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第6章 モブ令嬢はその恋を貫く
第6章 モブ令嬢はその恋を貫く ⑤ <完>
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卒業者名簿に自分の名前を見つけた時、心底ほっとした。ようやっと地獄のような勉強と卒業試験から解放される! みんなそんな喜びで満ちていた。
「ほら、ティナ! 早く用意するわよ!」
私はベロニカに引っ張られるまま、大広間の近くに用意されている化粧室に向かう。そこにはマリリンがすでにスタンバイしていた。二人とも、無事に卒業できる。ゲームのままの展開ならば、イヴを苛め抜いたベロニカは追放され、私たち二人も消息不明だった。けれど、この世界のイヴはもう刑務所の中にいる。そのおかげでベロニカも私たちも追放を免れることができた。真っ赤なドレスに袖を通すベロニカを見ていると、本当に良かったなという気持ちが込み上げてきた。
「ティナさんも早く着替えてください。ヘアメイクをしないと」
おしゃれ大好きなマリリンは、これからファッションの勉強を本格的に始めるらしい。両親をようやっと説得できたから、と卒業試験の前に教えてくれた。将来はファッションコーディネーターとして働くのが夢、らしい。私はマリリンに言われるがまま着替え、椅子に座り、ヘアメイクを施されていく。鏡に映る私はまるで魔法がかかったみたいに変わっていく、髪型はアップに、メイクもいつもと違って華々しく。ベロニカもマリリンも同じように変身して、私たちは大広間に向かった。
「わぁっ!」
王宮にも負けない豪華なシャンデリア、料理はずらりと並んでいてセオドアはもうそっちに行ってしまっているのが見えた。そして、あちこちにいるカップルたち。この卒業祝賀パーティーのジンクスに託けて結ばれた彼らが末永く幸せであることを私は祈った。
「……」
そんな私の横で、彼らを恨みがましそうに見つめるベロニカ。彼女の入学してからの願望だった【皇太子さまと結ばれる】夢は、私が打ち砕いてしまったから、なんだか申し訳なくなってしまう。肩身が狭い思いをしていると、ベロニカは私をちらりと見た。
「同情してるんじゃないわよ」
「……だって」
「こうなる運命だったのよ、ティナとアルフレッド様は。……それにね」
ベロニカは扇で口元を隠しながら、私に近づいてきた。私は彼女の口元に耳を近づける。
「いいご縁があるの」
「そうなの?!」
「お父様の知り合いの息子さんでね、とてもいい家柄の方よ。今その話が進んでいるの。そりゃ、皇太子から比べたらだいぶ落ちるわよ? でも、とっても素敵な人なのよ」
そう言って、ベロニカは輝かんばかりの笑顔を私に見せた。ずっとベロニカと一緒にいたけれど、初めて彼女の少女のような、素の笑顔を見ることができた気がする。ベロニカが追放されなくて、本当に良かった。私はベロニカがこれからも幸せであるように、祈りながら笑った。
賑やかだった会場が、一瞬で静まり返った。大きな扉が開き、そこから真っ白な正装を着たアルフレッドが姿を現した。わき目も振らず、一直線に私に向かって歩いて来る。ベロニカは私の背中を押す。周りにいた人たちはゆっくりと後ずさりして、私の周りには大きな空間ができた。アルフレッドは私の前で立ち止まる。彼のすぐ横には従者がいて、従者は跪き、白い箱を開けた。
「……素敵」
わあっと感嘆の声が大広間に広がっていく。箱の中にあったのは、大きな宝石がいくつも付いたプリンセスティアラ。私はドレスを広げ、少し腰を曲げた。アルフレッドはそれを持ち、私の頭に載せた。
「似合うな。ドレスとよく合っている」
私は体を起こした。真っ白なふんわりと裾が広がるドレス、ベロニカとマリリンが「ウェディングドレスみたい!」と進めてくれたものだった。ウエストのリボンは、まるでサファイアのような青色。私の首にはサファイアのネックレスが揺れている。
楽団から、ワルツの演奏が流れてきた。
「どうか、俺と踊っていただけますか?」
アルフレッドはそう言って私に手を差しだした。私はそれに、自分の手を乗せる。
「もちろん、喜んで」
私はアルフレッドのエスコートに導かれるまま、大広間の真ん中まで進んだ。踊るのはどうやら私たちだけみたい。いつかの時のように手をつなぎ、彼の腕が腰のあたりをホールドする。
ゆったりとしたワルツの演奏は、まるでエンドロール。けれど、私たちの物語はここからが始まりに違いない。繋いだ手を離さないよう、互いの事を尊重し支え合うように生きていく。時には喧嘩をすることもあるかもしれないけれど、その度に私はきっと思い出すだろう。今まで感じたことのないくらいの幸せが体いっぱいに満ちた、この日の事を。
