出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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 腹痛がどこかに立ち去った後。王城の料理人が定期的に異国料理をバスケットに詰めて送ってくれるのだけれども王宮の料理人がそれでいいのだろうかと、イザークに確認したら向こうの善意で王族のためにいつも多めに作っているうちの一部を詰めてくれているだけらしい。

「ミカエラが味の感想を書いた手紙を必ず入れるから向こうも気分がいいのでしょう。」
「貴族って感想も言わないのですか??私自分で作ったものの感想とかもらうととても嬉しいからこういうのは言葉足らずでも感想を伝えるようにしていますよ???」
「口付けをしても感想をいただけないのですか???」
「…ございません。ただ暖かいというか顔が熱くなるだけですから。」
「そうでしたか。とりあえず、プレゼントです。」

 箱を持ってきて渡されてしまった。あっさりと。開けると、前に言っていた野菜みたいな翡翠が入っていた。確かに白と翠の翡翠だけれどもカットしなくても白菜だ。面白い。それと真珠ではなく赤珊瑚というものらしいが、血みたいに赤い。宝石とは違う輝きで綺麗だ。面白い。この赤珊瑚で薔薇を作ったらルビーやガーネットとは違う深い色をしているからマダム層にはこちらの方が好まれるかもしれない。

「赤珊瑚は一部をお持ちしたのですが、一枝必要ですか???」
「見返りが怖いです。」
「信用ないですか???」
「信用とかではなくタダより高いものがないという言葉が庶民にはあるんです。」

 なるほど、と彼は納得した。

「5分私にください。5分堪能したらお譲りします。」
「…5分ですか。なんか具体的ですね。」
「私はお金を出しただけですし、採取の労働をしたわけでもないので。」
「そういうことですか。」

 5分何されるのかわからないが…悪いようにはされないと思うけれど…素材は欲しい。そう思って頷く。ものを得るために体で支払う感じが嫌だ。でも欲しいし、キスをされるくらいで私が嫌がることはしないだろうし。

別に何もないけれど…あちこち舐められた!!!!!!!ねっとりじっくり5分間!!!!指とか足とか!!!!何が良かったんだろう。

 翌日には赤珊瑚の枝がまるまる届いた。とりあえず、材料をもらったけれど、何を作ろうか。赤珊瑚は何を刻めるのだろうか。

 作るものを考えてリビングで試行錯誤をする。何が刻めるのか。刻む量などを調べて何に使えるのか。そういうのを調べるのも楽しい。腹痛も治まって仕事が出来るのがありがたい。お仕事が落ち着いて良かった。ただ、横に相変わらずイザーク様が当然のように読書をしている。距離が近い。
 護衛の仕事ってしているのだろうか…とりあえず面白い性質だったのでミカエラは色々考えてピアスにする。そういえばイザークがワンコになっている間の服や装飾品はどうなってるのだろう。そこは呪いが都合よく魔力でどうかでもしているのだろうか。犬だから首輪でもないだろうし。そう思いながらもお守り代わりに身体強化や回復を刻んで用意するが何を作ろうか。

「せめてお揃いの何かを作っていただきたいですが。」
「効果を考えるとあまり適切ではないと思うんですけれど。」
「効果は不要なので。それは個別に頼みます。」

 そういうものなのか。じゃあ指輪でいいか。つけはずし簡単だし。丁寧に仕事をして男性でも付けれるデザインをちゃんと考えて作る。そして綺麗に磨いてどうぞ。と渡す。

「急がせましたか???」
「忘れる前に作ろうと思ったので。いらないですか?」
「ありがたくいただきます。」
「お手。」

 手を出して犬のように言ってみた。間違えたと思って訂正しようとしたのにぽんとおかれてしまった。訂正も何もしないで指にはめてサイズを調整する。何だか嬉しそうだ。喜んでくれるのはものづくりを仕事にしている人間としてはとても嬉しいけれど、熱を帯びた目で見つめるのはやめてほしい。目を逸らしたくなる。

「こっちから聞くのも何ですが、レオンハルト様と当初親しくしていたではないですか。いや、あの人は昔からユーリ様第1の兄上大好きを全面に出していますが…」
「…愛だの恋だのをよく分かっていない時に兄上兄上と仰っているからユーリ様好きなんだろーな。くらいで…別に私に特別優しい訳では無いでしょう?それに侯爵家の次男とそういうことになるなんて思いませんし。それに勉強した時に貴族の次男くらいまでは家の繋がりのための婚姻を優先するとあったのでそうなのかなと。」

イザークは自分が呪い持ちでそういうのは縁遠い。念の為本人に聞くだけ聞くのか…ユーリ様から掘り下げて貰うか…
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