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時間になっても主が起きない。
ラファエルが揺すってみたりするが爆睡。そうしていると何かあったのだろうか?と、公爵がヴェロニカ様の部屋に来た。真っ青になった公爵がヴェロニカを抱き上げた。
「申し訳ございません、起こしても起きなくて……」
「いや。まぁ、疲れたのだろう。最近色々あったからな。珍しいな、そちらから私に用事があるというのは。」
身体になにか異常でもあったのか?と、あちこち確かめるが本人が心地よさそうに寝ているので安堵して抱き直す。
「流石に公爵に報告が必要かと思ったので。」
ラファエルは集めた報告書と資料を渡す。娘を抱き上げたままだと読めないのでヴェロニカを傍に寝かせて自分の膝を枕として貸しながら報告書に目を通していく。時折髪や頬を撫でて微笑んでいる。
「全く……この阿呆の手合いは切り捨てても減らないものだな。」
「如何致しましょうか。物理的に消えていただくか貴族社会から消えていただくか……」
「忙しいだろう。これだけ来ていれば。」
「我が主の為ならば。」
モゾモゾと彼女は目を覚ました。欠伸をしながらこてん。と、再度誰かの膝を枕にする。
「お父様……?」
「流石に疲れてしまったか。」
「申し訳ございません……」
頭をワシワシと撫でられた。父の傍から離れてラファエルの座っている側に座り直してクッションに埋もれるように倒れた。
「ヴェロニカ様、お休みになられるならベッドで。」
「お父様の膝硬い……」
愛娘にやんわり拒否されて当人がとても気にしているからと思いながら彼女に起きるかベッドに移動するか決めて欲しい。
父が黒髪、2人の兄が銀髪、末娘が白金髪……母親が銀髪と判明すれば周りは色々と噂を流す。そんなことは家の人間が1番わかっている。ヴェロニカも分かっているだろう。
ヴェロニカは二度寝をしてしまった。
黒烏の人間は彼女に命を救われたに等しい。私はそういう流れだ。ラファエルは思い出しながら主の寝顔を見つめる。冤罪を掛けられて死罪になるところを拾われた。汚い仕事ではあるだろうけれど、死人として生きることを許された人間は黒烏は多い。得意な仕事をしながら貢献する。
夕食も不要なのなのだろうか。仕事の話も終えてベッドに運んでおく。しないといけない事もハッキリした。
この国唯一の公女が国の裏側を握っているなんてどういう状況なのだろうか。ヴェロニカは家の中で父の仕事を覚える。
「ヴェロニカ、疲れたのではないのか?」
授業を終えた後に公爵家の人間としての仕事を覚えなければならない。
難しい事ばかりでまず家の予算の管理を任されている。それも難しい。
執事や父からヒントだけは貰うのだが何故何故と細かくどうしたいのか確認される。
そして前年との収支予定を確認しながら予算案を作っていく。
「ヴェロニカにも側近がいた方が良さそうだな。護衛騎士と文官を用意しないと……」
「本当ですか?黒烏から……」
「ラファエルか?」
「……優秀な文官だったと聞いています。」
父とお茶を飲みながら誰がいいかの相談をする。
「ラファエルは有名な貴族の令息だった。顔も知られているからやめなさい。髪を染めたところで分かる人間は分かる。自分で使用人にしたいなら自分で口説きなさい。」
まさかの欲しければ自分で取ってこいよ言われてしまった。ラファエルは伯爵家の子息だ。確かに顔割れはしているかもしれない。その程度は本人に聞くのが1番だろう。
「では、使用人としてであれば雇用して下さいませんか?我が主が報告を受けるのではなく私が報告を代わりに受けましょう。」
ラファエルに相談したら少し考えてそう提案してきた。ヴェロニカはじゃあそうしようか。と、微笑んで使用人として採用することにした。
「ですが父は顔割れしているのだから難しいのでは?と、懸念を示しています。」
「これでも黒烏に所属して陰形魔法、隠蔽魔法を覚えました。幸いにも闇属性適性を得ましたので。」
微笑む笑顔は穏やかだ。彼は跪きヴェロニカの足に唇を寄せる。脚、足の甲、裏、爪先に行う。
「ラファエルは前の名ですか?」
「いえ。これは偽名です。死体の名前は使えませんから。烏の仕事との割合も公爵と相談しながらになりますね。そして我が名を我が主に捧げます。」
貴族が自分の身分を示すために指輪を付けている。そこには魔石がはめ込められている。その指輪にある魔石を主に差し出し主となる物が魔石に魔力を注ぎ込む。そうすると魔石は消えて持ち主の手の甲に主を示す刺青のような紋様が刻まれる。
名を受けた主の魔石には従属するモノの魔力が登録され命を握ったものと同じ効力を発揮する。ラファエルは指輪を差し出し、ヴェロニカは魔力を通し契約を行う。
これでラファエルはヴェロニカの為に死ぬ事も厭わない私兵となった。
「私が解放しないとこのままなのに良いのですか?」
「当然のことでは?我が主の魔力は美しいですね。これは薔薇ですね。ここまで複雑なものは珍しいですよ。」
興味深そうに見ながら見せてくれる。父の模様は百合の花だった気がするが記号化されたもの。私のは記号化というよりはシーリングに使うような形状で一目で分かる。
複雑なものほど魔力量、属性も多いらしいが…青いバラというのは派手だ。他人には魔力を行使しないかぎり見えないもので、基本的に手袋をして隠す。
主となるものは手袋も渡すのが形式としてある。ヴェロニカは形式通り使用人が使う白の手袋を渡しておく。
「必要なら要望を教えて。それで作らせるから。」
「従僕としてなのでこれで十分です。ありがとうございます。」
