出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

文字の大きさ
79 / 194

79 恋愛小説の影響

しおりを挟む
本日恋愛小説とやらを創作の参考にするために読んでいる。読んでいるのだけれども…

「どうですか??ミカエラ様。」
「アリア…主人公に全く共感できない。」

深刻な顔で本を閉じた。
「そうですか?庶民向けですよ??」

「だってやれ継母が家事ばかり命じる??効率よくこなして自分で時間作れよとか、不遇な家が私からしたら凄い恵まれていてそこから全く共感できない。」
「あ、そこからでしたか。」

「そこから救われて胸が高鳴るとか安すぎるでしょ…それならお前にしか欲情しないって言われた方がマダ誠実だわ。」

ミカエラはため息をついて本を閉じる。

「何ですか、欲情しないって。」
「それのほうがまだ素直で好感持てると言うだけ。」

扉の叩く音がしてアリアが対応する。

「イザーク様、レオンハルト様!?」
「ミカエラは?」
「今読書に疲れて垂れてます。ちょっと刺激が強いかも…」

2人が中に入ると肩紐で吊るすシンプルなワンピースだけど、その肩紐も垂れて本を積み上げて垂れていた。

「あ、レオン様イザーク様…」
「ミカエラ、御守りのお礼に来たんだけど…取り込み中だった??」
「取り込んではいないです。休憩してて読書してただけで。」

当然のように上着を肩にかけられてしまった。イザークが当たり前のようにしているのを受け取って気まずそうに見上げるとスンとしていた。

「風邪を引きますよ。」
「あぅ…はい。」
「ミカエラ、騎士団の同期から美味しいカフェとか聞いたんだけど、お礼にご馳走させて。」
「え、あ…はい。お礼は頂いているんですけれど…」
「俺個人でしたいの。また連絡するね。忙しかったら調整するからね!それともお酒とか現物の方がいい??」
「いえ、本当にお気づかいなく…」

レオンハルトは遠征終わる頃に連絡するね。と、出て行った。何だろう。本当に犬みたいだ。

「ミカエラ、こういう本を読むのですか。」
「アリアの私物です。」
「恋愛ものばかりですね。」
「そうですね。イザーク様は何用で?」
「あぁお守りを少し加工して欲しいので相談に。」
「分かりました。アリア、工房に移動するから何かあったら連絡して。」

本当に仕事かどうか分からないけれど。地下の工房に通して借りた上着を脱いで畳んでおく。休日用のすごく楽な服装だ。

「…扇情的ですね。」
「事前連絡もなく来られたらこんな服装ですよ。お仕事は本当ですか?」
「少し依頼がありますが、殆ど建前です。」

お守りの回路と仕様更に凶悪にするもので回路は刻めるが魔力付与はイザークに行ってもらった。顔を持ちちゅと唇の近くに唇を寄せられた。

「…は!?」
「ダメですか?」
「/////何故口付けするのです。」
「したかったので。」
「ダメです!」

膝に乗せられて向かい合わせだ。抱きついて顔を埋める。

「ミカエラ?」
「この状態で触れる所なら触っていいです。鎖骨から上。」
「引き剥がして口付けするのは?」
「…私を動かさずです。変わり過ぎです…」

ギュッと抱きしめ返されてカプっと耳を甘噛みされた。

「ひぇ////」

離れようとしたら後頭部を抱かれて口付けをした。

「んんっ…」

舌が入ってくる。歯列をなぞられて口腔を舌で犯される。どうしていいか分からずされるがまま。唇が離れると銀色の糸が引く。ううっ。と、顔を埋める。

「ミカエラ、好感度下がりました?」
「嫌かどうかだと嫌だと思わなかったのが不味いと思ってます。」
「自惚れますよ?」
「…人を好きになるというのが分からないので待ってください。」
「貴族の婚姻は気持ちなんて後回しの実利優先です。」

今まで良くしてもらって彼の身体の事情もあるとしたら私は嫌だと言えなかったし、嫌ではなかった。ヘラルド様のせいで異性に触られることに慣れてしまっている。腕の中に収められているが…どうなんだろう。筋肉はある。

「楽しいですか?」
「楽しいですよ?触るのすら我慢していたのですから。」
「…お願いなのですが、公私の区別で眼帯しないで貰えますか?」

あっさりと眼帯を外された。左右で色が違うのがすごく綺麗。ミカエラは顔を持ち目を合わせる。同情はできないけれど恋愛小説の知識を総合すると好意に漬け込んでいるだけだ。

「どうしたら頷いてくれるのでしょうか。」
「分かりませんよ…嫌いでは無いですけど、どうしていいのか困っています。」
「ここまで許してくれているのに拒まれているので私もどうしたものかと思っていますが。」
「…参考に恋愛小説読みましたが…」

前向きには検討しているが好きになれない訳では無い。主人公に共感出来ないだけで顔を埋めると抱きしめられて頭を撫でられた。私が拒絶したら侯爵家との関係が悪くなるのも嫌だし…

「参考になりましたか?」
「それが主人公に全く共感出来ず。ちなみにいつ解放されるのですか。」
「嫌ですが。」
「……???」

嫌ですが…????何故???いや、満足したら下ろしてくださいよ。ヘラルド様なんて人目があるとき限定ですよ。
どうしたものか…私の対応不味かった???

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

処理中です...