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ファイナルカウントダウン
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スタンピードランチまで、あと4日。
街に人が増えてきている。気のせいではない。
領主一行が来て、しかも冒険者たちも来るということで、行商をする人たちも少し早めに来ているのだ。
バグズブリッジで買い付けをするのだろう。
あちらこちらの工房に顔を出しているなんて話も聞く。
針子のマダムと相談して市場に小さな「繕い物屋」を出した。大きく「仮縫いしません」と書いてあるし、針子のという言葉は使っていない。
これが意外と繁盛しているとマーサさんが教えてくれた。
「単純に縫い物をお願いしたい人ってこんなにいたのね……」
男性で縫い物ができる人も珍しくないけど、そりゃあそうでしょう。
マーサさんの同期の何人かはこれでお客を取らなくてもいいと嬉しそうだった。うんうん。良いことだ!
スタンピードランチまで、あと3日。
トイレ、竈が完成。天幕も張った。
「あのね、ちょっとした飾りなんだけど……」
驚いたことに、この日、夏雪草のみんなが、それぞれ申し合わせたように小さな飾りを持ってきた。
「昨日の夜、なんか思いついて……」
「そうそう。オーロラ様とか、オーブリー様とか考えていたら何か作りたくなって……」
拳大くらいのそれぞれ木、革、鉄、ガラスの吊り飾りだ。
どれも違う形なのに、なんか妙な統一感がある。
「それじゃあ天幕の四隅に飾らない?」
ということで、四隅に飾ったら、ピカッと天幕が光に満たされた。
「ほへ?」
「マージョさん、どうしたの?」
みんなには見えていないっぽい。
「あー、あれだな、祈りを込めた飾りで四隅を囲ったから我々があの範囲でちょっと力が使いやすくなったんだな」
その夜、アーロンが教えてくれた。
「……なんか良いことあるの?」
「……ま、とりあえずあの天幕に入れたものは腐敗しない」
……冷蔵庫か!!
「……まあ、そんなものだと考えてもらっていていい」
……すごい! 食材とか、かなり今のうちに運び込めるではないですか。
アーロン、素晴らしすぎる!
アナスタシア、アーロン、オーロラ、オーブリー! 四柱に栄光あれ!
こんなん、嬉しくて踊るよね!
ちなみにベンさんに頼んでそこに棚を運び込んでもらった。結構色々なものをしまっておけそうだし、床面積が足りなくなりそうな気がするからね。
スタンピードランチまで、あと2日。
ベンさんが、たくさん樽を持ってきてくれた。
「当日水を汲むよりも少しでも今のうちに汲んでおいたほうがいいかと思って……」
本当だ。
パールの出産で、トーマスさんの簡単に使えるポニーがなくなってしまったこともあり、小回りのきく馬車を出してくれるベンさんには感謝しかない。
「力仕事なら手伝いますよ」
ロバートさんと、トーマスさんからも嬉しい申し出があった。
ということで、広場との間を何度も往復する。
食材、燃料の薪、水。そしてランチの後に売るつもりの商品も。
盗まれたら困るから2日ほど私はここで夜営しようかな、と言ったらみんなに全力で止められた。
ギルドが雇ってくれた用心棒のオジサン3人のうちの一人が「じゃあ、オレが泊まるっす」と手を挙げてくれた。
無精ひげでちょっと酒くさいオジサンだ。名前はオーウェン。
なんか、やさぐれた感じの人だけど大丈夫かな?と思ってたらロバートさんが難色を示した。
「ハンナの守りを任せられるオトコだとは思えない……」
ブツブツ言ってたけれど、まあ、ハンナさんが天幕に泊まるわけじゃないから、それは的外れだ。
「ギルドの紹介ですから信用します」
まさかギルドの顔を潰さないですよね? と釘を刺しておく。
「ま、任しとけってお嬢ちゃん」
ヘラヘラと彼は答えた。
スタンピードランチ前日。
準備できるものは全部準備した。
天幕に泊まっていた用心棒のオジサンは、今朝あったら無精髭もなくなって爽やかな壮年男性になっていた。
なんか心境の変化でもあったんだろうか。
もしかしたら昨日あったときは夜勤明けだったとかそんな話なのかもしれない。
トーマスさんや、チャーリーも来てくれて、宿舎でささやかな壮行会をした。今日はこちらに泊まるのだ。
今回、この宿舎はまるまる一棟私達が使わせてもらったのだけれど、今にして思うと、ベンさんや副ギルド長がかなり根回しをしてくれたんじゃないだろうか。
「明日は5時おきでバオを作るよ!」
準備万端だ!
