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サイコパスの子供殺しダイアン・ダウンズ事件
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一昔前、シリアルキラーの精神判断で、病死した子供の葬式で母親が好きな男に会った。その数日後、母親はもう一人の我が子を殺した。その理由は何か、というものがあった。
その答えは我が子を殺せば、また葬式であの人に会えるというものであったが、この事件はそれよりもっとひどいものである。
1983年5月19日木曜日、オレゴン州スプリングフィールドでの出来事である。午後10時30分頃、赤いニッサン・パルサーがマッケンジー=ウィラメット病院の救急搬入口前に乗りつけて、間断なくクラクションを鳴らし続けた。駆けつけた看護婦は訊ねた。
「どうしたんですか?」
運転手はジーンズ姿の金髪女性だった。彼女は叫んだ。
「子供たちが撃たれたの!」
車内には3人の子供が横たわっていた。
クリスティー・ダウンズ(8)
シェリル・ダウンズ(7)
ダニー・ダウンズ(3)
シェリルは既に息をしていなかった。クリスティーとダニーはまだ脈があったが瀕死の重傷である。
一方、母親のダイアン・ダウンズはというと、左前腕を撃たれていたが、銃弾は貫通しており、包帯で治療もされていて、命に別状はなかった。
いったい何があったのだろうか?
ダイアンが供述したところによれば、事件の経緯はこのようなものだった。
「それは友達に会いにマーコラに行った帰りのことでした。オールド・モホーク・ロードを走っていると、男が道に立ち、手を振って止まれと合図をしているのが見えました。事故でもあったのかと思って、私は車を停めました。
男は白人で、二十代後半、175cm、70~80kgくらい。黒っぽい、ウェーブのかかったもしゃもしゃの髪で、無精髭をはやしていました。1日か2日剃っていない感じ。リーバイスのジーンズとジャケットと、薄汚れた白いTシャツを着ていました。
私は「どうしたんですか?」と訊ねました。すると、男は近寄って来て「車をよこせ」と脅しました。「冗談じゃないわ」と答えたら、後ろに突き飛ばされました。
それから「バン!」という大きな音が聞こえました。男が子供たちを銃で撃ち始めたのです。私は車のキーを男に差し出し、そして、藪の中に投げるふりをしました。すると男は怒って、私に向けて2発撃ちました。うちの1発が当りました。私は男を突き飛ばして車に飛び乗り、出せるだけのスピードで病院に向かいました」
これが本当ならば、幼気な子供たちに、しかも至近距離から発砲するような狂人が野放しになっていることを意味する。更なる被害を未然に防がなければならない。子供たちの安否は尚も不明のままだが、警官はダイアンに犯行現場まで案内するよう求めた。
パトロール・カーに乗り込む際、ダイアンは自分の車を一瞥して云った。
「私の車、大丈夫かしら。弾の穴が開いてない?」」
我が子が生死を彷徨っているというのに、車の心配をするとは…。いくら新車だとはいえ、神経を疑う一言だった。
ダイアンが特定した犯行現場はオールド・モホーク・ロードでも最も寂しい場所だった。いわゆる田舎道で、街灯などある筈もなく、辺りは藪で囲まれ、近くには川が流れている。いくら制止されたからといって、こんな場所で車を停めるだろうか? 相手は何者か判らないのだ。マトモな母親ならば子供たちのことを案じて、停めることはなかっただろう。
彼女は何かを隠しているのではないだろうか? 若しくは、誰かを庇っているのではないだろうか?
ダイアンが病院に戻ったのは午前12時頃だった。その時に初めてシェリルの死亡を医師から告げられた。彼女の反応は冷静だった。泣き叫ぶでもなく、取り乱すでもなく、かすかに感情の揺れを見せただけだった。そして訊ねた。
「クリスティーは? クリスティーはどうなの?」
医師は答えた。
「まだ危険な状態ですが、最善を尽くしています。それから、ダニーについては安心して下さい。助かるでしょう」
これを受けて、ダイアンはこのように訊ね返した。
「つまり、心臓はそれたんですね?」
母親ならば、その前に安堵のため息をつくべきだろう。
この時点で病院関係者はダイアンへの疑惑の念を深めていた。
とにかく、ダイアン・ダウンズについて調べる必要があった。いったいどんな女なのか? 銃を持った狂人が実在するのならば、彼女とはどういう関係なのか? 全くの行きずりなのか、それとも知り合いなのか? 捜査官は彼女の同意を得て、居所を捜索することにした。
ダイアンは極めて協力的だった。「犯人を逮捕するためなら」と同意書に進んでサインした。但し、その際に捜査官にこのように訊ねている。
「これって容疑者にサインさせるもの?」
彼女には自分が容疑者である自覚が既にあったのだ。
ダイアンがオレゴン州スプリングフィールドに引っ越してきたのは、つい6週間ほど前のことだった。
それまでは故郷のアリゾナ州チャンドラーで暮らしていた。18歳の時に同級生のスティーヴ・ダウンズと結婚し、3児をもうけるも1981年に離婚。それはダニーが生まれた1年後のことだった。
ダイアンの父親はスプリングフィールドの郵便局長だった。彼女はそのコネで、チャンドラーでも、スプリングフィールドでも、郵便集配員としての職を得ていた。
その居所を捜索した捜査官は、室内に殆ど何もないことに驚いた。引っ越して来たばかりという印象だ。居間には椅子が1つとテレビがあるだけ。生活の匂いが感じられなかった。
テレビの上には写真立てが4つ並んでいた。2つはダイアン自身の写真。あとの2つは男の写真だ。
捜査官はダイアンの左肩の後ろにあった赤い薔薇の刺青を思い出した。その下には「ルー」という男の名が彫られていたのだ。
この男がルーなのだろうか?
ちなみに、子供たちの写真はどこにも飾られていなかった。
それどころか家族写真もない。そんなことが可愛いさかりの子供たちを相手にありうるだろうか?
