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職人女子のポテンシャル
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「だって、女性の作った品物だとして買い叩かれたり、ハーマンさんが持ちかけてきたように名前を知らせずに売ったりされてしまうんですもの、実績の作りようがないじゃないですか」
「……」
「こんなの、スタートラインが違います。頑張るとか頑張らないとか、能力がどうのとか、そういう話でもないですよね」
「ふむ……」
副ギルド長は静かに私の目を見た。
「しかし、こちらとしても商売ですからね。売れないものに投資はできない」
うん。それは当然だ。
「でも、これで職人女子達がしっかり独り立ちできるようになるとギルドには二重のメリットがありますよね」
「二重のメリット?」
「造り手の層が厚くなるだけでなく新たな顧客層が誕生するわけですから」
造り手の方は各ギルドの分野だけれど、アナベルさんが親方さんに説明していたように、各工房に女性が入るようになることで、現金収入を持つ女性が増えるということだ。
「だって私のエプロンだって買ってくれたのはバグズブリッジの働く女の子たちでしたし」
「ふむ……」
「彼女が自分たちの工房を構えるようになったら、そこそこの収入のある女性はもっと増えますよ」
「そ、そうなんだよ! 副ギルド長、そういう意味でも僕は可能性があると思っていてね」
フェリックスさんが慌てたように口添えしてくれる。なんか微笑ましい。
結構決断力ありそうな人なのに副ギルド長には頭が上がらないんだね。
「現在職人女子会が考えている製品はあるのですか」
副ギルド長がようやく興味を示してくれた。
「私はラノリンのクリームを新たに開発しているところです。あとは一人、ガラスペンの製作に着手し始めています。今朝試作品の打ち合わせをしたところです」
本当だよ。
「……なるほど仕事が早い」
副ギルド長は、ボソッと言った。
「ガラスペンとは……?」
興味を示したのは神官補とフェリックスさんで、声がきれいにハモった。
「母が持っていたものを再現してもらおうと思っています……これなんですが」
女子会の時のように鞄から出して見せると、部屋中に沈黙が訪れた。
「……これは? どのように使うものなのですか?」
「羽根ペンと同じですよ」
インクの小瓶とノートを出して文字を書いてみせると、職人女子会の時のようにザワッとなる。
「こ……これがあれば毎日羽ペンを削らなくて良いということが……」
「金属のペン先もこんなに長いこと書き続けることはできないぞ……」
特に神官補の眼差しが熱い。私のせいで書類仕事が待ってるもんね……。
「どの程度インクを吸うかどうかは職人の技量にかかっています。でも、この半分までしか届かなかったとしても需要はあると考えています」
「確かに、私なら買う。羽根ペンよりは圧倒的に書ける量が多い」
神官補は頷く。
「ギルドの経理部や契約部も興味を持ちますよ」
若手ホープ(アナベルさんに興味津々)も口を出す。
「……ちなみにラノリンのクリームというのは……」
あー。あれは持ってこなかったんだよね。
説明しようと口を開きかけたら意外な人が手を上げた。
「あ、それは私が持っています」
ほへ?
神官補が?
なんで?
「恩師が非常に質の良いクリームが手に入ったと半分分けてくれたのです。これは、おそらくマージョさんのですよね?」
あー。ブラウン神官!!
なぜ男性に渡すし!
「ほほう……これが。少しつけさせていただいても?」
「どうぞ」
受け取ってほんの少し指先につけた副ギルド長は難しい顔になって瓶をフェリックスさんに渡した。
んー。どういう反応なんだろう。
よくできたと思うんだけどな。
気になるよ!
「……」
「こんなの、スタートラインが違います。頑張るとか頑張らないとか、能力がどうのとか、そういう話でもないですよね」
「ふむ……」
副ギルド長は静かに私の目を見た。
「しかし、こちらとしても商売ですからね。売れないものに投資はできない」
うん。それは当然だ。
「でも、これで職人女子達がしっかり独り立ちできるようになるとギルドには二重のメリットがありますよね」
「二重のメリット?」
「造り手の層が厚くなるだけでなく新たな顧客層が誕生するわけですから」
造り手の方は各ギルドの分野だけれど、アナベルさんが親方さんに説明していたように、各工房に女性が入るようになることで、現金収入を持つ女性が増えるということだ。
「だって私のエプロンだって買ってくれたのはバグズブリッジの働く女の子たちでしたし」
「ふむ……」
「彼女が自分たちの工房を構えるようになったら、そこそこの収入のある女性はもっと増えますよ」
「そ、そうなんだよ! 副ギルド長、そういう意味でも僕は可能性があると思っていてね」
フェリックスさんが慌てたように口添えしてくれる。なんか微笑ましい。
結構決断力ありそうな人なのに副ギルド長には頭が上がらないんだね。
「現在職人女子会が考えている製品はあるのですか」
副ギルド長がようやく興味を示してくれた。
「私はラノリンのクリームを新たに開発しているところです。あとは一人、ガラスペンの製作に着手し始めています。今朝試作品の打ち合わせをしたところです」
本当だよ。
「……なるほど仕事が早い」
副ギルド長は、ボソッと言った。
「ガラスペンとは……?」
興味を示したのは神官補とフェリックスさんで、声がきれいにハモった。
「母が持っていたものを再現してもらおうと思っています……これなんですが」
女子会の時のように鞄から出して見せると、部屋中に沈黙が訪れた。
「……これは? どのように使うものなのですか?」
「羽根ペンと同じですよ」
インクの小瓶とノートを出して文字を書いてみせると、職人女子会の時のようにザワッとなる。
「こ……これがあれば毎日羽ペンを削らなくて良いということが……」
「金属のペン先もこんなに長いこと書き続けることはできないぞ……」
特に神官補の眼差しが熱い。私のせいで書類仕事が待ってるもんね……。
「どの程度インクを吸うかどうかは職人の技量にかかっています。でも、この半分までしか届かなかったとしても需要はあると考えています」
「確かに、私なら買う。羽根ペンよりは圧倒的に書ける量が多い」
神官補は頷く。
「ギルドの経理部や契約部も興味を持ちますよ」
若手ホープ(アナベルさんに興味津々)も口を出す。
「……ちなみにラノリンのクリームというのは……」
あー。あれは持ってこなかったんだよね。
説明しようと口を開きかけたら意外な人が手を上げた。
「あ、それは私が持っています」
ほへ?
神官補が?
なんで?
「恩師が非常に質の良いクリームが手に入ったと半分分けてくれたのです。これは、おそらくマージョさんのですよね?」
あー。ブラウン神官!!
なぜ男性に渡すし!
「ほほう……これが。少しつけさせていただいても?」
「どうぞ」
受け取ってほんの少し指先につけた副ギルド長は難しい顔になって瓶をフェリックスさんに渡した。
んー。どういう反応なんだろう。
よくできたと思うんだけどな。
気になるよ!
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