ラファエルが揺すってみたりするが爆睡。そうしていると何かあったのだろうか?と、公爵がヴェロニカ様の部屋に来た。真っ青になった公爵がヴェロニカを抱き上げた。
「申し訳ございません、起こしても起きなくて……」
「いや。まぁ、疲れたのだろう。最近色々あったからな。珍しいな、そちらから私に用事があるというのは。」
身体になにか異常でもあったのか?と、あちこち確かめるが本人が心地よさそうに寝ているので安堵して抱き直す。
「流石に公爵に報告が必要かと思ったので。」
ラファエルは集めた報告書と資料を渡す。娘を抱き上げたままだと読めないのでヴェロニカを傍に寝かせて自分の膝を枕として貸しながら報告書に目を通していく。時折髪や頬を撫でて微笑んでいる。
「全く……この阿呆の手合いは切り捨てても減らないものだな。」
「如何致しましょうか。物理的に消えていただくか貴族社会から消えていただくか……」
「忙しいだろう。これだけ来ていれば。」
「我が主の為ならば。」
モゾモゾと彼女は目を覚ました。欠伸をしながらこてん。と、再度誰かの膝を枕にする。
「お父様……?」
「流石に疲れてしまったか。」
「申し訳ございません……」
頭をワシワシと撫でられた。父の傍から離れてラファエルの座っている側に座り直してクッションに埋もれるように倒れた。
「ヴェロニカ様、お休みになられるならベッドで。」
「お父様の膝硬い……」
愛娘にやんわり拒否されて当人がとても気にしているからと思いながら彼女に起きるかベッドに移動するか決めて欲しい。
父が黒髪、2人の兄が銀髪、末娘が白金髪……母親が銀髪と判明すれば周りは色々と噂を流す。そんなことは家の人間が1番わかっている。ヴェロニカも分かっているだろう。
ヴェロニカは二度寝をしてしまった。
黒烏の人間は彼女に命を救われたに等しい。私はそういう流れだ。ラファエルは思い出しながら主の寝顔を見つめる。冤罪を掛けられて死罪になるところを拾われた。汚い仕事ではあるだろうけれど、死人として生きることを許された人間は黒烏は多い。得意な仕事をしながら貢献する。
夕食も不要なのなのだろうか。仕事の話も終えてベッドに運んでおく。しないといけない事もハッキリした。
この国唯一の公女が国の裏側を握っているなんてどういう状況なのだろうか。ヴェロニカは家の中で父の仕事を覚える。
「ヴェロニカ、疲れたのではないのか?」
授業を終えた後に公爵家の人間としての仕事を覚えなければならない。
難しい事ばかりでまず家の予算の管理を任されている。それも難しい。
執事や父からヒントだけは貰うのだが何故何故と細かくどうしたいのか確認される。
そして前年との収支予定を確認しながら予算案を作っていく。
「ヴェロニカにも側近がいた方が良さそうだな。護衛騎士と文官を用意しないと……」
「本当ですか?黒烏から……」
「ラファエルか?」
「……優秀な文官だったと聞いています。」
父とお茶を飲みながら誰がいいかの相談をする。
「ラファエルは有名な貴族の令息だった。顔も知られているからやめなさい。髪を染めたところで分かる人間は分かる。自分で使用人にしたいなら自分で口説きなさい。」
まさかの欲しければ自分で取ってこいよ言われてしまった。ラファエルは伯爵家の子息だ。確かに顔割れはしているかもしれない。その程度は本人に聞くのが1番だろう。
「では、使用人としてであれば雇用して下さいませんか?我が主が報告を受けるのではなく私が報告を代わりに受けましょう。」
ラファエルに相談したら少し考えてそう提案してきた。ヴェロニカはじゃあそうしようか。と、微笑んで使用人として採用することにした。
「ですが父は顔割れしているのだから難しいのでは?と、懸念を示しています。」
「これでも黒烏に所属して陰形魔法、隠蔽魔法を覚えました。幸いにも闇属性適性を得ましたので。」
微笑む笑顔は穏やかだ。彼は跪きヴェロニカの足に唇を寄せる。脚、足の甲、裏、爪先に行う。
「ラファエルは前の名ですか?」
「いえ。これは偽名です。死体の名前は使えませんから。烏の仕事との割合も公爵と相談しながらになりますね。そして我が名を我が主に捧げます。」
貴族が自分の身分を示すために指輪を付けている。そこには魔石がはめ込められている。その指輪にある魔石を主に差し出し主となる物が魔石に魔力を注ぎ込む。そうすると魔石は消えて持ち主の手の甲に主を示す刺青のような紋様が刻まれる。
名を受けた主の魔石には従属するモノの魔力が登録され命を握ったものと同じ効力を発揮する。ラファエルは指輪を差し出し、ヴェロニカは魔力を通し契約を行う。
これでラファエルはヴェロニカの為に死ぬ事も厭わない私兵となった。
「私が解放しないとこのままなのに良いのですか?」
「当然のことでは?我が主の魔力は美しいですね。これは薔薇ですね。ここまで複雑なものは珍しいですよ。」
興味深そうに見ながら見せてくれる。父の模様は百合の花だった気がするが記号化されたもの。私のは記号化というよりはシーリングに使うような形状で一目で分かる。
複雑なものほど魔力量、属性も多いらしいが…青いバラというのは派手だ。他人には魔力を行使しないかぎり見えないもので、基本的に手袋をして隠す。
主となるものは手袋も渡すのが形式としてある。ヴェロニカは形式通り使用人が使う白の手袋を渡しておく。
「必要なら要望を教えて。それで作らせるから。」
「従僕としてなのでこれで十分です。ありがとうございます。」
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