やがて捜査官はダイアンの日記を発見した。記述は手紙形式で、殆どが「親愛なるルー」で始まっている。薔薇の刺青に添えられていた男の名前だ。この男がキー・パーソンなのかも知れないと警察はこの男の身柄を追った。
一方、ダイアンはというと、病室のベッドの上でまんじりともせずに朝を迎えていた。
そして、午前7時の時報と同時にベッドの脇にある受話器を手に取り、チャンドラー郵便局に電話を掛けた。かつての勤務先だ。アリゾナ州では午前8時で、この時間にチャンドラー郵便局に電話を掛けるのは、スプリングフィールドに引っ越してからの彼女に日課になっていた。
「こちら、チャンドラー郵便局です」
電話に出たのはいつものように、親友のカレン・バッテンだった。
「カレン? ダイアンよ。大変なことがあったの」
「何があったの?」
「子供たちが撃たれたの。シェリルが死んで…。私も撃たれたのよ」
カレンは息を呑み、その場に泣き崩れた。そして、傍らにいる同僚の男の顔を見上げた。その男こそ「薔薇の刺青に名前を添えられた男」、ルー・ルイストンだった。
ルーはこれまで郵便局の全員に、ダイアンからの電話を取り次がないように頼んでいた。それでも彼女は毎朝8時に必ず電話を掛けて来る。いい加減、勘弁してくれよという心境だったが、今日ばかりはそうは行かないようだ。カレンが目の前で泣き崩れている。
「ルー、電話に出てあげて、お願いだから」
カレンが差し出した受話器を受け取り、耳にあてると、あの忌まわしき女の声が聞こえて来た。
「もしもし、ルー。調子はどう? 元気なの? あなた、しあわせ?」
ちっ。何なんだよ、この問いかけは? 彼は応えた。
「どうした、ダイアン? 何があったんだ? カレンが泣いてるぞ」
ダイアンは事件のあらましを語った。ルーは震え上がった。この女、殺人事件をでっち上げて、俺の関心を引こうとしているんじゃなかろうか? だが、そんな本音は直接云えない。見舞いに行く旨を伝えて、病室の番号を聞き出すと、彼女の口からこんな一言が飛び出した。
「愛してるわ、ルー」
しかしそんな愛の言葉はルーを震え上がらせるだけだった。
間もなく、知らせを受けたダイアンの元夫、スティーヴ・ダウンズが病院に駆けつけた。
彼はもうダイアンには未練がないようだった。それでも子供がいる関係上、連絡はまめに取り合っていた。ルーのことも知っていた。ダイアンはかなりのぼせ上がっていたようだ。
彼女が銃を持っているかと捜査官が訊ねると、このように答えた。
「3つ持っています。22口径のライフルと、38口径のリボルバー、それと22口径のルガーです」
22口径のライフルはダイアン宅捜索の際に既に押収されていたが、他の2つは見つかっていない。ちなみに、事件に用いられた凶器は22口径だった。
事件翌日の午後、クリスティーは奇跡的に回復に向かいつつあった。まだ意識はなかったが、とにかく命だけは取り留めたのだ。その晩、ダイアンが初めて娘がいる集中治療室に訪れた。彼女はクリスティーの手を取り、その耳元で何度も何度も同じ言葉を繰り返した。
「クリスティー、愛してるわ…愛してるわ…愛してるわ」
その時、同席していた看護婦はクリスティーの心拍数が急上昇したのを確認した。それまでは毎分104だったのが148に跳ね上がったのだ。
クリスティーは母親に対し沈黙を守った。
事件の1週間後、アリゾナ州チャンドラーに出向いた捜査官はルー・ルイストンに出頭を求めた。この時点では彼は容疑者の一人だった。
出頭に応じたルーは、どういうわけか妻のノラを伴っていた。これではあからさまなことは訊きにくい。
「奥さんは外で待たれてはいかがですか?」
ルーはかぶりを振った。
「いや、いいんです。妻は何もかも知っていますから。いてもらった方がいいんです」
つまり、ノラは夫がダイアンと情事を重ねていたことを知っていて、そのことを許していたのだ。
ルーとダイアンが初めて出会ったのは1981年11月のことだった。ルーの勤務先であるチャンドラー郵便局でダイアンが働き始めたのだ。
「当時の彼女は妊娠中でした」
「えっ? でも、その子は…」
「代理出産です。子供が出来ない夫婦のために身籠っていたのです」
こいつは初耳だ。ダイアンはダニーの後にもう一人子供を産んでいたのだ。ちなみに、その報酬は1万ドルだったという。
「彼女との関係が始まったのは出産後、1982年7月頃からでした。私は最初から遊びのつもりでしたし、彼女にもそう伝えていました。彼女も次の代理出産のことを考えていたので、男と永続的な関係を持つことに興味がないのだろうと思っていました」
ところが、そうではなかった。関係が深まるにつれ、ダイアンがルーと結婚することを熱望し始めたのだ。
「私は妻と別れるつもりはありません。それに子供も望みません。私は21歳の時にパイプカットしています。子供は好きですが、父親にはなりたくなかったのです」
事件の核心に迫る重要な供述である。つまり、ルーとの結婚を熱望するダイアンにとって、子供たちは邪魔者だったのだ。
「妻に打ち明けたのは9月12日、私の誕生日です」
その3日前、ダイアンは2回目の代理出産のためにケンタッキー州ルイヴィルのクリニックに旅立っていたが、その際にルーは「あなたに性病をうつされた」と彼女から責められたという。しかし、ルーには何の症状もなかったし、ダイアンとノラ以外の女性とは肉体関係を持っていなかった。
「ノラを守るためには、打ち明けるしかなかったんです。大変なことになるとは思いましたけど」
ノラは夫の浮気を以前から気づいていた。
「ルーは全てを話してくれました。性病に罹っているかも知れないことも…。この人の誕生日なのに病院に行かなければならないなんて…。なんとか云う長い名前の感染症に罹っているとかで、性行為で感染する病気でした」
感染させたのはダイアンだろう。彼女はその夏、少なくとも4人の男と寝ていたのだ。そして、性病のことをルーに告げることで、ノラとの関係が破綻することを期待したのだ。
2回目の代理出産を急いだのは、少しでも早く報酬の1万ドルが欲しかったからだろう。それを頭金にして、子供がいても邪魔にならないような大きな家を買い、ルーと暮らすことを夢見ていたに違いない。
しかし、その夢は叶わなかった。ノラは寛容にもルーを許し、離婚には至らなかった。そして、ダイアンも代理母として妊娠することに失敗してしまったのだ。
「恥ずかしながら、二人の関係はその後も続きました。職場が一緒だったのです。誘惑を断つのは難しいことでした」
密会場所はルーが借りた安アパートだった。
ダイアンが左肩に薔薇の刺青を入れたのはこの頃のことだ。わざわざルーの筆跡を真似て「ルー」と彫らせたのだという。いわば「私はあなたのものよ」という証しである。しかし、そんなものを見せられてもルーは不快になるばかりだった。
「あれは1983年2月下旬のことです。彼女がどっちを愛しているのか、私かノラかと詰め寄るんです。ノラだと答えると、激怒して、怒鳴りちらし、わめきちらし、がなりたてた。キレたというか。あんなの生まれて初めて見ましたね」
あまりのことにルーはアパートを飛び出して帰宅した。