~ fin ~
卒業者名簿に自分の名前を見つけた時、心底ほっとした。ようやっと地獄のような勉強と卒業試験から解放される! みんなそんな喜びで満ちていた。
「ほら、ティナ! 早く用意するわよ!」
私はベロニカに引っ張られるまま、大広間の近くに用意されている化粧室に向かう。そこにはマリリンがすでにスタンバイしていた。二人とも、無事に卒業できる。ゲームのままの展開ならば、イヴを苛め抜いたベロニカは追放され、私たち二人も消息不明だった。けれど、この世界のイヴはもう刑務所の中にいる。そのおかげでベロニカも私たちも追放を免れることができた。真っ赤なドレスに袖を通すベロニカを見ていると、本当に良かったなという気持ちが込み上げてきた。
「ティナさんも早く着替えてください。ヘアメイクをしないと」
おしゃれ大好きなマリリンは、これからファッションの勉強を本格的に始めるらしい。両親をようやっと説得できたから、と卒業試験の前に教えてくれた。将来はファッションコーディネーターとして働くのが夢、らしい。私はマリリンに言われるがまま着替え、椅子に座り、ヘアメイクを施されていく。鏡に映る私はまるで魔法がかかったみたいに変わっていく、髪型はアップに、メイクもいつもと違って華々しく。ベロニカもマリリンも同じように変身して、私たちは大広間に向かった。
「わぁっ!」
王宮にも負けない豪華なシャンデリア、料理はずらりと並んでいてセオドアはもうそっちに行ってしまっているのが見えた。そして、あちこちにいるカップルたち。この卒業祝賀パーティーのジンクスに託けて結ばれた彼らが末永く幸せであることを私は祈った。
「……」
そんな私の横で、彼らを恨みがましそうに見つめるベロニカ。彼女の入学してからの願望だった【皇太子さまと結ばれる】夢は、私が打ち砕いてしまったから、なんだか申し訳なくなってしまう。肩身が狭い思いをしていると、ベロニカは私をちらりと見た。
「同情してるんじゃないわよ」
「……だって」
「こうなる運命だったのよ、ティナとアルフレッド様は。……それにね」
ベロニカは扇で口元を隠しながら、私に近づいてきた。私は彼女の口元に耳を近づける。
「いいご縁があるの」
「そうなの?!」
「お父様の知り合いの息子さんでね、とてもいい家柄の方よ。今その話が進んでいるの。そりゃ、皇太子から比べたらだいぶ落ちるわよ? でも、とっても素敵な人なのよ」
そう言って、ベロニカは輝かんばかりの笑顔を私に見せた。ずっとベロニカと一緒にいたけれど、初めて彼女の少女のような、素の笑顔を見ることができた気がする。ベロニカが追放されなくて、本当に良かった。私はベロニカがこれからも幸せであるように、祈りながら笑った。
賑やかだった会場が、一瞬で静まり返った。大きな扉が開き、そこから真っ白な正装を着たアルフレッドが姿を現した。わき目も振らず、一直線に私に向かって歩いて来る。ベロニカは私の背中を押す。周りにいた人たちはゆっくりと後ずさりして、私の周りには大きな空間ができた。アルフレッドは私の前で立ち止まる。彼のすぐ横には従者がいて、従者は跪き、白い箱を開けた。
「……素敵」
わあっと感嘆の声が大広間に広がっていく。箱の中にあったのは、大きな宝石がいくつも付いたプリンセスティアラ。私はドレスを広げ、少し腰を曲げた。アルフレッドはそれを持ち、私の頭に載せた。
「似合うな。ドレスとよく合っている」
私は体を起こした。真っ白なふんわりと裾が広がるドレス、ベロニカとマリリンが「ウェディングドレスみたい!」と進めてくれたものだった。ウエストのリボンは、まるでサファイアのような青色。私の首にはサファイアのネックレスが揺れている。
楽団から、ワルツの演奏が流れてきた。
「どうか、俺と踊っていただけますか?」
アルフレッドはそう言って私に手を差しだした。私はそれに、自分の手を乗せる。
「もちろん、喜んで」
私はアルフレッドのエスコートに導かれるまま、大広間の真ん中まで進んだ。踊るのはどうやら私たちだけみたい。いつかの時のように手をつなぎ、彼の腕が腰のあたりをホールドする。
ゆったりとしたワルツの演奏は、まるでエンドロール。けれど、私たちの物語はここからが始まりに違いない。繋いだ手を離さないよう、互いの事を尊重し支え合うように生きていく。時には喧嘩をすることもあるかもしれないけれど、その度に私はきっと思い出すだろう。今まで感じたことのないくらいの幸せが体いっぱいに満ちた、この日の事を。
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