ドミノ倒し元王太子(22)――元悪役令嬢に仕事をもらったらなんだかどんどん事態が転がるんですけど?

新田 安音(あらた あのん)

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資材部長と元王太子(現甘やかされたボンボン)

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図書室を出たレジナルドは資材部へと向かった。資材部では部長は今家具倉庫にいると教えられ、そちらに向かう。

資材部は日常的に消費される食品を除く王宮内の全ての資材の調達と管理を担当している。
普段はあまりフォーカスされることがないが、災害備蓄などもこの部署の管轄である。


資材部長は四十半ばの、ガタイの良い男だ。短髪で声が大きく、短気な男が多い職場をうまくまとめていた。

レジナルドが倉庫の前で声を掛けると「おう、元殿下か。何の用だ」と 資材部長は汗を拭きながら出てきた。 

「あの、ちょっとお願いがあってきたんです」と レジナルドは口を開く。
「なるほど 」と取材部長は うるさげに首を振る。 裏では男たちが怒鳴り合う声が聞こえた。さっさとしろ、であるとか、丁寧に扱えって言っただろ、だとか、殺気立っている。
「新陛下の別邸の準備で野郎どもが殺気立ってやがるんだ。で、話ってなんだ?」
「あのですね、ちょっとお願いがあるんですが、図書室に納入しているマクマーン紙なんですけど……あれ、きちんと計上してないですよね?」

数年前、資材部の若手が大ポカをやった。上質のマクマーン紙の発注数を間違えて大量に注文してしまったのだ。
その時、責任を取ったのが現資材部長である。
しばらく減俸されることになったように記憶している。

減俸で済んだのは、彼が図書室と掛け合って、「貴重な古書の修復にマクマーン紙が必要だ」と、書いてもらったからだ。
最終的に図書室が数年分の修復予算を前借りする形でカタがついたはずだ。

そこまでだったら悪くない。
むしろ美談だ。

でも、レジナルドは知っていた。すでに、前借り予算分のマクマーン紙は使い切ってしまっていること。
図書室の修復係の若手が、かなりの枚数の紙を計上せずに資材部から譲り受けていることを。そして、資材部の記帳係が帳尻合わせに四苦八苦していることを。

「お前、何をたくらんでる?」
資材部長はギロリとレジナルドをにらんだ。
「何も企んでなんかないですよ。でも、度を越して融通を効かせると記帳係の若手が苦労することになりますってば」
「図書室と何があった?」
「特に何も。ちょっとしたお願いはしましたが」
「……クソが」


え、クソって言いました? 今?
さすがのレジナルドもちょっとあっけにとられた。

「どうせ、女の司書を入れろとかそんな話だったんだろう」
……惜しい。
ちょっとだけずれている。
いずれは女性司書も雇用したいが今の時点では司書に適格な女性はまだ見つかっていない。
「まあ、でも、女性文官は増えたほうが良いですよ。最近のアルディ河川の氾濫の時の事を考えたって、女性が資材部にいたらずいぶん違ったんじゃないですか?」
「ぐ」
資材部長は言葉に詰まった。
新王が即位してすぐの災害で備蓄に問題があると指摘を受けたのだ。
特に問題が指摘されたのが女性の生理関連の備蓄だった。

「まあ、とにかく、頼み事を断られたから嫌がらせをしろみたいな話に手を貸すつもりはない。甘やかされたボンボンに関わってる時間はないんだ」
「嫌がらせではなく、当然のことだと思うんですが、そうですか……」

レジナルドは引き下がることにした。

「後ほど考えが変わるようなことがあったらお知らせ下さい」


甘やかされたボンボンか~。これも、新たな呼び名だな、とレジナルドは興味深く思った。


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