「彼女は一晩中、うちのドアを叩いていました。もちろん、私たちは出ませんでした。すると、今度は電話攻撃です」
翌朝、ダイアンは再び現れた。制服姿だった。ルイストン家の郵便物は彼女の受け持ちだったのだ。この時はノラが応対した。
「ダイアンは私に、結婚のことや夫との関係や、ありとあらゆることをああしろこうしろと命令し出したんです。私もカッとなりました。ルーをここまで痛めつけるなんて。いつもは汚い言葉なんか使わないんですけど、その時は『うせろ!』と怒鳴って、彼女の目の前でドアをバタンと閉めてしまいました」
ダイアンの振る舞いに嫌気が差した夫妻は、ルーの故郷であるテキサスに退避した。
「引っ越したわけじゃないんです。2週間、休暇を取って。すると或る晩、友人宅で食事をしていたら電話が掛かってきたんです、ダイアンから。どうして電話番号が判ったんだと訊くと、暗記していたと。どこで見たんだと訊いても黙っていました。おそらく、私が寝ている間に財布の中身を調べてメモっていたのでしょう」
ルーが妻と共にテキサスに逃げたことは、ダイアンにとってかなりのショックだったようだ。このままでは彼は二度と自分のところに戻って来ないと悟ったのだろう。
間もなく、彼女はオレゴン州への転出希望を提出した。上司は喜んで受け入れた。彼女の素行の悪さは局内では知れ渡っていたのだ。
「彼女の希望は通って、4月から移ることになりました。ダイアンはテキサスにいる私のところに電話してきて「あなたは職場を変える必要はない。自分がオレゴンに行くから」と云うんです。まるで脅迫されているようでした。
しかし、後ろめたさを感じていたルーは「オレゴンに移るまでの間、一緒にいて?」というダイアンの要求に応じてしまう。そして、左腕に薔薇の刺青を入れることにも応じてしまう。ルーはそれを捜査官に見せて云った。
「でも、この下に「ダイアン」の名を彫る勇気はありませんでしたよ」
ルーに薔薇の刺青を入れさせた時点でダイアンは「勝った!」と思ったのだろう。後は仕上げを御覧じろってな心境だったのではないか。しかし、実際にはそうではなかった。ダイアンがオレゴン州に移ってからは、ルーは彼女からの郵便や電話の一切を拒絶したのだ。
「ノラと離婚して、郵便局もやめてオレゴンに行くほど、ダイアンのことは愛していないことが判っていたからです」
最後に捜査官が訊ねた。
「あなたが知る範囲で、ダイアンは銃を持っていましたか?」
「オレゴンに行く直前、22口径のルガーを車のトランクに積み込んでいました」
大事なことなのでもう一度云う、子供たちの命を狙ったのは、22口径の銃だった。そして、その銃を母親は持っていたのだ。
「私はダイアンが子供たちを撃ったのだと思っています。私のせいです」
そうなのかも知れない。ルーは明らかに脅えていた。自分に危害が及ぶことではなく、妻ノラに危害が及ぶことを恐れていたのだ。
間もなく鑑識が重大な事実を発見した。ダイアンの居所から押収された22口径ライフルから取り出されたカートリッジのいくつかが、子供たちを撃った銃に一度装填されたものであることが判明したのである。
エキストラクターの痕が、犯行現場で押収されたカートリッジのそれと同じだったのだ。ダイアンが所持していた行方不明のルガーが凶器と見て、まず間違いないだろう。
つまり、ダイアン・ダウンズという女は、愛人の心を取り戻すために、幼き我が子の命を生け贄として悪魔に捧げたのである。捜査官は震え上がった。そんなことがあり得るのだろうか?
「あり得たのだから仕方がない」としか云いようがない。しかし、世間はそんな不条理を認めたくなかった。6月に入って「ダイアン・ダウンズ容疑者説」が報道され始めると、 多くの市民が怒りをあらわにした。
「子供が殺されてるんだぞ! その母親を疑うとは世も末だ!」
その通りなのだが、実際のダイアン・ダウンズという人物が「世も末」のような困ったちゃんなのだ。数々の聞き込みによれば、誰とでも寝る、子供はネグレクト、性病なのに代理母になろうとする、挙げ句の果てに違法な代理母クリニックを作ろうとするというめっちゃくちゃな人物なのである。
6月13日になって、新たな情報提供者が現れた。5月19日、つまり犯行があった晩にオールド・モホーク・ロードで赤いニッサン・パルサーを目撃した人物だった。
「2、3分、その車の後ろを走りました。ノロノロしているので、道に迷っているんじゃないかと思いました」
余りにもノロノロしているので、彼はこの車を追い越したわけだが、これが事実ならば、ダイアンの「車に飛び乗り、出せるだけのスピードで病院に向かいました」との供述は嘘ということになる。彼女は子供たちが死ぬことを願って、ノロノロと運転していたのである。
しかし、それでも捜査官たちはダイアン逮捕に踏み切れないでいた。すべてが状況証拠だったのだ。有罪に持ち込めるだけの確証がなかったのである。
唯一の頼みはクリスティーだった。彼女は母親の犯行を目撃していた可能性がある。しかし、事件のトラウマのために話すことが出来なくなっていた。心を閉ざしてしまったのだ。
事件後は子供たちの親権は父親のスティーヴ・ダウンズが引き継いだ。ダイアンには面会することさえさえ認められなかった。それでも一度だけ、ダイアンが強引にクリスティーに会ったことがある。
――その晩、クリスティーは脅えていたという。彼女は知っているのだ。母親が鬼畜だということを。
ダイアンがようやく逮捕されたのは1984年2月28日のことだった。クリスティーがどうにか話せるまでに回復したのだ。彼女の証言がダイアンを有罪に出来るか否かの鍵だった。しかし、鬼畜の母親を目の前にして、彼女はきちんと話せるだろうか? 検事はクリスティーとまめに面会し、信頼関係を築くことに専念した。
法廷にはポータブル・デッキが持ち込まれ、デュラン・デュランの「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」が大音響で再生された。それはダイアンのお気に入りの曲で、犯行時にカー・ステレオから流れていた曲だった。
本当にダイアンが被害者で、真犯人が別にいるのならば、彼女はこの曲を涙ながらには聴けない筈だ。ところが、被告席の彼女はリズムに合わせて足踏みし、指を鳴らしていたのだ。サビの部分では「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」と口を動かしていた。検事はその姿を目にして呆れ返った。
容疑者としても、母親としても、人間としても明らかに常識外の行動であった。。
陪審員たちもその様に呆れ返っていた。やがて気づいた弁護人が制止した。これはダイアンにとって大失点だった。
そして、いよいよクリスティーが証言台に立った。検事は訊ねた。
「気分はどう? 大丈夫?」
彼女は頷いた。
「これからここにいるみんなの前で話さなければならないんだよ。まず、名前を云ってくれる?」
「クリスティー・アン・ダウンズです」
「歳はいくつ?」
「9歳です」
「法廷では本当のことを云わなくちゃいけないことは知ってるよね?」
「はい」
「本当のことを云うって約束する?」
「はい」
「君が撃たれた日、君は学校に行って、それから帰って来た。思い出せる?」
