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まずはトイレ
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なんか、本当にありがたい。色々と考えてくれてこうなっているんだっていうのがわかるからね。
「夏の終わり……ということはもうすぐですよね」
「一ヶ月後です」
色々と準備をする時間はあるけれど、ものすごく余裕があるわけでもない。
女子会の面々は多分仕事もあるだろうし、一番身動きが取りやすいのは私……かな。
でも、私はこちらに拠点がない。
「引き受けるられるのだったらギルドの客室をしばらく使っていただけますよ」
おお、それはありがたいです。まあ、行ったり来たりするのは避けられなさそうだけど。
「予算は?」
「例年と同じです。できますか?」
うーん。
「例年だと何を出していましたか?」
「エールと軽い食事ですね。パンとチーズ、それにハムなどです」
なるほど。妥当なところだよね。
エールは飲み物代わりでもあるし。
でも、それだと困ることが2つ。
「まずは早急に女子会の面々と相談をしたいのですが、ヒルトップ村に帰る前に皆でお話を伺うことはできますか?」
「今すぐ呼ぼう」
おおお!仕事が早い!ありがとう、フェリックスさん!
「引き受けることになるという予想の上で問題が2つあります」
「ほう?」
「1つ目はトイレです。去年までは何人くらいだったんですか?」
「4-50人くらいかな?」
フェリックスさんが答えてくれる。
「単純に計算しても4-5倍の人ですね?」
ちょっと茂みで……みたいな人数じゃない。町外れの広場で、と言っていたし、設備がそれほど整っているようにも見えない。
今までは形だけギルドがお礼のランチを提供はしていたけど、それなりの人数が居酒屋や、料理店に流れていたから簡易トイレで賄えてたんだろうけど、この人数だともっとトイレが必要だ。
それを通常年の予算で賄えと言われても困る。
「なるほど?」
副ギルド長は面白がるような顔をする。
「食材よりもそちらに意識が行くのですか?」
「食材の費用も気になりますよ、もちろん。でも、これは明らかに例年とは違う出費ですから増額する言い訳がたちやすいですよね? なんなら、わたしたちの管轄だと公表する前に作っておいていただいてもいい」
予算はあまり増額されないだろうと思ったのだ。これを契約の言い訳に使うんだったら「例年と同じ予算で数倍の人数に食事をさせた」、というのはそこそこのインパクトがあるし。
「もう一つは?」
「働く私達の安全です」
「ほう?」
「まがりなりにも女子会が仕切ることになります。好奇の目もあるでしょう。酒が進むと不埒なことを考える人が出てくる可能性もあります」
「……なるほど、それは考えても見なかった」
そういうのを考えなくても生活できる事自体を「特権」と呼ぶ。
でも持っているときは気づかないんだよね。別に副ギルド長が悪いわけじゃない。誰でもみんなそうだ。
自分の特権を指摘されたときに、そうか、と立ち止まって考えられる人は、本当に尊敬すべきだと思う。
「何をするにあたってもメンバーが安心できることがとても大切です。ただでさえ女性だということだけで、ハーマンさんの被害を受けてるんです。何らかの形で安全の保証ができるといいのですが」
「ふむ」
「とりあえず、エールの提供はやめたいと思っています」
「ほう?」
「少しでも酔う人を減らしたいと思います。食事を提供していない居酒屋は空きがあるのですよね?」
「それはそうだが……パンがボソボソして食べられたものじゃないぞ」
神官補はそこが気になるみたい。パンとチーズとエールはこの世界のお約束の組み合わせだものね。
「パンとスープの組み合わせを提供します。そうすれば飲み物の必要性が減りますし、お酒を飲みたい人は自然に飲食店に流れてくれますよね?食事を提供していない居酒屋の恨みも買わないですみます。通常年は町中の料理店で食べた傭兵がその後、そちらに流れてたんじゃないですか?」
食事を提供する店が軒並み領主の遊興に抑えられたにしても、飲み屋さんが全部ゼロになるわけじゃないよね。
「そこまで気づきましたか」
副ギルド長は楽しそうな笑顔になった。
「なるほど。女子会が引き受けてくれるのだったら当日の警備は手配しましょう。エールを提供しないのも納得です」
うん。
なんか大きな仕事になりそうだけど、道筋はつきそう……なのかな?
