出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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123 貴族対応可否

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 イザークは面倒ごとだが自分のことでもあるので、ロズウェル侯爵家に報告をする。迷惑をかけているのは自分だ。辺境伯として国境を守ってきた家柄ではあるが、思考は偏っているし、貴族でなければ対等に話もする気がない。貴族でも下の爵位だと下だと見ている。つまり凝り固まって本当に面倒くさい。物心着く前から呪い持ちだと言われてきたし、別邸で貴族の令息としての教育は最低限。図書館で独学で勉強をして、辺境伯として国境を守るから、または呪いの力を利用できないかと画策したのか武芸だけは叩き込まれた。それも家の騎士から習ったのであって父たちが教えてくれたわけではない。あの家に恩があるわけでもない。家柄や武芸を鍛えられたことは感謝しているが、騎士たちや使用人達にだ。父にではない。
 それから学園に入ってユーリ様と親しくなり、面倒な家ならそのまま自分の護衛として側にいれば伯爵家にも文句は言われないだろうし、結婚とかもこちらで考えるとしたら向こうも都合よく解釈するだろうと言ってもらった。

 その通りで家から離れて、帰ることも連絡を取ることもなかった。伯爵家から侯爵家に確認の手紙とかはあったかもしれないが私宛に家族から来たことはない。それなのに今になって…家の諜報機関を使ってなのか、あの皇子避けにした口づけでも見られたのか、あれから突然家の人間がうろつき始めた。本当に迷惑だ。彼女にも侯爵家にも…さっさと縁を切ってしまいたい。

「おや、イザーク。何か困りごとか??」
「身内が多大なご迷惑をおかけしているのでどうしたものかと。」
「まさか次期伯爵までミカエラの家に突撃なんて世間知らずな迷惑行為をしてくるとは思わなかったよね。」
「…無理矢理どこぞの誰かと縁談を持ってきそうです。」
「うわ…勝手だね。ミカエラと偽装結婚したら???」
「断られましたのでどうにか片付けていこうかと思いますがどうしましょうか。」

 ユーリが面倒くさいことになったね。と、弟を見上げると一緒に悩んでいる様だった。別のことを考えているようだったが。

「まぁ、頭が硬かったよね。ミカエラが女男爵なのに平民だの孤児だの…夕食会でもミカエラの経歴を話してもずっと平民如きがばっかだったよ。」
「兄も事前連絡なしにやって来たのにミカエラの服装で文句言ってきましたよ。ただの作業着に対して。」
「平民が身内になるのが嫌なのかね。イザーク、ウチの養子にでもなるかい??」
「…それはそれでアリだと思うのですが、ミカエラが家族会議でもして片付けろと言うので権力(物理)はあまりよくないのかと思いました。私としては面倒だからさっさと切りたいですが、養子縁組の先が侯爵家なのですか???」
「ミカエラが怒る前にケリをつけるべきと言うのが父の意見だね。定期的に母へのプレゼントを依頼しているからなのか彼女の仕事の憂いを片付けておきたいようだ。母もミカエラの作品をとても気に入っているからね。」
「兄上、今になって何故スカルラッティ伯が出て来たのですか???今までそういう話を聞いたことありませんし。」

 レオンハルトの言葉に全員が肩をすくめる。本当に訳がわからない。あの女性関係の噂が全くなかったイザークに女性の影が出てきたからか、それが仕事とお金のためにそれ以外が結構適当なミカエラが相手だからなのか。心当たりはたくさんある。だが、どれも確証はない。
貴族対応と虫除け関連はかなりとてもおざなりだし未熟だからとこちらが全て請け負ってきた。だから伯爵の言う醜聞と言うものは醜聞でもないし、そんな情報も全て揉み消してきた。ヘラルド殿がこんな初歩的なミスをする訳がない。

「辺境伯だ。独自の諜報部を持っていてもおかしく無い。自分で息子の周辺または我が家を調べていたらミカエラが出てきてそれでイザークがそれなりに構っているものだから調べたらヘラルド殿や双子とお友達と言うのが出てきたと言うことかな。陰でこちらも殴り合いをしてもいいけれど、ミカエラに実害が出そうなんだよね。」
「兄上、それは避けましょう。ミカエラがかわいそうです。すでに実害が出ていますし…」
「伯爵は結構面倒くさ…偏見が凝り固まった貴族だからね。ミカエラが実害がないと説明しても孤児というだけで見下すし話も聞かないだろう。」
「迷惑ではないですか。」
「ヘラルド殿とは派閥が違うからあまり効果がないというか。ウチが中立派だから揉めなかったけれど、スカルラッティはガッチガチの保守派。貴族は貴族。平民は貴族に仕えるもの。結婚や色恋なんて認めない。保守派が強いのは昔ながらの考えで国境や要職を務めて毅然と諸外国にも負けなかったこともあるけれど、頭の硬い人が多いのも事実。大変だけれどね。昔からのことを大切にしているのも事実だ。領民は大切にしているが、貴族と関わるのは許せないみたいな感じかな。使用人は良くも悪くも使用人だからね。貴族が孤児の護衛をしていると言うこと自体も許せないのだろう。」
「…仕事であれば柔軟に対応すべきだと思うんです。騎士団は魔獣に襲われている平民を助けるのが仕事ですし。」
「平民はあくまでも労働力、自領なら庇護対象。だけれどそれ以上でも以下にもならない。貴族に拘らないならそれで構わないと言うのが保守かなぁ。革新派はそれはそれで大切だけど、いいところは積極的に拾っていこう使えるところは使いこなせばいい。相互利益が得られるならそれでいいじゃない。みたいな商人気質がおおいかな。要はお金で解決。資金力一番。だから賄賂とか出やすいから保守と革新派は仲が悪い。うちは間だから中立派。」

 めんどくさいことになった。それがロズウェル侯爵家の意見であった。
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