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30前途多難
しおりを挟む「ミカエラ、足りないものは無い?商業ギルドに預けていた物の全て運んだけれど。」
馬車で待っていると侯爵家の人が貸金庫に預けていたものを出して確認をさせられる。外に出てもいいがローブを被らされる。
「それで全部です。問題ないです。」
「…堅苦しい?」
「護衛とか馬車とか慣れないから。もうちょっと雑の方が楽…」
「雑の方がいいって…姉上とかに知られたらどれだけ小言言われるか。平民の感覚だと丁寧すぎる?」
「壊れ物じゃないので…レオン様、ヘラルド様ってもしかしてかなり身分の高い方では?」
尋ねるとニコリと貴族の笑顔を向けられた。口外するなとか言われてるのだろう。馬車から降りて荷物だけ先に荷物だけ帰ってもらった。
「ミカエラ、どうする?少し歩く?」
「…歩きます。」
エスコートも気まずい。ただでさえ家が燃えて知らない人が焼死体になっていた。それ以上に精神的に疲れることはしたくない。仕事に影響も出したくない。いつも歩いている商業区から貧民街なのに犯罪に巻き込まれるかもしれないという意識で気分が沈む。
レオンハルトも平民のやり方に無理に付き合わせているかもしれない。厳しい訓練で平民と一緒に訓練していても私の感じ方とは違うはず。
ポンポンと頭を撫でられた。
「???」
「不動産情報とか集めておこうか?」
「取り敢えず暫くは考えたくない。発注書も多めに抱えたし、仕事で気晴らしするしか。」
「禁止している訳じゃないし、俺が着くから自由に動けるよ。遠慮しなくていいし。」
仕事して頭を整理しよう。
一心不乱に作品を作る。髪飾り、イヤリング、ブレスレット、指輪と沢山だ。別邸でもレオンハルトが護衛をする必要は無いのでクズ石で研磨の練習をする。
「ミカエラ…これエイスで削れるの?」
「削れますし、王宮支給なので大きいやつですよ?魔力を薄い刃にして少しずつ角を削って下さい。」
「薄くって????」
「取り敢えず紙や包丁の厚さで一定に研ぎ澄ませる。エイスは自分の魔力では自分自身は傷つけれないのだから。」
ミカエラが作品、商品を複数作っている間黙々とチマチマと削るが上手くいかない様だ。
「レオン様、リンゴの皮剥きした事あります?」
「え?」
「取り敢えず包丁やナイフを借りてリンゴの皮剥きしましょうか。」
ミカエラは人を読んでリンゴとナイフを用意してもらう。合わせてまな板と皿も。
「皮剥きしましょう。芋の方がいいんですけど、片付けが食べるなのでりんごの方がいいので。」
皮を薄くして切っていく。ミカエラはすごく薄く切って1枚の皮で綺麗に剥いた。それを見せてこれから練習しようかと提案する。
「で、剥いたらどうするんだ?」
「食べて片付けて下さい。薄く出来たらその感覚でエイスを使って削ってください。」
ミカエラはリンゴを食べて仕事の石を加工していく。
城でも内密にミカエラの家を燃やした犯人と死体を調査していた。
「ヘラルド殿、エイスが残っていたので確認したところキリエ・ライカでした。」
ヘラルドはため息をついて書類に目を向ける。
「ナビエ子爵の指示で動いていたようだな。ミカエラ・フィルの情報を漁っていた痕跡がある。だが、子爵1人にしてはやっていることがな…」
「まだ後ろにいそうですね。ヘラルド殿。ミカエラを家に置いてもいいですけどどうしましょう。叙爵まで居候が良いですか?」
「叙爵したとしても色々厳しいだろうな。本人が絶対嫌だと言うのは私の養女だろう。」
「後ろ次第ではそうするのが1番だと。爵位を得たとしても平民、孤児、土地を得ても運用も出来ない。それならしっかりとした貴族の養女で後ろ盾がある方が王宮での立ち回りはしやすいかと思います、勿論、本人の意志を尊重させます。親しくするのではなくきっちり後見人になれば。」
密室での話し合いはまだ続く。
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