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29何が起きた
しおりを挟む「ミカエラ、中を確かめて貰ってもいいかな。」
レオンハルトに呼ばれて地下室の扉に向かう。何があったのだろう。後で聞こう。地下室に食材があったけれど、食材は焦げていない…何か特定のものでも焼いた様な…取り敢えず無くなったものがないか。研磨機は無事だけど、なんか触りたくない。
「クズ石もないけど…」
「石は家を出る前にデザインノートや素材の石や加工に使う金属などを纏めてギルドの貸金庫に預けてたんです。後は木箱とかそういう類で貴重品はないはずなんですけど…凄い焦げ臭いのに何で保管している肉や木箱は崩れているけれど全部燃えてないのでしょう…」
「…実はここに1つ焼死体があった。誰か家に置いていたとか、同居していた人とかいたのかと。若しくは家を知っている他人がいるとか。」
ユーリが淡々と告げる。ミカエラは地下室から出て焼死体であろう布にくるまれた物を見る。
「顔の判別とか出来ますか?」
「いや。あまり見るの勧めない。それほどに丁寧に判別できないようになっている。さて、新しいことも分かったし邸で細かい事を聞こうか。」
ヘラルド様も難しい顔をしているし侯爵様はとても丁寧な口調でヘラルド様と話をしているからヘラルド様の方が身分が高いのだろうか。年齢は近いみたいだし。
「ミカエラ、整理をしようか。」
「…はい。」
「まず、君の家を知っている人間はどれくらいいる?」
「店舗としても登録している商業ギルド…マルセル工房の人達…ただ、普段から馬車とかもあまり使わずに買い物をしているので近所の人は知っていると思います。」
「人を家にあげたり客として来店とかは?」
「…そうなる前に侯爵家に居候というか、移動となりましたから。」
「友達とか」
「孤児なので学園でも友達は前回の自称友人くらいで、孤児院の先生達も知らないと思います。その自称友人にも家の場所を教えてません。」
「…じゃあ家にあった死体は他人又は泥棒ということか。」
「だと思います。天涯孤独ですので。」
死体があった作業場なんて嫌すぎる。だけど、誰なんだろ。しかも地下室の扉を隠してないとはいえ地下に入るなんて…家探しした後なのだろうか。
怖い。
「ミカエラ、何日空けるとかギルドに言っていた?」
「いえ、数日空けるとしか…それにギルドの人達なら貴重品全て貸金庫にあるのを知っているはずなんです…それに貸金庫は私の魔力で登録しているので私以外が開けることも出来ません。商業ギルドに被害がないほうがおかしいかと。」
ミカエラはお茶を飲んで訳が分からないと思っていた。誰が死んだのか…それさえ分かれば良いのだけど。新しい引越し先を探す以前の問題になってしまった。
まさか人的被害がないと思っていたのに死体が1つ。
「死体…殺されたんでしょうか。」
「事故ではないだろう。部屋を焼いたら備品も全て焦げる、炭になるはずが死体一つだけ。」
「死体をミカエラとしておきたいとかでしょうか。」
「そもそも地下室の死体なんて見つかりにくい場所に置く必要も無い。それなら先に殺して焼け跡掃除の時に死体が出る方がいい。」
「…あの、私を殺す意味ありますか?」
「何故ミカエラを殺す理由になると?」
「…もし、焼死体が女性だとしたら顔をよく知らない人は私だと思って殺したのかな…って。あ、でも女性とは限らないですよね…泥棒さんと放火犯が鉢合わせになったとかもありますよね。」
「あぁ、別というのも考えられるか…」
「ミカエラ、女性だとしたら心当たりはあるのか?そこから探せないか調査しよう。」
ヘラルド様がとりあえず有り得そうな人はいないのか?と、尋ねる。
「…キリエ?キリエ・ライカという自称友人と最近?トラブルがありまして。ナビエ子爵のメイドらしいんですけれど。彼女にちょっと前に少し揉めましたので。ただ、彼女は私の家の場所は知らないはず…ですが、心当たりはマルセル工房か彼女くらいです。」
「…ユーリ殿、その事は?」
「その場に偶然居合わせまして、顔は分かります。」
「ミカエラは我が家で保護で宜しいでしょうか。それともヘラルド様の元で?」
「本人に選んでもらうのが1番では?」
全員こっちを見る。
「え?」
「取り敢えず新居を決まってないし、それもふまえてどこに居候する?」
ミカエラは全員を見渡すがこっちの意見優先だ。
「あ、あの…何故そうなるのですか???」
「暗殺されかけたと推定すると1番警護がしっかりしているのがヘラルド殿の邸だからね。あと温室がミカエラの好みだと思うよ。王宮のより素晴らしいと有名だから。仕事道具が無事なら仕事をして時間が経つのを待てばいいし。」
「貴族マナーにうるさくない所が良いです。放火や死体の事ですり減っているのに付け焼き刃のマナーとか貴族のアレコレが絡むと私が持ちません…ただの平民なんですよ…」
蚊の鳴くような声で希望を伝える。どこの家でもいいが平民の私が楽に息のできる貴族マナーに平民に礼儀作法や貴族の常識を押し付けない。強要しない場所それが1番だ。
「ミカエラ、その条件ならこのまま別邸が良いだろうね。レオンハルトを専属護衛として付けるから出歩く時は弟を連れておくように。ヘラルド殿、ご自宅で保護しないのであれば我が家の都合でさせてもらいます。レオンハルト、頼むね。」
「分かりました、兄上。ミカエラ、私が護衛だから口調は崩してもいいから。気にしないし。」
取り敢えず別邸のままだけど、騎士団の仕事全てが私の護衛になってしまったレオンハルトがつくことになった。護衛として傍に立たれるのは困る。
調査が継続するから仕事をしていて欲しいと言われた。気にするなと。
「気にするよぉ…」
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