「はい」
「誰の家に帰ったの?」
「おじいちゃんとおばあちゃんの」
「そこでご飯を食べたの?」
「はい」
ダイアンの家に何もなかったのはこういうわけだったのだ。子供たちは事実上、ダイアンの両親が養っていたのだ。
「その後、車で外に出掛けた?」
「はい」
「他には誰が一緒だった?」
「ママと、シェリルと、ダニーが一緒でした」
「何処に行ったの?」
「ママのお友達の家です」
「そこで何をしたの?」
「馬と遊びました」
「その家を出た時には明るかった? それとも暗かった?」
「暗かったです」
「車の中で音楽が鳴っていたか憶えてる?」
「はい」
「それはラジオ? それともテープ?」
「テープです」
「それから、車が停まった時があったね? 憶えてる?」
「はい」
「車が停まった時、近くには誰か他にいたかな?」
「いいえ」
「車が停まってから、ママはどうしたの?」
「車から降りて、トランクのレバーを引きました」
「その後、ママが何をしているのか見えた?」
「いいえ。後ろは見ませんでした」
「音楽はまだ鳴っていた?」
「はい」
「それは『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』だった?」
「はい」
「その後、何があったの?」
「ママが戻って来て…」
「そして、どうしたの?」
「シェリルを撃ちました」
「それから?」
「ママは後ろのシートに乗り出して、ダニーを撃ちました」
クリスティーはこらえ切れずに泣き出した。
「君が撃たれた時のことは憶えている?」
「はい」
「誰が君を撃ったの?」
「ママです」
「ママのことを今でも愛してる?」
「はい」
この一言に法廷にいる多くの人々が涙を流した。
クリスティーの証言は決定的だった。何しろ母親の目の前で、自分を撃ったのは母親であることを涙ながらに語ったのである。これを反証するのは容易ではない。
また、クリスティーの証言は、ダイアンの供述に嘘があることを示唆していた。ダイアンはこれまでに何度も「車のキーを男に差し出し、薮の中に投げるふりをした」と供述していた。そうすることで犯人の気を逸らし、逃げることが出来たのだと。ところが、キーを抜いた状態ではカー・ステレオは作動しないのだ。クリスティーが撃たれた時に『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』が流れていたならば、キーは抜かれていなかったのである。
『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』はまるでダイアン自身のテーマ・ソングのようだ。
「地面を這い、狩りの構えで君の後を追う。私は狼のように飢えている」
ルー・ルイストンを追い求める雌狼は、如何なる代償をも厭わなくなっていたのだ。
「車が停まりました。路上に男はいませんでした。カー・ステレオからは『ハングリー・ライク・ア・ウルフ』が流れていました。皆さんが当法廷で聴いたあの曲です。クリスティーは撃たれた時にあの曲が流れていたと証言し、被告もそのことを認めました。このことはつまり、車のキーが抜かれていなかったことを意味します。抜いてしまえばカー・ステレオは作動しないからです。そして、抜かれていなかったということは、被告の『キーを男に差し出した』との供述は嘘ということになります。
車を停めた被告はドアを開けました。そして、レバーを引いてトランクを開けました。彼女は車の後部に回りました。トランクの中には22口径のルガーが入っていました。
助手席にはシェリルがいました。被告はまず彼女の胸を撃ちました。シェリルは反射的にドアを開けて逃げ出そうとしました。しかし、叶わずにその場に崩れ落ちました。
次いで被告は後部座席に目を向けました。右側にはダニーが俯せで寝ていました。被告はその背中を撃ちました。
左側にはクリスティーがいました。彼女は母親のことを今でも愛していると証言しました。彼女は妹と弟を撃った母親のことをどのように思っていたのでしょうか? そして、今は自分に銃を向けています。被告はためらうことなくクリスティーの胸を撃ちました。
『ママ、やめて!』
彼女は銃を掴みました。被告は再び銃を撃ちました。クリスティーは動かなくなりました。
一方、シェリルは車の外でもがいていました。被告は彼女の背中を撃ちました。その後、被告は自らの左前腕を撃ち抜き、タオルで止血して病院に向かったのです」
以上はシェリルだけが胸と背中を撃たれていることに基づく推理である。凶器のルガーは遂に発見されなかったが、おそらく近くの川に捨てたのだろう。
ダイアンは自分には止血していたが、子供たちには何もしていなかった。出血するがままだ。そして「出せるだけのスピード」どころか、ノロノロと病院に向かったのである。おそらく『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』を口ずさみながら。
ダイアンの人格に問題があることは明らかだった。それは12歳の時から父親に性的虐待されていたことに起因するのかも知れない。
そして、自分が親になった時に子供たちを虐待する。いわば「虐待の連鎖」だ。
だが、このたびの虐待は度を越えている。彼女は銃で殺そうとしたのだ。まだ幼い我が子たちを。性的虐待が事実なら同情の余地がないでもないが、だからと云って彼女の犯行を正当化出来るものではない。
かくして陪審員は1件の殺人と2件の殺人未遂について有罪を評決した。ダイアンに科されたのは終身刑だった。1984年6月17日のことである。
生き残ったクリスティーとダニーは、事件を担当した検事フレッド・ヒューギに引き取られた。
なんとダイアン・ダウンズは判決の10日後、1984年6月27日に無事、女児を出産した。そして、1987年6月11日に矯正施設から脱走した。逮捕されたのは10日後の6月21日のことだ。脱走した理由を「真犯人を見つけたかったから」だと語っているが、信じる者は誰もいなかった。
「子供を殺して彼と結婚できるなら、何回だって殺してやるわ」
きっと彼女はそう信じているに違いないのだから。
その答えは我が子を殺せば、また葬式であの人に会えるというものであったが、この事件はそれよりもっとひどいものである。
1983年5月19日木曜日、オレゴン州スプリングフィールドでの出来事である。午後10時30分頃、赤いニッサン・パルサーがマッケンジー=ウィラメット病院の救急搬入口前に乗りつけて、間断なくクラクションを鳴らし続けた。駆けつけた看護婦は訊ねた。
「どうしたんですか?」
運転手はジーンズ姿の金髪女性だった。彼女は叫んだ。
「子供たちが撃たれたの!」
車内には3人の子供が横たわっていた。
クリスティー・ダウンズ(8)
シェリル・ダウンズ(7)
ダニー・ダウンズ(3)
シェリルは既に息をしていなかった。クリスティーとダニーはまだ脈があったが瀕死の重傷である。
一方、母親のダイアン・ダウンズはというと、左前腕を撃たれていたが、銃弾は貫通しており、包帯で治療もされていて、命に別状はなかった。
いったい何があったのだろうか?
