出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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49社会勉強-1

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ユーリは出かけた馬車を見送ってヘラルドを見ると何人かに指示をして仕事に取り掛かろうとしていた。

「そう言えばあの院長どうやって遠ざけたのです?」

あの院長がミカエラとの接点である孤児院から離れるとは思わなかった。ケルビ男爵は意地汚い男だから離れる用事があるとは思えない。

「なに、国宝の贋作でそういう情報があったから男爵家の家宅捜索と軟禁になっているだけだ。人身売買は出るだろうから贋作はなくても人身売買で捕えられる。」

「構いませんけど、後任どうするのです?」
「あの二人に誰がいいか決めさせる。」
「挫折しないと良いですね。」

「ただの孤児院運営の手伝いすら出来ないで上には立てないだろう。それはそういう評価になる。」




孤児院の近くで馬車から降りて徒歩で孤児院に向かう。ルシア先生にはイザーク様から事情を話してくれていたのか侯爵家の馬車が止まっていた。

「ルシア先生、少しの間ゆっくりしてください!」
「本当にいいの?ミカエラ。7日なんて子供達が心配だわ。」
「大丈夫ですよ、人手は借りてきましたから!先生は休まないと!!」

ということでルシア先生から7日間先生の代わりをする人です。紹介をしてもらう。そうしないと警戒される。リサと目が合ってひらひらーと手を振る。
そしてヴィルフリートはヴィル、ギルバートはギルと短い愛称で自己紹介をしていた。護衛2人も吹っ切れたのか覚悟決めたのか自己紹介していた。

それから仕事の割り振りなのだけれども取り敢えず雨漏りの修繕と森へ採取と狩りを頼む。

「何固まってるの。仕事。御客様じゃないの。じゃあヴィルが雨漏り修理、ギルが採取と狩り。レオンも狩り組の方の手伝いお願い。無駄飯くらいが増えて経費圧迫したくないの。」
「俺が取るのは良いんだけど教える方向?」
「教える半分数確保半分くらいで。」

レオンハルトはレオンと、愛称、敬称もなしでニコッと上機嫌になって任せてよ。頷いた。ギルバートは笑顔が固まっていた。既に年の小さな子供達に遊べと絡まれている。ヴィルフリートも遊んで欲しいと言われながらも振り払って子供を泣かせている。

「…夕食の仕込みまでに帰ってきて。ヴィルも夕食までに雨漏りと小屋の修理とか洗濯とか力仕事あるから。」

そこそこ年上の手伝える少年少女に手を引かれて各々の場所に向かった。ミカエラはリサと一緒に食料の確認と水の確認をする。

「ねぇ、ミカ姉、あの美形何!?」
「知らない。知り合いの甥っ子で世間知らずの塊だから1番厳しい世間様を叩き込もうかと。」
「何それ…でも人手が欲しいから有難いわ。貴族とかじゃないよね?」

食材が足りていない。

「野菜やっぱ足りないよね…」
「食べる量と野菜が出来る量って合わないからねー。あの人たち貴族とか院長に近い人じゃないよね??」
「院長にあんな顔の整った知り合いなんて居ないと思うけど?」
「それもそうか。ミカ姉、お肉集まらなかったらどうしよう。」
「いつも通り食べる量が減る。山羊潰してないよね??」

ヤギだけは非常食、赤子の乳代わりに飼っている。昔ヤギを3頭飼っていた。それで少しずつ数を増やして赤子の乳代わり、非常食として置き続けていたはず。

「潰してないよ。赤ん坊来たら困るし。本当に不味くなったら潰すかもしれないけれど…」

ここに入れば獣の解体は必須技能でミカエラも当然解体を覚えた。パンを買ってくるより焼いた方がいいけれど…水で捏ねてスープを吸わせてふやかした方が腹持ちが良くなる。

「雨漏り終わったぞ…」

子供たちに群がられているヴィルフリートを見て既にげっそりしている。

「…街に物乞いに行くか、子供たちと遊ぶか選んで。」
「私に物乞いをしろと!?」
「皆のご飯が減るだけ。子供に行かせたら殴られたりするだろうから大人が行くの。それとも全員がおなかいっぱいになれる節約料理作れるの???」

「ミカ姉、流石にいきなりそれは…私も行って店教えてくるよ!」
「生ゴミにしてない野菜の皮でもいいから貰ってきて。」
「分かった!ヴィル行きましょ!ミカ姉のご飯は美味しいから!」

リサが行くよ!手を取って孤児院から出る。


「何故物乞いなんてするんだ!孤児院は国の施設だから潤沢ではないにしろこれほどのことをする程ではないはずだ!!」

ヴィルフリートも孤児院が国の運営で行われている施設であり、予算も潤沢ではないが財務部がキチンと精査して配分しているのを知っている。

「お金なんてないよ。院長の貴族からそんな十分なお金を貰ったことないもん。ルシア先生がお友達にお願いして少しお金を分けてもらってるのを何とか繋いでるだけ。子供たちは増えるけどお金は増えないから街の飲食店とか、お店に廃棄寸前の物を譲ってもらうの。タダで欲しいってお願いするんだからそんな偉そうに言ったら皆の食事がなくなっちゃう。ヴィル達の増えた分みんなのご飯の量が減るから。」

ヴィルフリートは固まって自分より年下のしっかりとした少女の背中を見るしかできなかった。自分の身分や地位では人に頭を簡単に下げるなと言われ、そうしてきた。
初日から平民に物乞いをするなんて…身分証も何も持たされていない。私が何者かなんて護衛とギルバート、レオンハルトしか知らない。

「ヴィル、重いから持ってくれる?手ぶらで帰るとミカ姉が役立たずって笑うかもしれないし。」
緑になっている芋を少量だった。こんなものをどうするのだろうとヴィルフリートは首を傾げていた。





ギルバートはレオンハルトや狩りや採取の出来る子供達と森に入っていた。

「レオンハルト殿は慣れているのですね。こういうことに。」
「…第三騎士団は遠征で現地調達も珍しくないですから。」

「レオン、ウルフ出そうだから帰った方がいいかも。」
「ウルフだったら皆食べれますよ」
「ウルフは危険だからって言われてるから!!」
「確かに群れでいたら怖いけど…」

罠の作り方を教える。引っかかったら殴り殺せるよ。と、身体強化とナイフで1匹仕留める。
「1匹なら何とかなるよ。」
レオンハルトはギルバート達にもこのキノコは食べられる。石を投げて鳥を落として羽根をムシったりする。

衝撃的な社会勉強が始まった。
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