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聖王国からの留学生。聖王国とは建国より前の付き合いであり、聖女であり王女の弟が私の祖先。
帰るわけに行かなくなった。
指示を待つエメルを見つつ仕方なく付き合いと外交上の都合でここに残る。
聖王国王位継承権第13位イクス・ヴェリタス…丁度私と同い年でシュヴァリエにあるような銀髪ではなく、女性だったら可愛いとか言われるような淡いピンクの髪……赤い瞳。肩より長い真っ直ぐの髪を整えている。
なんというか、あの王族と違って気品が漏れ出ている。同世代の王族がアレなのに。
「エメル、イクス様の情報はある?」
「申し訳ございません。」
「いいのよ。隣の国だし。知ってたら良いなくらいだから。」
しょんぼりして欲しくないから気にしていない。声をかけておく。本当に気にしていないし、ラファエルに聞けば分かるかもしれない程度の認識だった。
国の重鎮達が挨拶をしているがそろそろ私が割り込んでも失礼には当たらないだろう。
「銀髪の仮面……シュヴァリエ公女殿下でしょうか。」
「はい。初めまして……ですよね?」
「ですが、見て分かります。我が建国の祖の血縁だと。」
留学生ではあるが外交官にもなりうる人間が目の前で跪きヴェロニカの指先に唇を落とした。
「私からご挨拶すべき所を申し訳ございません。」
「お客様に膝をつかせる訳には参りません。」
「恐れ入ります。私のことはイクスとお呼びください。」
「……ヴェロニカと申します。何卒よしなに。」
王女か四侯のご令嬢と付き合い上踊るだろう。帰りたくなってきた。真っ先に王女と踊った次にはこっちに来た。
「踊って頂けますか?」
「喜んで。」
手を取りダンスを踊る。フルフェイスなのに。
「在学中は王城の客間を間借りすることになっているのです。」
「それは……ご愁傷様です。賑やかな王城だとくつろげないのでは?」
「辛辣ですね。シュヴァリエ公爵家は王家と仲が良くないのですか?」
「……聖王国の血統を持つ我が家門は家を興した聖女であり王女の弟アーク・シュヴァリエが定めた家訓が御座います。【この国の王家ではなく民の…領民のためにいるのだと。】お陰様で宰相等の要職に着くことはなく、ご意見番程度に侮られる名誉職専門家門と言われています。」
「……遠い親戚の交でシュヴァリエ公爵家で滞在はできませんか?」
数日前には到着して文官や護衛騎士などを配置したり部屋を用意したりしているはずだ。聖王国とは同盟関係だし貿易も盛んだ。
「……決定権は父であるパーシヴァル・シュヴァリエ公爵が持っています。騎士団長をしているのでお会いしたこともあるかと思います。」
「3日目に打診したら娘の許可を得てください。と、断られてしまったよ。家督を継ぐのがヴェロニカ公女で自分は繋ぎだからと。」
お父様……こっちに丸投げしないでください。
王宮ではイクスと仲良くなりたい王族があれこれとお誘いするだろう。
重婚可で王位継承権は国王が定めた順位が大きく影響する。イクスは既に王族の権力闘争に巻き込まれたのだろう。
「私は構いませんよ、父と詳しい日程をお決め下さい。人数等が判明すれば対応させて頂きます。」
「ありがとうございます。」
私に声をかける人間なんていないだろう。
我が家の財政は領地からの納税だけで賄われて父の給与くらいだ。
上がりは多いし、税は重いが、輸出でかなり潤っているし、塩と小麦の一大生産地だ。
税が重いけれどそれに応じて収入もしっかりある。医療費、学費が基本無料で領民全員が恩恵を受けている。
高い負担を強いているが、それ以上に領民の生活に還元している……歴史の積み上げ方というか、祖先アーク・シュヴァリエがそうしてきた。それを守ってきた結果だ。
ダンスに申し込まれても興味が無いので目線を外す。どう見てもからかうのか度胸試しだろうに。
「……帰りますか?」
「帰る……時間の無駄と言うか、眠い。つまらないし。」
父に先に帰るとだけ挨拶と二三言葉を交わしていた。
「おい、シュヴァリエ。」
「……前世は猿だったのでしょうね。言葉遣いも平民のようですし……猿に人語は早すぎた証明でしょうか。」
仮面の内側でポソポソと愚痴を漏らす。エメルにしか聞こえてないのかクソ王子を殴るか私を抱き上げて出ていくか考えているのだろう。
「お父様、お早いお戻りを……エメル、最短距離で運んでください。家で仕事をしている方が遥かに有意義だから。」
ヒョイと抱き上げられて走り、窓を開けて飛び降りた。
「それなりに高さあるのねー。」
「そうですね。この程度では怪我しませんが……馬車まで走ります。」
馬車まであっという間であった。馬車に揺られて早々に帰宅した。社交辞令とはいえ私にしては長居したと思う。
帰宅してドレスも脱いでベッドに横になる。
「姫様、整髪剤やお化粧を落とせてませんよ?」
「準備出来たら……」
「完了しております。」
アンジュに抱き上げられて浴室に連れ込まれて服も脱がされて湯船の中で化粧などを落とされていく。仮面がないと息がしやすい。
「アンジュ……詳しい事はエメルから聞いて欲しいのだけど、居候?住み込みが増える可能性大だから準備よろしく……」
「????」
精神的に疲れた。マッサージやスキンケアも受けながら髪を乾かしてもらう。
「くはぁ……エメル、ラファエルと今日居た人達の情報集めといて。」
