を取得しました!》
「ですから~!! アナスタシア様!!」
アーロンが叫んだ。
称号『どういたしまして』……
しかし、まあ、それはそれとして、冬の日本の道端にもそれなりに食材は置かれていた。特に柑橘類で甘みのないもの。
柚子やレモン!
国産レモンってあるんだね。
私はそういうのが路地で育つ地域に住んだことがないから分からなかったよ……。
あと、かぼす?すだち?みたいなのも。
時々大根やネギも。
あと、意外なものもあった。
竹の切ったものなんか、「??」と思いつつ、いくつか確保した。
細いのと、孟宗竹みたいなのと何本か。使う予定はなし。
その日、私は半分倒れそうになるまで、家庭菜園の野菜や果物を漁りまくった。
つきあわされたアーロンはちょっとうんざりした顔をしていたけれど、許して! 美味しいものを作ってあげるから!
事業系資源ごみが、とても楽しみだよ!
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