出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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9平穏…は来なかった

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ミカエラは工房で発注書を黙々と減らしていく。無理難題は特になく受け取った分の物を作り、馬車を手配する。小さな馬車で良いけれど荷台には毛布を敷いて破損しないようにしっかり固定もする。
あとは騎士団からの使用報告書が貰えたら万々歳。
今日は外食しようかなぁ。
納品完了したら商業ギルド経由で貴族に渡されて正式に支払いがされる。材料費とかの兼ね合いで前金で1部支払われている。

「ミカエラちゃん、納品?」
「納品で後ろから行きにくいので人借りてもいいですか?」
「分かった。人呼んでくる。」

ギルド職員を呼んでもらって鑑定してもらう為に会議室に運んでもらう。鑑定書を付けてもらわなければならない。

「はい、納品完了ですね。」

今日は何も無いのかな。さっさと帰ろう。

「ギルド長達は今別室で貴族の応対中なんです。」
「へぇ大変ですね。取り敢えず発注書って結構溜まってます??」

職員の人に尋ねると紙束がドサッと積み上げられる。まぁ、素敵。

「ここまでが忖度含めて順番に並び替え済みです。納期目安だけ聞いてもいいですか?納期未定から確定の連絡を致しますので。急ぎじゃなくていいから欲しい方々なので是非ゆとりを持ってください。」

自分で納期を決めてこれくらいで。と、伝えておく。短納期は設定しない。段々値上がりしている気がする。

「ミカエラさん凄いですね!注文じゃんじゃん来てますよ!」
「あ、有難いですけれど…」
「ミカエラさんのは何よりも可愛いんです!大きな宝石や魔石も良いですけれど、こういう小さい物が可愛くて…私も欲しいですけれどギルド長達は値段を釣り上げますし、他の工房もここまで繊細なのは模倣すら出来ないようで…元が大きな石なら出来るようですけど…」

アハハー。褒められるのは嬉しいけれど誰か模倣してくれ。注文分散して欲しい。
何時もの書類を運ぶカバンに詰めて帰ろう。今日もご飯を食べたら休んで発注書を見てから何作るか考えないと…

「おいミカエラ!!!」

肩を掴んで引き倒された。尻もちを付いた。痛い。顔を上げると久しぶりに見たマルセル工房の工房長がいた。

「何のつもりですか、ガング・マルセル。商業ギルドで分かっているのですか?」

「お前が調子に乗っているからだろうが。何が技術使用料だ。俺の工房で登録したものは俺のものだ!!」

そっちこそ何を言ってる…???ミカエラはポカンとしてしまった。技術は工房のものではなく個人のものだと全員が習うことだし、当たり前のことを何言っている。

「店の売上もないんだろ?1人の工房でできる仕事なんてないもんな!頭下げるならまた雇ってやっていいぞ。」

「へ?」

いやぁ、困ってないし、寧ろあんたの下には戻りたくないし。何を勘違いしているのだろう。胸ぐらを掴まれて持ち上げられる。首締まる…

「その手を離せ。商業ギルドでは暴力は許されないはずだろう。」

「ヒッ…騎士団!?」
「ゲボっ」

見上げるとあの時の騎士がいた。確かレオン様…

「申し遅れました。王国騎士団第3騎士団所属レオンハルト・ロズウェルです。何か抗議がありましたらどうぞ騎士団又はロズウェル家に。誠意対応させていただきます。」

制服カッコイイ。レオン様ではなくレオンハルト様が私の前に膝を着いて手をさし伸ばす。

「ミカエラ嬢、大丈夫?」
「レオン…ハルト様。どうしてギルドに?」
「レオンでいいですよ。仲間はそう呼びます。兄と隊長のお使いです。」

あの時は鎧だったが騎士団の制服がカッコイイ。青を基調とした制服だ。剣も切れるのかな。立たせてもらって髪を撫でられた。

「ギルド長達とこの後会議なんだけどミカエラ嬢も同席してくれる?」
「????何故です???」
「ミカエラ嬢も当事者だから。」

さっさと帰りたいのですが…営業用笑顔を貼り付けているが多分伝わっていない。何で???レオンハルトは肩に手を回してぐいっと引き寄せてきた。

「抱き上げて移動の方が良かったですか?」
「やめてください…制服青系統なのですね。」
「第1が黒で第2が赤、第3が青って別れてるんだよ。」

へぇと思いながら他にも面白い話があってわ、と、世間話をしながらいつの間にか応接室に着いていた。貴族のエスコート恐ろしい。
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