ダイアンが供述したところによれば、事件の経緯はこのようなものだった。
「それは友達に会いにマーコラに行った帰りのことでした。オールド・モホーク・ロードを走っていると、男が道に立ち、手を振って止まれと合図をしているのが見えました。事故でもあったのかと思って、私は車を停めました。
男は白人で、二十代後半、175cm、70~80kgくらい。黒っぽい、ウェーブのかかったもしゃもしゃの髪で、無精髭をはやしていました。1日か2日剃っていない感じ。リーバイスのジーンズとジャケットと、薄汚れた白いTシャツを着ていました。
私は「どうしたんですか?」と訊ねました。すると、男は近寄って来て「車をよこせ」と脅しました。「冗談じゃないわ」と答えたら、後ろに突き飛ばされました。
それから「バン!」という大きな音が聞こえました。男が子供たちを銃で撃ち始めたのです。私は車のキーを男に差し出し、そして、藪の中に投げるふりをしました。すると男は怒って、私に向けて2発撃ちました。うちの1発が当りました。私は男を突き飛ばして車に飛び乗り、出せるだけのスピードで病院に向かいました」
これが本当ならば、幼気な子供たちに、しかも至近距離から発砲するような狂人が野放しになっていることを意味する。更なる被害を未然に防がなければならない。子供たちの安否は尚も不明のままだが、警官はダイアンに犯行現場まで案内するよう求めた。
パトロール・カーに乗り込む際、ダイアンは自分の車を一瞥して云った。
「私の車、大丈夫かしら。弾の穴が開いてない?」」
我が子が生死を彷徨っているというのに、車の心配をするとは…。いくら新車だとはいえ、神経を疑う一言だった。
ダイアンが特定した犯行現場はオールド・モホーク・ロードでも最も寂しい場所だった。いわゆる田舎道で、街灯などある筈もなく、辺りは藪で囲まれ、近くには川が流れている。いくら制止されたからといって、こんな場所で車を停めるだろうか? 相手は何者か判らないのだ。マトモな母親ならば子供たちのことを案じて、停めることはなかっただろう。
彼女は何かを隠しているのではないだろうか? 若しくは、誰かを庇っているのではないだろうか?
ダイアンが病院に戻ったのは午前12時頃だった。その時に初めてシェリルの死亡を医師から告げられた。彼女の反応は冷静だった。泣き叫ぶでもなく、取り乱すでもなく、かすかに感情の揺れを見せただけだった。そして訊ねた。
「クリスティーは? クリスティーはどうなの?」
医師は答えた。
「まだ危険な状態ですが、最善を尽くしています。それから、ダニーについては安心して下さい。助かるでしょう」
これを受けて、ダイアンはこのように訊ね返した。
「つまり、心臓はそれたんですね?」
母親ならば、その前に安堵のため息をつくべきだろう。
この時点で病院関係者はダイアンへの疑惑の念を深めていた。
とにかく、ダイアン・ダウンズについて調べる必要があった。いったいどんな女なのか? 銃を持った狂人が実在するのならば、彼女とはどういう関係なのか? 全くの行きずりなのか、それとも知り合いなのか? 捜査官は彼女の同意を得て、居所を捜索することにした。
ダイアンは極めて協力的だった。「犯人を逮捕するためなら」と同意書に進んでサインした。但し、その際に捜査官にこのように訊ねている。
「これって容疑者にサインさせるもの?」
彼女には自分が容疑者である自覚が既にあったのだ。
ダイアンがオレゴン州スプリングフィールドに引っ越してきたのは、つい6週間ほど前のことだった。
それまでは故郷のアリゾナ州チャンドラーで暮らしていた。18歳の時に同級生のスティーヴ・ダウンズと結婚し、3児をもうけるも1981年に離婚。それはダニーが生まれた1年後のことだった。
ダイアンの父親はスプリングフィールドの郵便局長だった。彼女はそのコネで、チャンドラーでも、スプリングフィールドでも、郵便集配員としての職を得ていた。
その居所を捜索した捜査官は、室内に殆ど何もないことに驚いた。引っ越して来たばかりという印象だ。居間には椅子が1つとテレビがあるだけ。生活の匂いが感じられなかった。
テレビの上には写真立てが4つ並んでいた。2つはダイアン自身の写真。あとの2つは男の写真だ。
捜査官はダイアンの左肩の後ろにあった赤い薔薇の刺青を思い出した。その下には「ルー」という男の名が彫られていたのだ。
この男がルーなのだろうか?
ちなみに、子供たちの写真はどこにも飾られていなかった。
それどころか家族写真もない。そんなことが可愛いさかりの子供たちを相手にありうるだろうか?