「承知致しました。」
今日は疲れた。
帰るわけに行かなくなった。
指示を待つエメルを見つつ仕方なく付き合いと外交上の都合でここに残る。
聖王国王位継承権第13位イクス・ヴェリタス…丁度私と同い年でシュヴァリエにあるような銀髪ではなく、女性だったら可愛いとか言われるような淡いピンクの髪……赤い瞳。肩より長い真っ直ぐの髪を整えている。
なんというか、あの王族と違って気品が漏れ出ている。同世代の王族がアレなのに。
「エメル、イクス様の情報はある?」
「申し訳ございません。」
「いいのよ。隣の国だし。知ってたら良いなくらいだから。」
しょんぼりして欲しくないから気にしていない。声をかけておく。本当に気にしていないし、ラファエルに聞けば分かるかもしれない程度の認識だった。
国の重鎮達が挨拶をしているがそろそろ私が割り込んでも失礼には当たらないだろう。
「銀髪の仮面……シュヴァリエ公女殿下でしょうか。」
「はい。初めまして……ですよね?」
「ですが、見て分かります。我が建国の祖の血縁だと。」
留学生ではあるが外交官にもなりうる人間が目の前で跪きヴェロニカの指先に唇を落とした。
「私からご挨拶すべき所を申し訳ございません。」
「お客様に膝をつかせる訳には参りません。」
「恐れ入ります。私のことはイクスとお呼びください。」
「……ヴェロニカと申します。何卒よしなに。」
王女か四侯のご令嬢と付き合い上踊るだろう。帰りたくなってきた。真っ先に王女と踊った次にはこっちに来た。
「踊って頂けますか?」
「喜んで。」
手を取りダンスを踊る。フルフェイスなのに。
「在学中は王城の客間を間借りすることになっているのです。」
「それは……ご愁傷様です。賑やかな王城だとくつろげないのでは?」
「辛辣ですね。シュヴァリエ公爵家は王家と仲が良くないのですか?」
「……聖王国の血統を持つ我が家門は家を興した聖女であり王女の弟アーク・シュヴァリエが定めた家訓が御座います。【この国の王家ではなく民の…領民のためにいるのだと。】お陰様で宰相等の要職に着くことはなく、ご意見番程度に侮られる名誉職専門家門と言われています。」
「……遠い親戚の交でシュヴァリエ公爵家で滞在はできませんか?」
数日前には到着して文官や護衛騎士などを配置したり部屋を用意したりしているはずだ。聖王国とは同盟関係だし貿易も盛んだ。
「……決定権は父であるパーシヴァル・シュヴァリエ公爵が持っています。騎士団長をしているのでお会いしたこともあるかと思います。」
「3日目に打診したら娘の許可を得てください。と、断られてしまったよ。家督を継ぐのがヴェロニカ公女で自分は繋ぎだからと。」
お父様……こっちに丸投げしないでください。
王宮ではイクスと仲良くなりたい王族があれこれとお誘いするだろう。
重婚可で王位継承権は国王が定めた順位が大きく影響する。イクスは既に王族の権力闘争に巻き込まれたのだろう。
「私は構いませんよ、父と詳しい日程をお決め下さい。人数等が判明すれば対応させて頂きます。」
「ありがとうございます。」
私に声をかける人間なんていないだろう。
我が家の財政は領地からの納税だけで賄われて父の給与くらいだ。
上がりは多いし、税は重いが、輸出でかなり潤っているし、塩と小麦の一大生産地だ。
税が重いけれどそれに応じて収入もしっかりある。医療費、学費が基本無料で領民全員が恩恵を受けている。
高い負担を強いているが、それ以上に領民の生活に還元している……歴史の積み上げ方というか、祖先アーク・シュヴァリエがそうしてきた。それを守ってきた結果だ。
ダンスに申し込まれても興味が無いので目線を外す。どう見てもからかうのか度胸試しだろうに。
「……帰りますか?」
「帰る……時間の無駄と言うか、眠い。つまらないし。」
父に先に帰るとだけ挨拶と二三言葉を交わしていた。
「おい、シュヴァリエ。」
「……前世は猿だったのでしょうね。言葉遣いも平民のようですし……猿に人語は早すぎた証明でしょうか。」
仮面の内側でポソポソと愚痴を漏らす。エメルにしか聞こえてないのかクソ王子を殴るか私を抱き上げて出ていくか考えているのだろう。
「お父様、お早いお戻りを……エメル、最短距離で運んでください。家で仕事をしている方が遥かに有意義だから。」
ヒョイと抱き上げられて走り、窓を開けて飛び降りた。
「それなりに高さあるのねー。」
「そうですね。この程度では怪我しませんが……馬車まで走ります。」
馬車まであっという間であった。馬車に揺られて早々に帰宅した。社交辞令とはいえ私にしては長居したと思う。
帰宅してドレスも脱いでベッドに横になる。
「姫様、整髪剤やお化粧を落とせてませんよ?」
「準備出来たら……」
「完了しております。」
アンジュに抱き上げられて浴室に連れ込まれて服も脱がされて湯船の中で化粧などを落とされていく。仮面がないと息がしやすい。
「アンジュ……詳しい事はエメルから聞いて欲しいのだけど、居候?住み込みが増える可能性大だから準備よろしく……」
「????」
精神的に疲れた。マッサージやスキンケアも受けながら髪を乾かしてもらう。
「くはぁ……エメル、ラファエルと今日居た人達の情報集めといて。」
「承知致しました。」
今日は疲れた。
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