托卵された公爵

はまち

文字の大きさ
27 / 27

27

しおりを挟む
新規でお店を作るにしても準備段階。拾った雇われ店長も書類で勉強中。
   私にできることはヴェリタス宰相の御子息と親睦を深めること。王族達が何をしてきたかは知らないが、こっちが謝る必要もないので話題にしつつも、写本に精を出す彼の手伝いをする。

「こんな資料を見せてよろしいのですか??国に連絡したら上の人間が来るかと思いますが……」
「私的なものなので大それたことになると私や父が対応することになりますし、アベリアにいちゃもんをつけられると双方にめんどくさいのでこっそりということにして写本をお願いいたします。」
「公爵と王家は仲が……???」
「祖先からなので筋金入りです。」
「なるほど。公爵領に仕える貴族は聖王国の家臣団の末裔のようですし仕方ないですね。」

 仮面をつけたまま翻訳を手伝う。私がここまで古典?ができることにラファエルも驚いていたが、こっちの方が馴染みがあると言っても通じないだろう。理解もされないだろうし何を言っても意味もない。余計な情報は与えないこと。ただ、得意。それだけでいい。
 パーシヴァルはデオン、リオンも教えていないのに外国語が得意だからそういうものだろう。と、特段気にしていなかったのだが、兄2人が外国語が得意なのは母の前で私の話ができないから使えそうで母が使えない外国語を率先して覚えたという涙ぐましい努力がある。
 王宮で外交中心の役職にと声もかかったらしいが目の前で紙を破り捨てて領地に引っ込んだのだからアベリア嫌いは一族、領地の人間の筋金入りだ。
 王家の人間が視察に公爵家に来るならば意図的に土砂崩れ(人家なし)を起こしたりして災害対応で忙しいから無理と色々と理由をつけて一度も視察を許してない。
 それにやましいこともない中央の人間が視察は断れないが、一瞬で中央対応でものを入れ替えたりして公爵領的に田舎水準に落としたもので出迎えるらしい。

 それくらいやっているので相当根深いことで毛嫌いをしているようだ。今になって少しは改善されているかと思ったが、彼らは中央の学園にこそ通うけれど、公爵が王都にいるので必要最低限だけ残って全員基本的に公爵領へ引き揚げてしまっている。

「姫様、新店舗の食事等はお考えがありますか?」
「特にないけど、昼は薄利多売。味と満腹度優先。明らか1人で食べきれないメニューでも作って1人で制限時間内に完食したら食事タダ。失敗したら正規料金支払うとか。遊びは入れてもいいと思う。だけど夜はおつまみとお酒を充実?」

「……食べきれないメニューですか?」
「そうそう。貴族向けじゃなくて肉やパンをてんこ盛りにした料理。もちろん味も必要だけど、誰が完食するの?っていう量にする。基準は……ウチの騎士の演習明けの食事より多めかな。」
「姫様、それ礼儀作法無視で良いのですか?」 
「ウチの騎士には無理かな。言うてもおぼっちゃま貴族多いし。」

   ラファエルは少し考えてやってみましょうか。と、あっさり頷いた。



   そしてラファエルは公爵家の騎士団が訓練している場所に向かう。

「姫様の側近が何しに?」
「姫様からの要望なのですが、皆さん結構食べますか?」

   成人男性に何を聞いているのだろう。姫様に比べたら食べるし、これだけ訓練で動いているのだから食欲はある。
   ラファエルはヴェロニカのしたいことや目的をちゃんと伝える。

「……つまり腹を空かせた騎士の限界を知りたいと?」
「そうなりますね。店もまだ出来てませんし、姫様は面白そうだから公爵家の食料庫解放して試してもいい。ということらしい。」
「ちなみに酒類は……」
「出ません。制限時間内にどれだけ食べられるかなんで、チンたらとお酒を嗜む時間なんてありません。が、優勝者に公爵から酒樽か高価な銘柄を分けて貰えるか聞いてみます。」

   ヴェロニカ経由で公爵に企画の1つで良いお酒1瓶提供をお願いした。

「これで良いだろう。」

   部屋からお酒を持ってきた。集めている訳では無いがお客が来た時に出すお酒だ。公爵がもてなす為の取っておきのお酒???使い道がないお酒では??

「騎士の給与1年分の価値が着いている。」
「良いのですか?」
「出す予定もないしな。こういうので在庫を減らすのも良いだろう。まだあるというのもあるが……」

   父は好きな銘柄が決まっていて賞品にしたお酒は種類として好きじゃないらしい。

「ありがとうございます?」
「こんなのでやる気を出せるなら積極的に採用するか。」
「父様、普通に酒樽とかで良いですからね?」

   一応ラファエルにこれ賞品。と、渡したら騎士の給与1年分以上の値段するんだけどな。と、ボヤいて預かってくれた。

   餌がちゃんとしてないと士気維持も出来ないだろうし。多少のおふざけがあって許されないと息も詰まるだろう。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...