出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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10準備…

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応接室に入るとミランダとギルド長が良い笑顔で待ち構えていたが後ろに何か見える気がする…目をそらす。
「ミカちゃん、このお手紙の真意を聞いても?」
「…拝見します」

お手紙を見ると私のクズ石加工について詳しい話を聞きたいから呼び出しだ。待ってくれなんでそうなった。

「ミカちゃんクズ石って髪飾りのよね?」
「ふぁい…」
「魔力込めれたの?」

情けない返事の後にこくこくと頷く。

「取り敢えず技術登録しましょうか。」

仕様書類はいつも持ち歩いている。これ。と、見せるが普通にエイスで削るだけなのだが…

「ロズウェル侯爵家令息、ミカエラはこの通り平民の職人です。登城には…」

「じゃあウチくる?」

何がじゃあなのだろう。じゃあの選択肢ではない。貴族の家なんて行きたくないし礼儀作法に不安しかない。レオンハルトは首をかしげて話を聞きたいと言ってるの兄だから大丈夫だよ。と、訳の分からない慰めを受ける…

「お兄様というとユーリ・ロズウェル様でしょうか次期侯爵の。」
「はい!魔導師団の中の魔道具開発をしているので興味を持ったのだと思います。」
「ミカちゃん、注文殺到でしょう?大丈夫???」
「注文書増えてました。」
「どうしましょうか。多分兄のことだから召喚命令切ってしまえばいいとか言うかもしれませんし。」

勘弁して欲しい…

「ロズウェル様、ミカエラは貴族の作法は明るくありません。その点を不問にして頂いたりして頂かないと…」
「勿論です。一切不敬を問わないと兄に一筆書くように伝えておきます。マナーが気になるなら家で付け焼き刃の練習する?別邸だから兄や父とは合わないと思うし、服の準備とか。」

「服?」
「ミカちゃん、王城に着ていくにはドレスが必要なのよ?」

ミカエラが真っ青になり手紙が手元から落ちた。レオンハルトはうーん。と、考えてぽんとミカエラの肩を叩く。

「私の兄が言い出したことだし家に滞在しておく?仕事道具ある程度持ち込んで。服とか色々こっちで準備するし。」

「ふぁい…」
わけがわからなさ過ぎる。

レオンハルトはそれと…別の話を切り出す。

「ミカエラ嬢、あの狼藉者は知り合いですか?」
「レオンハルト様、あれはその…」
「ミカちゃん?」

圧が強い。貴族ばかりの中で庶民の私。ギルド長はもう気配消して空気になってる。

「ガングです。…自分が追い出したのに権利料に何で金を払わなければならないんだとか。工房のものだとか。調子に乗っていると…それで売上もどうせないのだから頭を下げたら雇ってやると…肩を持って引き倒されて、胸ぐら掴まれた所をレオンハルト様に助けられました。」

「商業ギルドはこのような暴力が当たり前なのですか?」

「当たり前ではありません。マルセル工房には制裁を課します。ミカちゃん、避難という意味でロズウェル侯爵家に滞在をオススメするわ…全く…」
「家にまで来るでしょうか…」
「知っているの?」
「多分。」
「ギルドでマルセル工房に監視をつけるし何かあればギルドが補償しよう。」

私、注文書を作っていたいんだけどなぁ。トホホ…応接室から出て肩を落とす。

「えと、ごめんね?」
「いえ…工房辞めて独り立ちしてから有難いことにお仕事沢山で…」

「じゃあ明日の朝迎えの馬車寄越すから家の場所教えて。手ぶらでもいいけど仕事終わらせないと行けないなら持ってきて。1日マナー教室なんてしないし。」

「ありがとうございます…」

家の場所を教えて真っ直ぐ寄り道しないで家に帰る。もう、マルセル工房の人間に絡まれたくないし、発注書の中身を見て必要なものを買い揃える。貴族の屋敷で作るか。流石に納期未定で放置もできないし。フラフラと家に帰って外泊の準備をする。簡単なお泊まりセットでいいよと言われたがそれは下着とかの話だろうか。何日外泊するとか決めてなかった気がする。私の日程抑えて手の空いた時に呼び出されるとか??貴族って何考えてるかさっぱり分からない。取り敢えず下着は数日分と、汚れないように布と抱えた依頼のを作るには余るくらいの材料。

販売価格が材料費とかを考えると殆ど技術料だ。

一般的な読み書き計算帳簿作成しか出来ない私に貴族のマナーとか覚えられるの???





邸に戻ったレオンハルトは家族との食事の席で今日のことを切り出した。

「兄上、商業ギルドに行って来ました。」
「そうかい。返事はいつ頃貰えるのかな?」

「平民で作法に不安があるからと、言われたのと城に行くための衣装がないとの事でした。」

「作法は気にしないし、取り敢えず普段着でいいよ。家で用意するのもありだし。」

レオンハルトはニコッと良い笑顔でそのためと続ける。

「作法が気になるなら取り敢えずうちに泊まればいいよと提案して明日から別邸に滞在してもらいます。」

良い笑顔で宣言したのだが本人以外の成人した大人が全員が噎せた。

「レオンハルト…ひとつ聞きますが」
「なんでしょうか、母上。」

「お友達?」
「いえ、隊が危険な時に助けてくださった恩人の宝飾師です。」
「…レオンハルト、ミカエラ嬢は頷いたのかい?」

両親口にしたワインを吹き出しそうになるくらいに噎せた。

「その、ミカエラ嬢は自分を追い出した工房に逆恨みをされているようでギルドが対処している間の避難先としても提案しました。」

「…レオンハルト、ミカエラ嬢は何歳だったかな。」

「聞いてませんが、20前後では無いでしょうか。」
「…レオンハルト、彼女は既婚?」
「???そういう話はなかったと思います。指輪や腕輪もなかったので。」
「そうか。レオンハルト、うら若き平民の女性を危ないからと期間不明の貴族の家にお泊まりに誘ったとしてお前にその気はあるのかい?」

・・・兄が分かりやすくまとめて説明して尋ねるとお使いちゃんとしたぞ。と、思っていた本人はみるみる赤くなってわー!!!!!と、否定する。

「違います!!!彼女は素敵な職人ですがそういうのは全くありません!!!!」
「いや、うん。接点そこしかないだろうし。カノンとマリアにも連絡しておくといいよ。多分協力してくれる。」

「分かりました。」

末っ子が心配になった親達であった。
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