出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-

はまち

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185 聖女入学

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 聖女が入学してからなのか空気が変わった。取り巻きが突然増えていた。こっちはそれどころじゃないくらいに勉強塗れなのに……

「ミカエラ様、これはどうでしょうか?」
「これだと謀反が起きますね。税率が高すぎますし、分配もないので……飴と鞭です。」

   税率の決め方やとり方を全員で考えて見よう。みたいな感じで話をする。こっちは庶民感覚比率が高い。
だから皆が考える法律などに関してどこが嫌だと否定する。合理的、実際に使える法律を考えていく。過去の判例を読みながら頭を悩ませる。
  私は庶民よりすぎて運営になっていない。良くて村長レベルだ。



「ミカエラ、お疲れ様でした。」
「あ、はい……」

   帰る時は聖女クラスの人間と会わないようになるべく回避をしながら少し迂回して帰るようになった。聖女の入ったクラスは防護してない人間が心酔してある種の宗教のようになっているとか。

「あら泥棒猫と呼ばれてる平民上がりは貴方ですか?」
「……」

   見知ってはいるが相手は男爵令嬢。こっちは子爵だ。相手にする理由もなければ無礼だとカリアス男爵に苦情を言うことだってできる。どこが情報源かも探す必要もないだろうし……自分も平民上がりだろう。

「……」

  無視して足を進める。彼は目を細めて取り巻きの顔と名前を覚えて主の後ろをついて行く。

「貴方の従者獣臭くありません?」

   無視だ無視。ミカエラは馬車に乗り込むと大きく息を吐きだした。

「よく我慢出来ましたね。」
  ぶっすぅ。ミカエラから彼の膝の上に乗る。そして無言のままわしゃわしゃと彼の頭を撫で回す。

「どうしました。」
「殴る蹴るなんてことはしないけど私の方が上ですよね。いくら魔力があろうがラミアやセイレーンだろうとも。」
「ミカエラが上ですよ。」

   ボサボサの髪型になってしまったが彼はニコッとしていた。カプっと唇を塞いできた。酸欠する程に長い。

「イザーク様!?」
「何に不機嫌なのか教えてくれないと私ももみくちゃし返しますよ?」
「う……」

   ボサボサになってしまった。ぽすっ。と、顔を埋めて逃げる。頭を撫でられた。ぬくぬくする。

「頭冷やします。」
「はい。このままでよろしいですか?」
「うん……」

   はぁぁぁぁ。獣臭いって何の。脳足りん……魔力量で勝てないなら経済力や流行とかモテるコネで干してやりたい。獣臭くないし、モフモフで何が悪いんだか。あまりにも失礼。
  だけど、魔力差でどうしたらいいのだろうか。1人で考える訳にはいかない。知識は足りていない。

「ミカエラ、何か食べたいものとかありますか?」
「ん?????大丈夫ですよ???何でも好きなので。」
「そうですか。好きなものでも食べてスッキリした方がいいと思うのですが……生菓子でしょうか。」

  お菓子!表情を輝かせていたのか、魅力的に感じて顔を上げるが、わしゃわしゃしすぎた。と、気付き、手ぐしで整える。

「甘塩っぱい系の料理が食べたいです。」
「……では、市場に向かいましょう。」

   ????市場に向かう。ローブを纏い、貴族らしさを隠しながら商店に向かう。

「これとかどうですか?」

  丸いパンだけどなんだかシロップが入っているのか甘い匂いがする。…なのに、お肉とチーズが挟まっている。確かに甘塩っぱい系だ。どこで知ったのだろうか。

「いただきます。」

   甘い!!!でもお肉とチーズが塩っぱい!!!お菓子のようなパンでお肉を食べているという違和感しかないのにこの甘塩っぱさが絶妙で凄く美味しい。

「イザーク様こんな美味しいものを隠してたのですか!?」
「……隠してはいませんよ??ミカエラが学園にいる間に市場調査も踏まえて食べ歩きをしていただけです。ユーリ様やレオンハルト様もこういうのが好きなので。」

  適当に並んでいるベンチに腰掛けてガブリとかぶりつく。シロップが甘いのに…お肉の塩気とチーズが美味しい。ズルい。

「炭酸水で割ったジュースが合いますよ。」
「……イザーク様結構食べ歩きしてますね。」

  背徳感のある美味しさ……

「それなりにですよ。ミカエラのように甘味はあまり詳しくないですし酒のツマミになるものを探すことが多いですね。」
「おつまみ……無縁ですねぇ。シラフで食べるのが美味しいです。これ以上食べると夕食が食べられなくなる。」

「お代わりしますか?」
「夕食が入らなくなる。大丈夫ですよ???多分。」
「…怒ってたのですか?」
「……怒るものだと思いますけど。」

   なんだか、少しだけ嬉しそうにしているようだった。当然だと思うのだけれども。

「アリアに何か買って帰らないと苦情は出そうですね。」
「美味しいものを先に食べてたら怒りますもんね。」

   おやつ等を少し買ってから家に帰ることにした。あのパンとお肉を挟んだもの美味しかった。
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