出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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5試作品ですが

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騎士様に抱えられて到着した村は燃えていた。血の匂いと獣の匂い。

「隊長!!」

指揮官なのだろうか。騎士様より年上で身体ががっちりしている。

「その少女は…?」
「山の中にいたので保護しました!」
「そのまま1人で下山は危険なのでこちらに連れてきました。」

目線がこちらに向いた。スカートでもないし、頭を下げる。

「宝飾師ミカエラ・フィルと申します。素材採取の為にこの山に入り下山の途中騎士様に助けていただけました。神聖属性持ちなので御協力出来ることはありますでしょうか。ただ、平民なので魔力は多くありません。ポーション程度の力で宜しければ…」

要らないと言われるのが関の山。私の神聖魔法はポーション以下。だけど、試作を使ったら底上げ出来るはず。それを試すことが出来る。試作品を大手振って紹介できるほど宣伝できるほど性能を確かめていない。

「ミカエラ嬢、神官が足りていない。少しでもいい寄与して欲しい!!後で必ず謝礼をする!!」

肩を掴まれて貴族の地位ある人に言われた。本当に今危険なんだとミカエラも理解した。

「人を1人つける。レオン!」

さっき私を抱き上げた騎士様だ。返り血なのか…出血なのか。

「はい!」
「ミカエラ嬢の護衛として部隊の回復支援に回れ。」
「はっ!」

隊長さんは直ぐに現場の指揮に戻ってしまった。レオンの指示に従って治癒魔法を施す。ちょっと試作品を使ってみてもいいですよね。試運転。

「レオン様、怪我…」
「大丈夫です。魔力が勿体な…」

レオンが断る前にヒールで傷を治す。ちょっとの怪我が命取りになるのは私だって理解している。

「私が運びますので体力温存してください。」

抱き上げられて神官がいないテントに運ばれた。中に入る前に鞄から腕輪を取り出して装着する。私の魔力を込めた魔力底上げアイテム。使い捨てだけど。
少し開けると騎士達の呻き声や子供の鳴き声、むせ返るほどの血の匂いがした。テントに一人一つなわけない。

「レオン先輩、その人は…」
「通りすがりの神聖属性持ちの宝飾師だ。」

「エイス。モードスタッフ。」

ミカエラはエイスをいつものペンの形ではなく杖の形にする。そして魔力を込める。

「範囲拡大、拡大範囲固定、対象者固定、強化…ヒール!!」

手首に付けた腕輪のクリスタルが砕けてテント丸々1つ全体に強化した治癒魔法をかける。効果薄い…砕けた石を再度つけ直しヒールを掛けると完治ほどでは無いが、傷が綺麗に塞がった。

「…凄い」
「神官様…??」
「すみません。これで概ね治ってると思いますが次のテントをお願いします…魔力が余っていたらまた来ます!」

魔力は多くない。動ける程度に治して人数を治した方がいい。質より量だと思った。ミカエラは自分を運んでくれる護衛役のレオンを見上げると分かりました。と、頷いてくれた。危険な状態から脱することが1番大切だ。

「次行きましょう!!」

ひょいっと。抱き上げる。何故こんなにも軽々なのだろうか。

「ミカエラ嬢凄いですね!神官見習いではないですか!?」
「いえ…魔力も多くないので補助具として試作品を付けています…」
「補助具???魔石ですか??宝飾師ですもんね。」
「…市場価値がないクズ石と呼ばれるクリスタル達です。」

レオンは明るい声の調子で話をしながら次のテントまで運んでくれる。

それから試作の石をバンバン付けた。魔力はクズ石に貯めていたものを増幅してヒールを重ねかけをして回る。学園でもこんな無茶な事はしていない。魔力もそろそろ危ないと感じる前にレオンから魔力ポーションを渡された。

「ミカエラ嬢、お疲れ様!これ魔力ポーション飲んで!」

流石に魔力がそこを着きかけているし、試作の石がそれなりに砕けた。
あー。魔力が平民より多めの私があれだけヒールを連発出来たのは効果があったかな…帰ったら詳しく検証しないと。仕事上がりのエールを飲むようにぷはぁー。と、魔力ポーションを飲む。
こんなに神聖魔法を使ったのも試作を使ったのも初めての経験だったけれど、試作の検証必須ということも頭に過ぎったので宿題が増えたと頭が痛くなった。
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