やがて捜査官はダイアンの日記を発見した。記述は手紙形式で、殆どが「親愛なるルー」で始まっている。薔薇の刺青に添えられていた男の名前だ。この男がキー・パーソンなのかも知れないと警察はこの男の身柄を追った。
一方、ダイアンはというと、病室のベッドの上でまんじりともせずに朝を迎えていた。
そして、午前7時の時報と同時にベッドの脇にある受話器を手に取り、チャンドラー郵便局に電話を掛けた。かつての勤務先だ。アリゾナ州では午前8時で、この時間にチャンドラー郵便局に電話を掛けるのは、スプリングフィールドに引っ越してからの彼女に日課になっていた。
「こちら、チャンドラー郵便局です」
電話に出たのはいつものように、親友のカレン・バッテンだった。
「カレン? ダイアンよ。大変なことがあったの」
「何があったの?」
「子供たちが撃たれたの。シェリルが死んで…。私も撃たれたのよ」
カレンは息を呑み、その場に泣き崩れた。そして、傍らにいる同僚の男の顔を見上げた。その男こそ「薔薇の刺青に名前を添えられた男」、ルー・ルイストンだった。
ルーはこれまで郵便局の全員に、ダイアンからの電話を取り次がないように頼んでいた。それでも彼女は毎朝8時に必ず電話を掛けて来る。いい加減、勘弁してくれよという心境だったが、今日ばかりはそうは行かないようだ。カレンが目の前で泣き崩れている。
「ルー、電話に出てあげて、お願いだから」
カレンが差し出した受話器を受け取り、耳にあてると、あの忌まわしき女の声が聞こえて来た。
「もしもし、ルー。調子はどう? 元気なの? あなた、しあわせ?」
ちっ。何なんだよ、この問いかけは? 彼は応えた。
「どうした、ダイアン? 何があったんだ? カレンが泣いてるぞ」
ダイアンは事件のあらましを語った。ルーは震え上がった。この女、殺人事件をでっち上げて、俺の関心を引こうとしているんじゃなかろうか? だが、そんな本音は直接云えない。見舞いに行く旨を伝えて、病室の番号を聞き出すと、彼女の口からこんな一言が飛び出した。
「愛してるわ、ルー」
しかしそんな愛の言葉はルーを震え上がらせるだけだった。
間もなく、知らせを受けたダイアンの元夫、スティーヴ・ダウンズが病院に駆けつけた。
彼はもうダイアンには未練がないようだった。それでも子供がいる関係上、連絡はまめに取り合っていた。ルーのことも知っていた。ダイアンはかなりのぼせ上がっていたようだ。
彼女が銃を持っているかと捜査官が訊ねると、このように答えた。
「3つ持っています。22口径のライフルと、38口径のリボルバー、それと22口径のルガーです」
22口径のライフルはダイアン宅捜索の際に既に押収されていたが、他の2つは見つかっていない。ちなみに、事件に用いられた凶器は22口径だった。
事件翌日の午後、クリスティーは奇跡的に回復に向かいつつあった。まだ意識はなかったが、とにかく命だけは取り留めたのだ。その晩、ダイアンが初めて娘がいる集中治療室に訪れた。彼女はクリスティーの手を取り、その耳元で何度も何度も同じ言葉を繰り返した。
「クリスティー、愛してるわ…愛してるわ…愛してるわ」
その時、同席していた看護婦はクリスティーの心拍数が急上昇したのを確認した。それまでは毎分104だったのが148に跳ね上がったのだ。
クリスティーは母親に対し沈黙を守った。
事件の1週間後、アリゾナ州チャンドラーに出向いた捜査官はルー・ルイストンに出頭を求めた。この時点では彼は容疑者の一人だった。
出頭に応じたルーは、どういうわけか妻のノラを伴っていた。これではあからさまなことは訊きにくい。
「奥さんは外で待たれてはいかがですか?」
ルーはかぶりを振った。
「いや、いいんです。妻は何もかも知っていますから。いてもらった方がいいんです」
つまり、ノラは夫がダイアンと情事を重ねていたことを知っていて、そのことを許していたのだ。
ルーとダイアンが初めて出会ったのは1981年11月のことだった。ルーの勤務先であるチャンドラー郵便局でダイアンが働き始めたのだ。
「当時の彼女は妊娠中でした」
「えっ? でも、その子は…」
「代理出産です。子供が出来ない夫婦のために身籠っていたのです」
こいつは初耳だ。ダイアンはダニーの後にもう一人子供を産んでいたのだ。ちなみに、その報酬は1万ドルだったという。
「彼女との関係が始まったのは出産後、1982年7月頃からでした。私は最初から遊びのつもりでしたし、彼女にもそう伝えていました。彼女も次の代理出産のことを考えていたので、男と永続的な関係を持つことに興味がないのだろうと思っていました」
ところが、そうではなかった。関係が深まるにつれ、ダイアンがルーと結婚することを熱望し始めたのだ。
「私は妻と別れるつもりはありません。それに子供も望みません。私は21歳の時にパイプカットしています。子供は好きですが、父親にはなりたくなかったのです」
事件の核心に迫る重要な供述である。つまり、ルーとの結婚を熱望するダイアンにとって、子供たちは邪魔者だったのだ。
「妻に打ち明けたのは9月12日、私の誕生日です」
その3日前、ダイアンは2回目の代理出産のためにケンタッキー州ルイヴィルのクリニックに旅立っていたが、その際にルーは「あなたに性病をうつされた」と彼女から責められたという。しかし、ルーには何の症状もなかったし、ダイアンとノラ以外の女性とは肉体関係を持っていなかった。
「ノラを守るためには、打ち明けるしかなかったんです。大変なことになるとは思いましたけど」
ノラは夫の浮気を以前から気づいていた。
「ルーは全てを話してくれました。性病に罹っているかも知れないことも…。この人の誕生日なのに病院に行かなければならないなんて…。なんとか云う長い名前の感染症に罹っているとかで、性行為で感染する病気でした」
感染させたのはダイアンだろう。彼女はその夏、少なくとも4人の男と寝ていたのだ。そして、性病のことをルーに告げることで、ノラとの関係が破綻することを期待したのだ。
2回目の代理出産を急いだのは、少しでも早く報酬の1万ドルが欲しかったからだろう。それを頭金にして、子供がいても邪魔にならないような大きな家を買い、ルーと暮らすことを夢見ていたに違いない。
しかし、その夢は叶わなかった。ノラは寛容にもルーを許し、離婚には至らなかった。そして、ダイアンも代理母として妊娠することに失敗してしまったのだ。
「恥ずかしながら、二人の関係はその後も続きました。職場が一緒だったのです。誘惑を断つのは難しいことでした」
密会場所はルーが借りた安アパートだった。
ダイアンが左肩に薔薇の刺青を入れたのはこの頃のことだ。わざわざルーの筆跡を真似て「ルー」と彫らせたのだという。いわば「私はあなたのものよ」という証しである。しかし、そんなものを見せられてもルーは不快になるばかりだった。