「夏の終わり……ということはもうすぐですよね」
「一ヶ月後です」
色々と準備をする時間はあるけれど、ものすごく余裕があるわけでもない。
女子会の面々は多分仕事もあるだろうし、一番身動きが取りやすいのは私……かな。
でも、私はこちらに拠点がない。
「引き受けるられるのだったらギルドの客室をしばらく使っていただけますよ」
おお、それはありがたいです。まあ、行ったり来たりするのは避けられなさそうだけど。
「予算は?」
「例年と同じです。できますか?」
うーん。
「例年だと何を出していましたか?」
「エールと軽い食事ですね。パンとチーズ、それにハムなどです」
なるほど。妥当なところだよね。
エールは飲み物代わりでもあるし。
でも、それだと困ることが2つ。
「まずは早急に女子会の面々と相談をしたいのですが、ヒルトップ村に帰る前に皆でお話を伺うことはできますか?」
「今すぐ呼ぼう」
おおお!仕事が早い!ありがとう、フェリックスさん!
「引き受けることになるという予想の上で問題が2つあります」
「ほう?」
「1つ目はトイレです。去年までは何人くらいだったんですか?」
「4-50人くらいかな?」
フェリックスさんが答えてくれる。
「単純に計算しても4-5倍の人ですね?」
ちょっと茂みで……みたいな人数じゃない。町外れの広場で、と言っていたし、設備がそれほど整っているようにも見えない。
今までは形だけギルドがお礼のランチを提供はしていたけど、それなりの人数が居酒屋や、料理店に流れていたから簡易トイレで賄えてたんだろうけど、この人数だともっとトイレが必要だ。
それを通常年の予算で賄えと言われても困る。
「なるほど?」
副ギルド長は面白がるような顔をする。
「食材よりもそちらに意識が行くのですか?」
「食材の費用も気になりますよ、もちろん。でも、これは明らかに例年とは違う出費ですから増額する言い訳がたちやすいですよね? なんなら、わたしたちの管轄だと公表する前に作っておいていただいてもいい」
予算はあまり増額されないだろうと思ったのだ。これを契約の言い訳に使うんだったら「例年と同じ予算で数倍の人数に食事をさせた」、というのはそこそこのインパクトがあるし。
「もう一つは?」
「働く私達の安全です」
「ほう?」
「まがりなりにも女子会が仕切ることになります。好奇の目もあるでしょう。酒が進むと不埒なことを考える人が出てくる可能性もあります」
「……なるほど、それは考えても見なかった」
そういうのを考えなくても生活できる事自体を「特権」と呼ぶ。
でも持っているときは気づかないんだよね。別に副ギルド長が悪いわけじゃない。誰でもみんなそうだ。
自分の特権を指摘されたときに、そうか、と立ち止まって考えられる人は、本当に尊敬すべきだと思う。
「何をするにあたってもメンバーが安心できることがとても大切です。ただでさえ女性だということだけで、ハーマンさんの被害を受けてるんです。何らかの形で安全の保証ができるといいのですが」
「ふむ」
「とりあえず、エールの提供はやめたいと思っています」
「ほう?」
「少しでも酔う人を減らしたいと思います。食事を提供していない居酒屋は空きがあるのですよね?」
「それはそうだが……パンがボソボソして食べられたものじゃないぞ」
神官補はそこが気になるみたい。パンとチーズとエールはこの世界のお約束の組み合わせだものね。
「パンとスープの組み合わせを提供します。そうすれば飲み物の必要性が減りますし、お酒を飲みたい人は自然に飲食店に流れてくれますよね?食事を提供していない居酒屋の恨みも買わないですみます。通常年は町中の料理店で食べた傭兵がその後、そちらに流れてたんじゃないですか?」
食事を提供する店が軒並み領主の遊興に抑えられたにしても、飲み屋さんが全部ゼロになるわけじゃないよね。
「そこまで気づきましたか」
副ギルド長は楽しそうな笑顔になった。
「なるほど。女子会が引き受けてくれるのだったら当日の警備は手配しましょう。エールを提供しないのも納得です」
うん。
なんか大きな仕事になりそうだけど、道筋はつきそう……なのかな?
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