出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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83 業務外

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 貴族としてなのか何故かお茶会の招待状が届くようになった。何故?私宛だと渡された手紙の中身を見てどうしていいかわからないので困ったなぁと手紙を広げる。

「ミカエラ様、お返事の為の筆記用具はありますが、どうしますか?」
「貴族らしいお手紙は一応書けるけれど、その程度よ。」
「侯爵家に運びますか???」

 それはそれで楽なんだけれど、それでいいのだろうかというのもある。自分で処理できるかと言われたら揚げ足を取るのが貴族なら私には無理だ。きちんとした返事を書くにもそんな教養なんて付け焼き刃だ。困ったなぁと眺めているだけでも時間だけが無駄に過ぎていくようだ。処理はしないと行けないのだろうけれど…そう思って眺めていると扉が叩かれてアリアが取り次ぎに向かった。お茶を飲みながらどうしたものかと考えてた。

「ミカエラ様、イザーク様がいらしています。」
「わかった。お茶をお出しして。」

 イザークが仕事らしく普段の護衛の服装なのでユーリからの仕事の依頼だろうか。

「イザーク様?」
「先日の苦情ですけれど、ユーリ様から差し戻しをしてもらいました。考えるならもっとマシなものを考えてくるかと思います。どうしました?」

 イザークの問いかけに手紙をスッと差し出す。彼はそばに座って手紙を手に取り内容を読んでいく。アリアはお茶を出して部屋から出て行った。二人きりになってしまうが、無視しておく。大した話ではないはずだ。眼帯を外さないのだからユーリ様の仕事なのだろう。

「自分で処理されますか?」
「できると思いますか?」
「そこは貴方の努力次第でしょう。ツテもあれば付け焼き刃でも知識はありますから。」

 無条件では助けてくれませんよね。だけど無視するのは良くないし、失敗したらさらに面倒くさいことになる。イザーク様じゃなくてレオンハルト様なら無償で助けてくれる気がする。イザーク様は私情込で何か言ってきそうで怖いんだよなぁ。どこが怖いとかはないのだけれど…見返りを求められた方がいいけれど、内容による。という面がとても大きい。そしてこの人の見返りは今のところ予想が全くできない。

「なんですか?」
「…レオンハルト様かヘラルド様に助言を求めます。自信ないので。」
「目の前に慣れた人間がいるのに他人を頼るのですか。」
「見返りが怖いので。」

 素直に見返りが怖いと伝える。嘘つくよりはマシだ。心外だというような顔をされる。ここ最近の自分の行動を省みてほしい。ミカエラはそう思いながらじっと見上げると彼は顧みたのかゴホンと咳払いをした。

「見返りですか。」
「タダほど怖いものはないので。」
「私が一番安上がりだと思いますけれど。」
「安上がりかどうか私とイザーク様とで感覚が異なるかと思いますが?」
「別に貴方に頼られたらこの程度無償で構いません。何を要求してくると思われたのか気になりますが。」

 もじもじ。どうすべきだろうか。頭を下げることはいいけれど、本当に見返りなしなのかどうか。だけどこれをこのままにしておくのが一番よろしくないことは私が一番理解している。ならすることは一つだ。

「イザーク様、このお手紙どうすればよろしいでしょうか。」
「無視で構いません。下町だから盗まれたのかもしれないとか適当に言えるでしょう?」
「それは何度もあると失礼だと…」
「最初しか使えんよ。もちろん。」
「じゃあちゃんとお断りします。」

 手紙の書き方を見てもらいながら返事を書いていく。どういう家の人なのかわからないし会ったことはないはずだ。ヘラルド様のそばにいる時でも紹介されたわけでもないし、挨拶をきちんととした相手でもない。どうして私のところに来たのか知らないけれど。手紙を書き終えて疲れた。字を丁寧に書いて誤字脱字も許されなくて手紙の紙の選び方もあるらしいし。疲れた…イザークがいない方向に倒れて休もうかとしたが、彼が手を回してそうはさせまいと彼の側に引き寄せられた。

「イザーク様?」
「私がこちらにくる回数が増えますので。」
「ユーリ様の護衛は???」
「侯爵家の護衛は私以外にもいますので。ここの警護は侯爵家の一部を当てています。それだけです。それもそばに付けるのではなく様子見ですから。」

 安心感はあるんだけれど、心なしか不安がある。ミカエラは彼を見上げて目が合うが眼帯をつけているのでそこまで我欲を出さないと思う。見上げるとよしよしと頭を撫でられる。
 触られるのは嫌ではない。心地よいと思う。

「少し体温が高いようですが。」
「そうですか??少しぽやんとしますけれど。頑張り過ぎて疲れました。」
「少し休んだほうがいいですね。」
「…大丈夫…」
「じゃないですよ。色々疲れが出たのでしょう。」

 気が抜けて熱が出たらしい。確かに手紙の処理に頭を抱えていたら熱がでたとイザークに言われてしまった。アリアを呼び出して熱が出たと話をして工房ではなく部屋に運ばれてしまった。
 全力で求婚すると話をされたけれど、部屋にはいられるのが怖い。熱を出さなければいいけれど。
 頭が痛い。
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