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スタンピードランチ当日
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日の出と共にマーサさんとアリスちゃんと起きて、バオを作る。
蒸籠を7つほどいっぱいにしたところでチャーリーがやってきて、運び出してくれる。
そろそろ私達もあちらに行ってお湯を沸かさなくちゃね、と3人でお茶を飲み始めたところに、ベンさんが、真っ青な顔で入ってきた。
「壊された」
……え?
「3つある竃のうちの2つが、壊された」
「ちょ……それって……」
「犯人は捕まっているが、今日の料理が……」
「代わりの竈は作れる?」
「小さいのは作るのも簡単だが、あの大きな鍋が使えるようなサイズのものは……」
なるほど。
「あと……」
「まだなにかあるの?!」
「外においてあった薪に水をかけられた」
「……!」
天幕の中にも薪はある。でも入り切らなかったし、雨も降りそうになかったから大部分は外に出しておいてあったのだ。
湿った薪では煙が出るばかりで火力が出ない。下手をしたら火をつけるのも一苦労だ。
湿った薪を火の周囲に並べ乾かしながら料理すればやがて使えるようになるけど……。
ふんだんに薪を使ってコトコト煮込み続けるような料理には向いてない。
「マーサさん!」
私は叫んでいた。
「今日までに縫った鍋帽子、全部使いましょう!」
「な……鍋帽子?」
ベンさんがキョトンとする。
「なんとかなります。……なんとかします……!」
とりあえずベンさんを広場に帰し、小さな鍋で使える竈を急ごしらえで作ってもらう。アリスちゃんをハンナさんの工房に送り、砂時計をできるだけ持ってきてもらう。マーサさんと私はここ数日作っていた鍋帽子を検分し、どんどん詰め込んでいく。
「うまく行くでしょうか……」
「前に試した時はうまくいきましたから」
不安なのは私も同じだけれど、不安だと言っても何も解決しない。
「聞きました……!」
副ギルド長が、飛び込んで来た。
「どうしますか? 何か私にできることは……」
「ありがとうございます。とりあえず、燃やせるものを集めていただけますか。炭でも薪でも」
「何とかなるんですか」
「何とかするんです」
広場にたどり着くと、すでに大きな竈には火が入れられていて蒸篭がセットしてあった。
チャーリーが濡らされた薪を確認してる。
「こっちはたいして水がかかってない山。こっちは結構濡れちゃってるからこれから細く割る」
「細く割ると乾くのも早くなるから?」
「いや、外側が濡れていても中は乾いてることが多いんだ。手間はかかるが、やってみる」
チャーリー……頼もしい……!
小さな竈……のようなものは5つ。仮ごしらえ感満々だ。チャーリーとオーウェンさんがここまでやっておいてくれたんだね。素早い対処に頭が下がる。
「マージョ、大丈夫か……?」
「チャーリー、ありがとう。心配しないで」
ジョーさんが作ってくれた鍋と、マーサさんの作ってくれた鍋帽子があれば大丈夫。
「小さな竈に火を入れてください」
私の声に用心棒のオーウェンさんが天幕から薪を持って来て火をおこしはじめる。
「あ、オーウェンさんは、あの……それはお仕事じゃないのに……」
「あー、気にするなって。まあ、犯人は捕まえたけど竈を壊されちまって……悪かったな」
「そんな……!」
オーウェンさんに頼んだのは天幕の中のものの見張りだ。
真夜中に外でコソコソやっていることに気づかなかったのは彼の責任じゃない。
「まあ、でも犯人は捕まえたからよ」
「ええ、それは本当に……」
「意外な人間だったよ」
オーウェンさんが顎をしゃくった先を見て私は凍りついた。
縛られて白樺の木の根本に転がされていたのは。
先日ハンナさんのことが心配でたまらないって顔をしていたハンナさんの兄弟子の……。
私達みんなが生暖かくニヨニヨ見守っていた……。
ロバートさんだった。
蒸籠を7つほどいっぱいにしたところでチャーリーがやってきて、運び出してくれる。
そろそろ私達もあちらに行ってお湯を沸かさなくちゃね、と3人でお茶を飲み始めたところに、ベンさんが、真っ青な顔で入ってきた。
「壊された」
……え?
「3つある竃のうちの2つが、壊された」
「ちょ……それって……」
「犯人は捕まっているが、今日の料理が……」
「代わりの竈は作れる?」
「小さいのは作るのも簡単だが、あの大きな鍋が使えるようなサイズのものは……」
なるほど。
「あと……」
「まだなにかあるの?!」
「外においてあった薪に水をかけられた」
「……!」
天幕の中にも薪はある。でも入り切らなかったし、雨も降りそうになかったから大部分は外に出しておいてあったのだ。
湿った薪では煙が出るばかりで火力が出ない。下手をしたら火をつけるのも一苦労だ。
湿った薪を火の周囲に並べ乾かしながら料理すればやがて使えるようになるけど……。
ふんだんに薪を使ってコトコト煮込み続けるような料理には向いてない。
「マーサさん!」
私は叫んでいた。
「今日までに縫った鍋帽子、全部使いましょう!」
「な……鍋帽子?」
ベンさんがキョトンとする。
「なんとかなります。……なんとかします……!」
とりあえずベンさんを広場に帰し、小さな鍋で使える竈を急ごしらえで作ってもらう。アリスちゃんをハンナさんの工房に送り、砂時計をできるだけ持ってきてもらう。マーサさんと私はここ数日作っていた鍋帽子を検分し、どんどん詰め込んでいく。
「うまく行くでしょうか……」
「前に試した時はうまくいきましたから」
不安なのは私も同じだけれど、不安だと言っても何も解決しない。
「聞きました……!」
副ギルド長が、飛び込んで来た。
「どうしますか? 何か私にできることは……」
「ありがとうございます。とりあえず、燃やせるものを集めていただけますか。炭でも薪でも」
「何とかなるんですか」
「何とかするんです」
広場にたどり着くと、すでに大きな竈には火が入れられていて蒸篭がセットしてあった。
チャーリーが濡らされた薪を確認してる。
「こっちはたいして水がかかってない山。こっちは結構濡れちゃってるからこれから細く割る」
「細く割ると乾くのも早くなるから?」
「いや、外側が濡れていても中は乾いてることが多いんだ。手間はかかるが、やってみる」
チャーリー……頼もしい……!
小さな竈……のようなものは5つ。仮ごしらえ感満々だ。チャーリーとオーウェンさんがここまでやっておいてくれたんだね。素早い対処に頭が下がる。
「マージョ、大丈夫か……?」
「チャーリー、ありがとう。心配しないで」
ジョーさんが作ってくれた鍋と、マーサさんの作ってくれた鍋帽子があれば大丈夫。
「小さな竈に火を入れてください」
私の声に用心棒のオーウェンさんが天幕から薪を持って来て火をおこしはじめる。
「あ、オーウェンさんは、あの……それはお仕事じゃないのに……」
「あー、気にするなって。まあ、犯人は捕まえたけど竈を壊されちまって……悪かったな」
「そんな……!」
オーウェンさんに頼んだのは天幕の中のものの見張りだ。
真夜中に外でコソコソやっていることに気づかなかったのは彼の責任じゃない。
「まあ、でも犯人は捕まえたからよ」
「ええ、それは本当に……」
「意外な人間だったよ」
オーウェンさんが顎をしゃくった先を見て私は凍りついた。
縛られて白樺の木の根本に転がされていたのは。
先日ハンナさんのことが心配でたまらないって顔をしていたハンナさんの兄弟子の……。
私達みんなが生暖かくニヨニヨ見守っていた……。
ロバートさんだった。
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