街に人が増えてきている。気のせいではない。
領主一行が来て、しかも冒険者たちも来るということで、行商をする人たちも少し早めに来ているのだ。
バグズブリッジで買い付けをするのだろう。
あちらこちらの工房に顔を出しているなんて話も聞く。
針子のマダムと相談して市場に小さな「繕い物屋」を出した。大きく「仮縫いしません」と書いてあるし、針子のという言葉は使っていない。
これが意外と繁盛しているとマーサさんが教えてくれた。
「単純に縫い物をお願いしたい人ってこんなにいたのね……」
男性で縫い物ができる人も珍しくないけど、そりゃあそうでしょう。
マーサさんの同期の何人かはこれでお客を取らなくてもいいと嬉しそうだった。うんうん。良いことだ!
スタンピードランチまで、あと3日。
トイレ、竈が完成。天幕も張った。
「あのね、ちょっとした飾りなんだけど……」
驚いたことに、この日、夏雪草のみんなが、それぞれ申し合わせたように小さな飾りを持ってきた。
「昨日の夜、なんか思いついて……」
「そうそう。オーロラ様とか、オーブリー様とか考えていたら何か作りたくなって……」
拳大くらいのそれぞれ木、革、鉄、ガラスの吊り飾りだ。
どれも違う形なのに、なんか妙な統一感がある。
「それじゃあ天幕の四隅に飾らない?」
ということで、四隅に飾ったら、ピカッと天幕が光に満たされた。
「ほへ?」
「マージョさん、どうしたの?」
みんなには見えていないっぽい。
「あー、あれだな、祈りを込めた飾りで四隅を囲ったから我々があの範囲でちょっと力が使いやすくなったんだな」
その夜、アーロンが教えてくれた。
「……なんか良いことあるの?」
「……ま、とりあえずあの天幕に入れたものは腐敗しない」
……冷蔵庫か!!
「……まあ、そんなものだと考えてもらっていていい」
……すごい! 食材とか、かなり今のうちに運び込めるではないですか。
アーロン、素晴らしすぎる!
アナスタシア、アーロン、オーロラ、オーブリー! 四柱に栄光あれ!
こんなん、嬉しくて踊るよね!
ちなみにベンさんに頼んでそこに棚を運び込んでもらった。結構色々なものをしまっておけそうだし、床面積が足りなくなりそうな気がするからね。
スタンピードランチまで、あと2日。
ベンさんが、たくさん樽を持ってきてくれた。
「当日水を汲むよりも少しでも今のうちに汲んでおいたほうがいいかと思って……」
本当だ。
パールの出産で、トーマスさんの簡単に使えるポニーがなくなってしまったこともあり、小回りのきく馬車を出してくれるベンさんには感謝しかない。
「力仕事なら手伝いますよ」
ロバートさんと、トーマスさんからも嬉しい申し出があった。
ということで、広場との間を何度も往復する。
食材、燃料の薪、水。そしてランチの後に売るつもりの商品も。
盗まれたら困るから2日ほど私はここで夜営しようかな、と言ったらみんなに全力で止められた。
ギルドが雇ってくれた用心棒のオジサン3人のうちの一人が「じゃあ、オレが泊まるっす」と手を挙げてくれた。
無精ひげでちょっと酒くさいオジサンだ。名前はオーウェン。
なんか、やさぐれた感じの人だけど大丈夫かな?と思ってたらロバートさんが難色を示した。
「ハンナの守りを任せられるオトコだとは思えない……」
ブツブツ言ってたけれど、まあ、ハンナさんが天幕に泊まるわけじゃないから、それは的外れだ。
「ギルドの紹介ですから信用します」
まさかギルドの顔を潰さないですよね? と釘を刺しておく。
「ま、任しとけってお嬢ちゃん」
ヘラヘラと彼は答えた。
スタンピードランチ前日。
準備できるものは全部準備した。
天幕に泊まっていた用心棒のオジサンは、今朝あったら無精髭もなくなって爽やかな壮年男性になっていた。
なんか心境の変化でもあったんだろうか。
もしかしたら昨日あったときは夜勤明けだったとかそんな話なのかもしれない。
トーマスさんや、チャーリーも来てくれて、宿舎でささやかな壮行会をした。今日はこちらに泊まるのだ。
今回、この宿舎はまるまる一棟私達が使わせてもらったのだけれど、今にして思うと、ベンさんや副ギルド長がかなり根回しをしてくれたんじゃないだろうか。
「明日は5時おきでバオを作るよ!」
準備万端だ!
応援ありがとうございます!
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