「あれは1983年2月下旬のことです。彼女がどっちを愛しているのか、私かノラかと詰め寄るんです。ノラだと答えると、激怒して、怒鳴りちらし、わめきちらし、がなりたてた。キレたというか。あんなの生まれて初めて見ましたね」
あまりのことにルーはアパートを飛び出して帰宅した。
「彼女は一晩中、うちのドアを叩いていました。もちろん、私たちは出ませんでした。すると、今度は電話攻撃です」
翌朝、ダイアンは再び現れた。制服姿だった。ルイストン家の郵便物は彼女の受け持ちだったのだ。この時はノラが応対した。
「ダイアンは私に、結婚のことや夫との関係や、ありとあらゆることをああしろこうしろと命令し出したんです。私もカッとなりました。ルーをここまで痛めつけるなんて。いつもは汚い言葉なんか使わないんですけど、その時は『うせろ!』と怒鳴って、彼女の目の前でドアをバタンと閉めてしまいました」
ダイアンの振る舞いに嫌気が差した夫妻は、ルーの故郷であるテキサスに退避した。
「引っ越したわけじゃないんです。2週間、休暇を取って。すると或る晩、友人宅で食事をしていたら電話が掛かってきたんです、ダイアンから。どうして電話番号が判ったんだと訊くと、暗記していたと。どこで見たんだと訊いても黙っていました。おそらく、私が寝ている間に財布の中身を調べてメモっていたのでしょう」
ルーが妻と共にテキサスに逃げたことは、ダイアンにとってかなりのショックだったようだ。このままでは彼は二度と自分のところに戻って来ないと悟ったのだろう。
間もなく、彼女はオレゴン州への転出希望を提出した。上司は喜んで受け入れた。彼女の素行の悪さは局内では知れ渡っていたのだ。
「彼女の希望は通って、4月から移ることになりました。ダイアンはテキサスにいる私のところに電話してきて「あなたは職場を変える必要はない。自分がオレゴンに行くから」と云うんです。まるで脅迫されているようでした。
しかし、後ろめたさを感じていたルーは「オレゴンに移るまでの間、一緒にいて?」というダイアンの要求に応じてしまう。そして、左腕に薔薇の刺青を入れることにも応じてしまう。ルーはそれを捜査官に見せて云った。
「でも、この下に「ダイアン」の名を彫る勇気はありませんでしたよ」
ルーに薔薇の刺青を入れさせた時点でダイアンは「勝った!」と思ったのだろう。後は仕上げを御覧じろってな心境だったのではないか。しかし、実際にはそうではなかった。ダイアンがオレゴン州に移ってからは、ルーは彼女からの郵便や電話の一切を拒絶したのだ。
「ノラと離婚して、郵便局もやめてオレゴンに行くほど、ダイアンのことは愛していないことが判っていたからです」
最後に捜査官が訊ねた。
「あなたが知る範囲で、ダイアンは銃を持っていましたか?」
「オレゴンに行く直前、22口径のルガーを車のトランクに積み込んでいました」
大事なことなのでもう一度云う、子供たちの命を狙ったのは、22口径の銃だった。そして、その銃を母親は持っていたのだ。
「私はダイアンが子供たちを撃ったのだと思っています。私のせいです」
そうなのかも知れない。ルーは明らかに脅えていた。自分に危害が及ぶことではなく、妻ノラに危害が及ぶことを恐れていたのだ。
間もなく鑑識が重大な事実を発見した。ダイアンの居所から押収された22口径ライフルから取り出されたカートリッジのいくつかが、子供たちを撃った銃に一度装填されたものであることが判明したのである。
エキストラクターの痕が、犯行現場で押収されたカートリッジのそれと同じだったのだ。ダイアンが所持していた行方不明のルガーが凶器と見て、まず間違いないだろう。
つまり、ダイアン・ダウンズという女は、愛人の心を取り戻すために、幼き我が子の命を生け贄として悪魔に捧げたのである。捜査官は震え上がった。そんなことがあり得るのだろうか?
「あり得たのだから仕方がない」としか云いようがない。しかし、世間はそんな不条理を認めたくなかった。6月に入って「ダイアン・ダウンズ容疑者説」が報道され始めると、 多くの市民が怒りをあらわにした。
「子供が殺されてるんだぞ! その母親を疑うとは世も末だ!」
その通りなのだが、実際のダイアン・ダウンズという人物が「世も末」のような困ったちゃんなのだ。数々の聞き込みによれば、誰とでも寝る、子供はネグレクト、性病なのに代理母になろうとする、挙げ句の果てに違法な代理母クリニックを作ろうとするというめっちゃくちゃな人物なのである。
6月13日になって、新たな情報提供者が現れた。5月19日、つまり犯行があった晩にオールド・モホーク・ロードで赤いニッサン・パルサーを目撃した人物だった。
「2、3分、その車の後ろを走りました。ノロノロしているので、道に迷っているんじゃないかと思いました」
余りにもノロノロしているので、彼はこの車を追い越したわけだが、これが事実ならば、ダイアンの「車に飛び乗り、出せるだけのスピードで病院に向かいました」との供述は嘘ということになる。彼女は子供たちが死ぬことを願って、ノロノロと運転していたのである。
しかし、それでも捜査官たちはダイアン逮捕に踏み切れないでいた。すべてが状況証拠だったのだ。有罪に持ち込めるだけの確証がなかったのである。
唯一の頼みはクリスティーだった。彼女は母親の犯行を目撃していた可能性がある。しかし、事件のトラウマのために話すことが出来なくなっていた。心を閉ざしてしまったのだ。
事件後は子供たちの親権は父親のスティーヴ・ダウンズが引き継いだ。ダイアンには面会することさえさえ認められなかった。それでも一度だけ、ダイアンが強引にクリスティーに会ったことがある。
――その晩、クリスティーは脅えていたという。彼女は知っているのだ。母親が鬼畜だということを。
ダイアンがようやく逮捕されたのは1984年2月28日のことだった。クリスティーがどうにか話せるまでに回復したのだ。彼女の証言がダイアンを有罪に出来るか否かの鍵だった。しかし、鬼畜の母親を目の前にして、彼女はきちんと話せるだろうか? 検事はクリスティーとまめに面会し、信頼関係を築くことに専念した。
法廷にはポータブル・デッキが持ち込まれ、デュラン・デュランの「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」が大音響で再生された。それはダイアンのお気に入りの曲で、犯行時にカー・ステレオから流れていた曲だった。
本当にダイアンが被害者で、真犯人が別にいるのならば、彼女はこの曲を涙ながらには聴けない筈だ。ところが、被告席の彼女はリズムに合わせて足踏みし、指を鳴らしていたのだ。サビの部分では「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」と口を動かしていた。検事はその姿を目にして呆れ返った。
容疑者としても、母親としても、人間としても明らかに常識外の行動であった。。
陪審員たちもその様に呆れ返っていた。やがて気づいた弁護人が制止した。これはダイアンにとって大失点だった。
そして、いよいよクリスティーが証言台に立った。検事は訊ねた。
「気分はどう? 大丈夫?」
彼女は頷いた。
「これからここにいるみんなの前で話さなければならないんだよ。まず、名前を云ってくれる?」
「クリスティー・アン・ダウンズです」
「歳はいくつ?」
「9歳です」
「法廷では本当のことを云わなくちゃいけないことは知ってるよね?」
「はい」
「本当のことを云うって約束する?」
「はい」
「君が撃たれた日、君は学校に行って、それから帰って来た。思い出せる?」
「はい」
「誰の家に帰ったの?」
「おじいちゃんとおばあちゃんの」
「そこでご飯を食べたの?」
「はい」
ダイアンの家に何もなかったのはこういうわけだったのだ。子供たちは事実上、ダイアンの両親が養っていたのだ。
「その後、車で外に出掛けた?」
「はい」
「他には誰が一緒だった?」
「ママと、シェリルと、ダニーが一緒でした」
「何処に行ったの?」
「ママのお友達の家です」
「そこで何をしたの?」
「馬と遊びました」
「その家を出た時には明るかった? それとも暗かった?」
「暗かったです」
「車の中で音楽が鳴っていたか憶えてる?」
「はい」
「それはラジオ? それともテープ?」
「テープです」
「それから、車が停まった時があったね? 憶えてる?」
「はい」
「車が停まった時、近くには誰か他にいたかな?」
「いいえ」
「車が停まってから、ママはどうしたの?」
「車から降りて、トランクのレバーを引きました」
「その後、ママが何をしているのか見えた?」
「いいえ。後ろは見ませんでした」
「音楽はまだ鳴っていた?」
「はい」
「それは『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』だった?」
「はい」
「その後、何があったの?」
「ママが戻って来て…」
「そして、どうしたの?」
「シェリルを撃ちました」
「それから?」
「ママは後ろのシートに乗り出して、ダニーを撃ちました」
クリスティーはこらえ切れずに泣き出した。
「君が撃たれた時のことは憶えている?」
「はい」
「誰が君を撃ったの?」
「ママです」
「ママのことを今でも愛してる?」
「はい」
この一言に法廷にいる多くの人々が涙を流した。
クリスティーの証言は決定的だった。何しろ母親の目の前で、自分を撃ったのは母親であることを涙ながらに語ったのである。これを反証するのは容易ではない。
また、クリスティーの証言は、ダイアンの供述に嘘があることを示唆していた。ダイアンはこれまでに何度も「車のキーを男に差し出し、薮の中に投げるふりをした」と供述していた。そうすることで犯人の気を逸らし、逃げることが出来たのだと。ところが、キーを抜いた状態ではカー・ステレオは作動しないのだ。クリスティーが撃たれた時に『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』が流れていたならば、キーは抜かれていなかったのである。
『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』はまるでダイアン自身のテーマ・ソングのようだ。
「地面を這い、狩りの構えで君の後を追う。私は狼のように飢えている」
ルー・ルイストンを追い求める雌狼は、如何なる代償をも厭わなくなっていたのだ。
「車が停まりました。路上に男はいませんでした。カー・ステレオからは『ハングリー・ライク・ア・ウルフ』が流れていました。皆さんが当法廷で聴いたあの曲です。クリスティーは撃たれた時にあの曲が流れていたと証言し、被告もそのことを認めました。このことはつまり、車のキーが抜かれていなかったことを意味します。抜いてしまえばカー・ステレオは作動しないからです。そして、抜かれていなかったということは、被告の『キーを男に差し出した』との供述は嘘ということになります。
車を停めた被告はドアを開けました。そして、レバーを引いてトランクを開けました。彼女は車の後部に回りました。トランクの中には22口径のルガーが入っていました。
助手席にはシェリルがいました。被告はまず彼女の胸を撃ちました。シェリルは反射的にドアを開けて逃げ出そうとしました。しかし、叶わずにその場に崩れ落ちました。
次いで被告は後部座席に目を向けました。右側にはダニーが俯せで寝ていました。被告はその背中を撃ちました。
左側にはクリスティーがいました。彼女は母親のことを今でも愛していると証言しました。彼女は妹と弟を撃った母親のことをどのように思っていたのでしょうか? そして、今は自分に銃を向けています。被告はためらうことなくクリスティーの胸を撃ちました。
『ママ、やめて!』
彼女は銃を掴みました。被告は再び銃を撃ちました。クリスティーは動かなくなりました。
一方、シェリルは車の外でもがいていました。被告は彼女の背中を撃ちました。その後、被告は自らの左前腕を撃ち抜き、タオルで止血して病院に向かったのです」
以上はシェリルだけが胸と背中を撃たれていることに基づく推理である。凶器のルガーは遂に発見されなかったが、おそらく近くの川に捨てたのだろう。
ダイアンは自分には止血していたが、子供たちには何もしていなかった。出血するがままだ。そして「出せるだけのスピード」どころか、ノロノロと病院に向かったのである。おそらく『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』を口ずさみながら。
ダイアンの人格に問題があることは明らかだった。それは12歳の時から父親に性的虐待されていたことに起因するのかも知れない。
そして、自分が親になった時に子供たちを虐待する。いわば「虐待の連鎖」だ。
だが、このたびの虐待は度を越えている。彼女は銃で殺そうとしたのだ。まだ幼い我が子たちを。性的虐待が事実なら同情の余地がないでもないが、だからと云って彼女の犯行を正当化出来るものではない。
かくして陪審員は1件の殺人と2件の殺人未遂について有罪を評決した。ダイアンに科されたのは終身刑だった。1984年6月17日のことである。
生き残ったクリスティーとダニーは、事件を担当した検事フレッド・ヒューギに引き取られた。
なんとダイアン・ダウンズは判決の10日後、1984年6月27日に無事、女児を出産した。そして、1987年6月11日に矯正施設から脱走した。逮捕されたのは10日後の6月21日のことだ。脱走した理由を「真犯人を見つけたかったから」だと語っているが、信じる者は誰もいなかった。
「子供を殺して彼と結婚できるなら、何回だって殺してやるわ」
きっと彼女はそう信じているに違いないのだから。
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